3 / 18
第3話 夕暮れの雨
しおりを挟む
「わらはの名はな……卑弥呼じゃ」
「卑弥呼……卑弥呼!?」
谷崎は驚きを隠せなかった。
「何故そんなに驚くのじゃ」
「だって卑弥呼はずっと昔にいた人だし!?」
卑弥呼と名乗る彼女はため息を付き、
「だから見たじゃろ、板が浮いたのを。これは魔法で浮かせたのじゃ。そう、お主を魔法で昔に移動させたのじゃ」
「………はぁ…」
谷崎はまだ完全に理解ができない。確かにスマホが浮いたのを見たがまだ自分が昔にタイムスリップしたのが理解できない。それに……
(教科書に載っている卑弥呼の絵と全然似ていない!?)
教科書に載っている卑弥呼は失礼だがそんなにかわいくない。でも目の前にいる卑弥呼と名乗る彼女はめちゃくちゃかわいい。
「…あなたは卑弥呼なのですね」
「もちろんじゃ。何故聞くのじゃ?」
彼女は首を傾げる。
「教科書に載っている卑弥呼の絵と似ていないので……」
「ほぅ!わらはが未来の書物に載っているのだな!」
彼女は嬉しい表情を浮かべる。
「それ少し見せてくれないかの!」
(今は教科書持っていないぞ…あ!確かスマホに撮った写真があったっけ)
「ちょっとそのスマホを返してくれませんか」
「スマホ…この板のことか?すまない、貸してくれて有難うな」
そう言い彼女はスマホを返した。
(圏外だ…本当にここは弥生時代なのか?)
そう思いながら谷崎はスマホを操作し始める。彼女は横からそれを見て、
「板に絵が出たぞ!?うぉ!?それに動いている!?これは魔法か!?」
(スマホに驚いてる…本当に卑弥呼なのか?)
「これは魔法じゃないです。これは未来の技術です」
「むむ、やはり未来は凄いな」
谷崎はフォトをタップし、たくさんの写真の中から探しお目当ての写真をタップする。
「これです」
「んー……何て書いておるのじゃ?」
「卑弥呼は邪馬台国の女王って書いてあります」
「ほう!…卑弥呼は邪馬台国の女王!……何じゃ?この絵に描かれている人は?」
谷崎はためらったが彼女が何度も言うので渋々言った。
「……これは卑弥呼です」
「ほうほう…これがわらは…わらはなのか!?」
彼女はかじりつくように見た。
「これが未来の書物に載っているのか!?これではわらはの美しい美貌が…!」
「お、落ち着いてください」
スマホを投げようとしたため谷崎は慌てて止めに入る。
「そ、そうじゃな。わらはが居た時から何百年も経っているからな」
そう言いながらも彼女はでーんと落ち込んでいた。
それを見ていた谷崎は彼女に言う。
「…あなたは自分のことを卑弥呼と言っていますが僕はまだ理解できません。自分が邪馬台国に居ることも」
「…そうか、どうしたら信じてくれるか…」
彼女が再び考えようとしたとき。
「卑弥呼様!」
「おお、どうした」
彼女の下に男たちが近付いてきた。
「最近は日照りが多く稲が心配です。雨はいつ降るのでしょうか」
彼女は笑顔で答えた。
「夕暮れに降る。そう心配するでない!」
その言葉を聞き男たちも笑顔になった。
「そうでございますか。有難う御座います」
「いや、わらはは占いをしたまでじゃ」
彼女がそういっても男たちは感謝をし続けていた。その男たちの一人が谷崎の事に気づく。
「この男は誰でしょうか。変な服を着ていますし、この村にいたでしょうか?」
彼女は慌てて答える。
「こ、こやつはな隣の村から引っ越して来たんじゃ、それで今、こやつに占いの衣装を着させて占っていたんじゃほ、ほら村の人たちに挨拶!」
「え!?あ、これからよろしくお願いします!」
谷崎は慌てて挨拶をした。
「あぁこれからよろしくな。すまない占いの衣装を変と言ってしまって」
「い、いえ、よく言われるんで…」
そして彼女にも謝る。
「申し訳ございません。占いの最中に話しかけてしまって」
「いや、謝ることではない。困ったらお互い様じゃからな」
男たちは彼女に会釈をした。
「では私達は戻ります」
「ああ」
彼女は男たちが見えなくなるまで待ち、
「危なかったのう…」
冷や汗をかいた彼女が言う。
「これで、わらはが卑弥呼と分かってくれたかの?」
彼女は谷崎の目を見て言った。
谷崎はまだ少し疑っていたが一応信じることにした。ここは今の日本じゃない。森が多いし、コンクリートで作られた家がない。現代にまつわるものが一切無いのだ。それに、『心の中でずっと行ってみたかったところ』にきた気がしたのだ。
「信じます」
「信じてくれて有難うな」
卑弥呼は優しい顔をした。
「お主には未来の事について聞きたい事が沢山あるんじゃ」
「僕も昔の事について聞きたい事が沢山あります」
卑弥呼は笑顔で、
「勿論じゃ、沢山応えよう」
二人は笑った。
その時は夕暮れだった。そう、夕暮れ。
