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第七章 天竜国編
第16話 天竜国のダンジョン9
しおりを挟む史郎達は、二匹の猫を連れ、ダンジョンの奥へ向かった。
なぜ猫が二匹いるのかって?
スライムのまま残っていた半分が、いつの間にか黒猫になってたんだよね。
今は俺が白猫、ルルが黒猫を抱いて歩いている。
点ちゃんは、子猫達(スライム)とおしゃべりしているらしくご機嫌だ。しかし、スライムと点ちゃんの会話、なんで俺には聞こえないんだろう。
不思議なことに、あれほど悩まされていたジャイアント・スネークはその後一匹も現れなかった。
泉から1時間ほど歩いただろうか、森から出た一行は壁に突きあたった。その壁には、大きな金色の扉がある。ダンジョン入り口にあったものと、同じ模様が描かれている。
曲線を多用したその模様は、沢山の竜が天に昇っているようにも見える。
俺達は、一人一人扉を押してみたが、びくともしなかった。
もし、この扉も天竜がいなければ開かないとすると、俺達のダンジョン探検は、ここで終わりということになる。
「ミ~」
俺が抱えている白猫が高い声で鳴くと、扉が音もなく開いた。
「えっ?
なんで?」
ポルが驚いた顔をしている。どうやら、扉の鍵は、この特殊スライムだったらしい。
中には、広い空間があった。広さは体育館3つ分くらいあるだろうか。天井の高さも、体育館の3倍はありそうだ。
俺達六人と二匹が部屋の中に入ると、扉は静かに閉まった。
部屋の中央に、小山のように白い柱が積みかさなっている。
辺りは、音もなく静かだ。いや、静かすぎる。
俺達は、唯一の手掛かりである小山の方に向かった。
「むうっ、これはっ!」
リーヴァスさんが何かに気づいたようだ。彼は俺達に下がるように指示すると、白い円柱状の柱を調べだした。
振りかえった彼は、青い顔をしている。
そんな彼の表情を見るのは初めてだったので、何かとてつもなくやばいことが起きかけていることだけは分かった。
彼は足音を立てぬように、そろそろとこちらまで下がってきた。
「おそらく、この骨はドラゴンのものですな」
ドラゴンの骨!?
「しかも魔術の気配がします」
ということは、アクティブな骨って言うこと。俺にも事態の深刻さが飲みこめた。
リーヴァスさんは、唇に人差し指を当て、そうーっと骨から遠ざかろうとする。俺達もそれに続く。
しかし、静寂は突然破られてしまった。
ルルが抱えている黒い子猫が、「ニャ~」と高く鳴いたのだ。
俺が予想した最悪のシナリオ通り、まっ白な大きな骨が薄青く光りだしたかと思うと、ゴンゴンと音を立てて動きはじめた。
ゴンゴンという音は、骨と骨が組みあわさるときに出ているようだ。
やがて史郎達の前には、頭の高さが10mはあろうかという骨のドラゴンが姿を現した。
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