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42.結果(2)

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「バルト様、ランバート様よりお手紙を預かって参りました。」


「ありがとうございます。」


手紙を受け取り中を見てみると、貴族の件で話があるから至急家まで来てほしいとの事だった。


「ようやくか。」


アルベルト家で話をしてから約1ヶ月。


短いようで長かった。


「今から行きますとお伝えください。」


「かしこまりました。」


使いの人に伝言を残し、俺も準備をする。


クレアとシャルそして、ウィルをおばちゃんの所に連れていき、アルベルト家に向かった。


「バルト様。お久しぶりですね!」


アルベルト家に着くとエリナが出迎えてくれた。


1ヶ月ぶりのエリナだ。


とても可愛いく、やっぱエリナのことが好きなんだなと思う。


「お久しぶりです。エリナ。」


エリナがにっこりと微笑む。


「お父様が待っておられます。こちらへ。」


エリナに案内され家の中を進む。


「エリナは婚約者は決まっておられるのですか?」


「どうしたんですか?急に。」


「いえ、貴族のご令嬢ならもう決まっているのか気になっただけですよ。」


「まだ、決まってはおりません。ですが、多分そろそろお父様がお決めになる頃だとは思っています。」


やっぱりか……


俺が貴族になりたいのは、エリナと付き合い結婚したいからである。


しかし、俺が貴族となり、一人前の貴族となる前にエリナは婚約してしまうだろう。


何か手を打っておかないとな。


――エリナに連れてこられたのは、この前と一緒の部屋だった。


そこには、白い髭を生やした中年男性がいた。


その人こそアルベルト家当主のランバートだ。


そして、甲冑を着た騎士のマルスも一緒だ。


「バルト君、久しぶりだね。そこに座りたまえ。」


「はい。」


「手紙でも言った通り、結果が決まったので報告させてもらう。――バルト君は今日から貴族となる。」


「本当ですか!?」


予想はしていたとはいえ、やはり嬉しいものだ。


「ああ、貴族としての位は低いが立派な貴族だ。貴族になると姓を持つことを許される。さて、姓はどうする?」


へーそういう仕組みだったのか。


「じゃあ、ルディアで」


「ふむ、今日から君はルディア・バルトだ。それと、バルト君には領地も与えられた。」


通常、貴族にしただけでは、その国に縛ることはできない。


そこに領地を与えることで、国に重要な戦力として縛ることができるのである。


「ここから北西に40km行った所に小さな農村がある。名をマラアイという村だ。その周辺の直径5kmが君の領地となる。領主はその村に必ず居ないとならないという決まりはない。現に、小さな領地しか持たない貴族は大きな街で暮らし、たまに税を回収するために赴くぐらいだ。」


「そうなんですか。でも、私はそこに住もうと思います。」


「え!?本当ですか!?」


そこで声を上げたのはエリナだった。


「はい。そうしようと思っています。」


「そうですか……あまり会えなくなるのですね。」


最後の方は呟く程度の声だったので聞き取ることは出来なかった。


「いいのかね?本当に小さな村だよ。ここに比べるとかなり不便だとは思うが。」


「数年すれば大きな街になりますので。」


「それは君が大きくするということかね?」


「はい。」


「ハハハ、ずいぶん自信があるようだね。でも、不思議なことに君なら実現してしまう気がするな。頑張りたまえ。何か手伝えることがあれば言いなさい。出来るだけ力を貸そう。」


「ありがとうございます。」


「そうそう、王様からも祝金を頂いたから渡しておこう。」


「それはありがたいです。これからしようとすることはお金もかかるので。」


「そうか、楽しみにしているよ。さて、他に何もなければこれで失礼させて貰おうかと思うのだが。」


「待ってください。1つお願いがございます。」


「何だね?」


「私をエリナさんの婚約者候補にしていただきたい!」


みんなの顔には驚きが見られた。


ランバートは一瞬何を言われたのか分からないような顔をしており、マルスも目を白黒させていた。


その中でも一番驚いていたのはエリナだった。


口をポカンとあけ、少し間抜けな顔になっていた。
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