ポツポツポツ
「ん?ああ!雨じゃ!早くわらはの家に入るのじゃ!」
「えっ!?」
そう言って谷崎の手を取って家に駆けつけた。
その日の夜は村に久しぶりに雨が降った。日照りが続いた村は村人たちの喜びに包まれた。
「卑弥呼……卑弥呼!?」
谷崎は驚きを隠せなかった。
「何故そんなに驚くのじゃ」
「だって卑弥呼はずっと昔にいた人だし!?」
卑弥呼と名乗る彼女はため息を付き、
「だから見たじゃろ、板が浮いたのを。これは魔法で浮かせたのじゃ。そう、お主を魔法で昔に移動させたのじゃ」
「………はぁ…」
谷崎はまだ完全に理解ができない。確かにスマホが浮いたのを見たがまだ自分が昔にタイムスリップしたのが理解できない。それに……
(教科書に載っている卑弥呼の絵と全然似ていない!?)
教科書に載っている卑弥呼は失礼だがそんなにかわいくない。でも目の前にいる卑弥呼と名乗る彼女はめちゃくちゃかわいい。
「…あなたは卑弥呼なのですね」
「もちろんじゃ。何故聞くのじゃ?」
彼女は首を傾げる。
「教科書に載っている卑弥呼の絵と似ていないので……」
「ほぅ!わらはが未来の書物に載っているのだな!」
彼女は嬉しい表情を浮かべる。
「それ少し見せてくれないかの!」
(今は教科書持っていないぞ…あ!確かスマホに撮った写真があったっけ)
「ちょっとそのスマホを返してくれませんか」
「スマホ…この板のことか?すまない、貸してくれて有難うな」
そう言い彼女はスマホを返した。
(圏外だ…本当にここは弥生時代なのか?)
そう思いながら谷崎はスマホを操作し始める。彼女は横からそれを見て、
「板に絵が出たぞ!?うぉ!?それに動いている!?これは魔法か!?」
(スマホに驚いてる…本当に卑弥呼なのか?)
「これは魔法じゃないです。これは未来の技術です」
「むむ、やはり未来は凄いな」
谷崎はフォトをタップし、たくさんの写真の中から探しお目当ての写真をタップする。
「これです」
「んー……何て書いておるのじゃ?」
「卑弥呼は邪馬台国の女王って書いてあります」
「ほう!…卑弥呼は邪馬台国の女王!……何じゃ?この絵に描かれている人は?」
谷崎はためらったが彼女が何度も言うので渋々言った。
「……これは卑弥呼です」
「ほうほう…これがわらは…わらはなのか!?」
彼女はかじりつくように見た。
「これが未来の書物に載っているのか!?これではわらはの美しい美貌が…!」
「お、落ち着いてください」
スマホを投げようとしたため谷崎は慌てて止めに入る。
「そ、そうじゃな。わらはが居た時から何百年も経っているからな」
そう言いながらも彼女はでーんと落ち込んでいた。
それを見ていた谷崎は彼女に言う。
「…あなたは自分のことを卑弥呼と言っていますが僕はまだ理解できません。自分が邪馬台国に居ることも」
「…そうか、どうしたら信じてくれるか…」
彼女が再び考えようとしたとき。
「卑弥呼様!」
「おお、どうした」
彼女の下に男たちが近付いてきた。
「最近は日照りが多く稲が心配です。雨はいつ降るのでしょうか」
彼女は笑顔で答えた。
「夕暮れに降る。そう心配するでない!」
その言葉を聞き男たちも笑顔になった。
「そうでございますか。有難う御座います」
「いや、わらはは占いをしたまでじゃ」
彼女がそういっても男たちは感謝をし続けていた。その男たちの一人が谷崎の事に気づく。
「この男は誰でしょうか。変な服を着ていますし、この村にいたでしょうか?」
彼女は慌てて答える。
「こ、こやつはな隣の村から引っ越して来たんじゃ、それで今、こやつに占いの衣装を着させて占っていたんじゃほ、ほら村の人たちに挨拶!」
「え!?あ、これからよろしくお願いします!」
谷崎は慌てて挨拶をした。
「あぁこれからよろしくな。すまない占いの衣装を変と言ってしまって」
「い、いえ、よく言われるんで…」
そして彼女にも謝る。
「申し訳ございません。占いの最中に話しかけてしまって」
「いや、謝ることではない。困ったらお互い様じゃからな」
男たちは彼女に会釈をした。
「では私達は戻ります」
「ああ」
彼女は男たちが見えなくなるまで待ち、
「危なかったのう…」
冷や汗をかいた彼女が言う。
「これで、わらはが卑弥呼と分かってくれたかの?」
彼女は谷崎の目を見て言った。
谷崎はまだ少し疑っていたが一応信じることにした。ここは今の日本じゃない。森が多いし、コンクリートで作られた家がない。現代にまつわるものが一切無いのだ。それに、『心の中でずっと行ってみたかったところ』にきた気がしたのだ。
「信じます」
「信じてくれて有難うな」
卑弥呼は優しい顔をした。
「お主には未来の事について聞きたい事が沢山あるんじゃ」
