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プロローグ
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全てを与えられていた。
社会的にも肉体的にも有利な、支配階級に位置するアルファ性に生まれついた。
貴族の嫡男という高い地位が生まれた瞬間から約束された。
父親はかつて国王の命を救った英雄だった。
国一番の名誉である聖騎士になるための教育を、幼い頃から受けられた。
母親は二度目の出産の時に亡くなったが、その代わりに父親からたくさんの言葉をかけてもらった。
それは特別扱いだったらしい。
6歳下のオメガの弟は、自分とは逆に与えられたものが少なかったという。
屋敷から切り離された西館に隔離され、14歳になるまでそこで暮らしていた。父親は日曜日の午後にだけ弟の元へ行き、共に過ごしていたらしい。それ以外は兄である自分の稽古に付き切りだったと聞かされた。
多くの時間、弟は孤独だった。主人の目が行き届かないのを良い事に、陰口や陰湿な嫌がらせを行う使用人もいたという。オメガであることを理由に遠巻きにされたり、残り物を食事として出されたり。
彼の負った心の傷は深く、隔離が終わってから3年が経った今でも対人恐怖症を引きずっているそうだった。視線が合うだけでもびくりと体を震わせ下を向く。繊細と言われている性格も相まって、その姿は弱々しく見える。
今まで弟と面と向かって顔を合わせたことは一度としてなかった。
兄として振舞ったこともない。存在を気にかけたこともない。
自分が彼を苦しめる要因の一つだったのだと言われれば、そうなのだろうと思う。
社会的にも肉体的にも有利な、支配階級に位置するアルファ性に生まれついた。
貴族の嫡男という高い地位が生まれた瞬間から約束された。
父親はかつて国王の命を救った英雄だった。
国一番の名誉である聖騎士になるための教育を、幼い頃から受けられた。
母親は二度目の出産の時に亡くなったが、その代わりに父親からたくさんの言葉をかけてもらった。
それは特別扱いだったらしい。
6歳下のオメガの弟は、自分とは逆に与えられたものが少なかったという。
屋敷から切り離された西館に隔離され、14歳になるまでそこで暮らしていた。父親は日曜日の午後にだけ弟の元へ行き、共に過ごしていたらしい。それ以外は兄である自分の稽古に付き切りだったと聞かされた。
多くの時間、弟は孤独だった。主人の目が行き届かないのを良い事に、陰口や陰湿な嫌がらせを行う使用人もいたという。オメガであることを理由に遠巻きにされたり、残り物を食事として出されたり。
彼の負った心の傷は深く、隔離が終わってから3年が経った今でも対人恐怖症を引きずっているそうだった。視線が合うだけでもびくりと体を震わせ下を向く。繊細と言われている性格も相まって、その姿は弱々しく見える。
今まで弟と面と向かって顔を合わせたことは一度としてなかった。
兄として振舞ったこともない。存在を気にかけたこともない。
自分が彼を苦しめる要因の一つだったのだと言われれば、そうなのだろうと思う。
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