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第七章 天竜国編

第22話 宝物の使い道

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 リーヴァスさん、コルナ、ミミが悪戦苦闘していた宝物の目録作りも、新たにコリーダが加わることにより、順調に進みだした。

 王女として育てられただけあり、コリーダの鑑定眼は並ではない。彼女は孤独な幼少期、宝物庫に入りびたり、そこを管理していた文官や騎士を質問攻めにしていたそうだ。
 何か分からなかった宝石やアーティファクトの多くは、彼女によって鑑定がなされた。

 いくらか残った不明な宝物は、竜王様から教えてもらった。中には彼すらも用途不明のアーティファクトや種類不明の金属、宝石があった。

 コルナが、彼女のパレットに宝物の名前と用途を整理している。大まかなに整理された時点で俺のパレットに転送されてきた宝物の目録は以下のようなものだった。


 宝石類 ルビー、ダイヤモンド、太陽の雫、月の雫、レッドパール、ブルーパールなど、約1000個 

 金属類 アダマンタイト、黒鉄、ミスリル、パールタイトなど、インゴット約3000本

 武具類 各種剣5本、各種槍5本、各種盾5枚、各種鎧5着、各種ワンド5本

 魔道具類 指輪類122個、ブレスレット120個、ペンダント、122個 王冠、サークレット66個、王笏23本

 アーティファクト
   温泉水のアーティファクト 112個
   水のアーティファクト     355個
   火のアーティファクト    33個
   風のアーティファクト    78個
   土のアーティファクト    56個
   氷のアーティファクト    15個
   雷のアーティファクト    14個
   時間のアーティファクト    5個

 明らかに竜が使うサイズの武具、アーティファクト、魔道具は除外してある。また、不明な金属、アーティファクトも目録から外しておいた。
 武具が少ないのは、人化したときにだけ使うものだからだろう。しかし、なぜか、同じ人族用のものでも、アーティファクト、魔道具類は豊富にあった。

 宝物のあらましが分かったところで、パーティ全員を集め、リーヴァスさんから訓示があった。
 冒険者が、最も警戒すべきは、魔獣でもモンスターでもなく、己の欲望である。ダンジョンの報酬を巡って、パーティメンバー同士が殺しあいをすることも珍しくない。彼が所属した伝説のパーティ「セイレン」でさえ、報酬を巡り、解散の危機に陥った事がある。

 そういう話だった。言われてみれば、確かに頷ける話だ。
 最も危険なものは自分の中にいるんだね。

『つ(*'▽') ご主人様ー、私は危険じゃありませんよー』

 分かってるよ、点ちゃん。

 史郎達は、リーヴァスの訓示を胸に刻むのだった。

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 それから二週間、史郎は竜王もうでのサポートで、他のことを考えられないほど忙しかった。

 ナル、メル、イオは竜王様の大広間で遊んでいることが多かった。
 俺とルルが、そこにいるのも理由だろうが、竜王様と念話でいろいろ話しているようだ。三人は時々、魔術を使う練習をしていることもある。
 お昼ご飯を食べると、コケットで三人並んで昼寝している。そんなときは、竜王様が、三人の寝顔を覗きこんでいることもあった。三人とも気持ちよさそうに寝るからね。

「シロー、せっかくですから防具を新調しませんか?」

 リーヴァスさんは、すでに伝説級の装備があるようだが、それ以外のパーティーメンバーのそれは、十分なものとは言いがたい。

 ミミとポルは、エルファリア王からもらった防具があるにはあるが、ミミはそれ以外の防具との差が大きくてバランスを欠いているし、ポルに至っては、総ミスリルの鎧だからすぐには使えそうにない。

 コルナは、さすがに品質が良いローブや靴を持ってはいるが、戦闘用となると心もとない。

 ルルも、革鎧だけはエルファリアでいいものを手に入れたが、それ以外はそれほど高品質のものではない。

 コリーダに至っては、戦闘用防具は何一つ持っていない。

 これは、さすがにまずいだろう。これからもダンジョンに挑戦するようなことがあるなら、早めに考えておいた方がいい。

「リーヴァスさん、宝物庫のもので何か防具を作れそうですか?」

「ええ、それは心配ありません。
 あれだけの金属があれば、大方の防具は作れるでしょう」

「古代竜の子供達に必要なものは残せそうですか?」

「そうですな。
 量は心配ないでしょう。
 あそこにあるのは、高純度の金属ばかりの様ですから、それを通常の金属と混ぜて使えば、延べ棒一本で、かなりの合金が作れます」

 なるほど、そのまま使うんじゃないのか。勉強になるね。

「幸い、知り合いに腕のいい鍛冶屋がいますから、防具製作は問題ないでしょう」

「ナルとメルに装備は必要でしょうか?」

「そうですな。
 家族全員で行動する機会を増やすなら無駄にはならないでしょう。
 この際ですから、作っておきましょう」

「分かりました。
 装備についてはいろいろ教えてください」

「ははは、あなたに何か教えられるのは嬉しいですな」

 リーバスさんは、そう言うと、ルル、ミミ、ポル、コリーダがいるところに歩いていった。この四人は、毎日、驚くほど真面目にリーヴァスさんから剣を習っている。
 特に、ミミとポルはこのダンジョンを攻略した体験から、その必要性を痛感したようだ。
 俺から見ると、二人とも、もうかなりの腕前なんだけどね。

 史郎は、自分が剣の練習を全くしていないとには、気づいてもいなかった。

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「竜王様、卵がかえったときに、とりあえず必要なものはありますか?」

 俺は、宝物に足りないものが無いか確認するため、竜王様に尋ねてみた。

『そうだの、食器類、爪を研ぐ道具、体を綺麗に保つ道具などかの?』

「体を綺麗に保つといえば、入浴などする必要はありませんか?」

『入浴とは何じゃ?』

「お湯の中に体をひたすことです」

『何のためにそのようなことをする?』

「体の汚れを落とし、疲れを取ることが出来ます」

『ほう、それは興味深いの。
 しかし、ここには湯が無いから試すことは出来ぬの』

「宝物庫にお湯が出るアーティファクトが沢山ありますから、よろしければ私が作りますが」

『おお、そうか。
 では頼めるか』

「宝物庫の中の物を、『ゆりかご』があった部屋に移してもよろしいか?」

『それはよいが、そち達人族には、かなり大変な仕事ではないか?』

「私の魔法を使えば、大丈夫です」

『では、宝物庫を使うてくれ』

「分かりました」

 こうして、史郎の巨大浴槽造りが始まった。
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