「僕も昔の事について聞きたい事が沢山あります」
卑弥呼は笑顔で、
「勿論じゃ、沢山応えよう」
二人は笑った。
その時は夕暮れだった。そう、夕暮れ。
ポツポツポツ
「ん?ああ!雨じゃ!早くわらはの家に入るのじゃ!」
「えっ!?」
そう言って谷崎の手を取って家に駆けつけた。
その日の夜は村に久しぶりに雨が降った。日照りが続いた村は村人たちの喜びに包まれた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)
俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。
だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。
また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。
姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」
共々宜しくお願い致しますm(_ _)m
日本が日露戦争後大陸利権を売却していたら? ~ノートが繋ぐ歴史改変~
うみ
SF
ロシアと戦争がはじまる。
突如、現代日本の少年のノートにこのような落書きが成された。少年はいたずらと思いつつ、ノートに冗談で返信を書き込むと、また相手から書き込みが成される。
なんとノートに書き込んだ人物は日露戦争中だということだったのだ!
ずっと冗談と思っている少年は、日露戦争の経緯を書き込んだ結果、相手から今後の日本について助言を求められる。こうして少年による思わぬ歴史改変がはじまったのだった。
※地名、話し方など全て現代基準で記載しています。違和感があることと思いますが、なるべく分かりやすくをテーマとしているため、ご了承ください。
※この小説はなろうとカクヨムへも投稿しております。
蝶の如く
きなこ
恋愛
普通のOLだった桜蘭 楓(オウカ カエデ)
変わった所といえば、学生の時に始めた居合を、社会人になっても趣味として続けていることだ。
そんな彼女が、いつもの様に仕事帰りに居合道場に通った帰り道…それは起きた。
神隠しとでも言うのだろうか。
彼女は動乱の幕末へとタイムトリップしてしまい、そこで出会った人々と歴史の波に巻き込まれながらも、懸命に生きていく。
※史実に基づき進行していますが、歴史改変あり。
※女性向け恋愛要素含む。
※1話1ページ感覚で読んで貰えると助かります。
大陰史記〜出雲国譲りの真相〜
桜小径
歴史・時代
古事記、日本書紀、各国風土記などに遺された神話と魏志倭人伝などの中国史書の記述をもとに邪馬台国、古代出雲、古代倭(ヤマト)の国譲りを描く。予定。序章からお読みくださいませ
三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河
墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。
三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。
全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。
本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。
おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。
本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。
戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。
歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。
※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。
※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
女王の名
増黒 豊
歴史・時代
処女作です。
ヤマトのヒメミコである、サナ。
不思議な声を聴く力を持つ彼女は、戦乱の中、一国の女王となり、そして一人の人間として生きてゆく。
その側にいつもあるマヒロの二人を中心とした、大国同士の戦い、謀略。
そこで燃焼する生命の炎と、彼らが繋ぐ明日を描く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる