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第七章 天竜国編

第8話 天竜国のダンジョン1

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 史郎は、夕方までに山脈からこちらの『枯れクズ』平野を全て処理した。

 広場程度のものは、まだ放置しているが、それは天竜に任せることにする。

 洞窟に帰ると、皆は思い思いに過ごしていた。場所は、赤竜の暴れん坊が乱入してきた、あの広い空間だ。

 リーヴァスさんは、ポル、ミミに剣術の指導をしている。コリーダが、これに参加しているのには、少し驚いた。

 ナル、メルは、コルナ先生からボードを習っている。イオも初心者用ボードを練習中だ。人化できる竜の子供は、皆そこに集まっている。

 俺の姿を見つけた長が小走りに近づいてくる。彼は、再び人化していた。

「シロー殿、首尾はどうじゃった?」

「ええ、広い場所は、全部終わらせましたよ」

「有難い」

 彼は、俺の手を両手でぐっと握った。

「これが上手くいくと、この世界は救われたも同然じゃ」

「ああ、『枯れクズ』の事は、もう解決できますよ」

「ははは、不思議じゃな。
 お主が言うと、本当にそれが出来るような気がする。
 おお、そうじゃ。
 お主の力を見て思いついた事がもう一つあるのじゃ。
 食事の後でまた部屋に来てくれるか?」

「分かりました。
 場所は分かりますから、案内は不要ですよ」

「そうか。
 では、食事の後、部屋で待っておるからな。
 戦闘力が高い者を連れて来るといい」

「ええ、そうします」

 長は最後に俺の両肩をポンポンと叩いて大部屋を出ていった。

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 夕食の後、史郎は、リーヴァス、ルル、コルナ、ミミ、ポルを連れて、長の部屋にやってきた。

 ドアが無いので、入り口付近で声を掛けてから中に入る。すでに、3枚の敷物が置かれており、その1枚に長が座っていた。

「よう参られた。
 ささ、お座り下され」

 六人が、三人ずつに分かれて、2枚の敷物の上に座る。

「シロー殿、森の事、本当にありがとうございました」

「いえ、こちらにも利があることなのでお気にせず」

「そう言うて下さるか。
 誠にかたじけない」

「ところで、お話と言うのは……」

「おお、そうそう。
 今日、森の上を飛んでおるときに、前方に山があるのに気づかれたか?」

「ええ、ありましたね」

「あの山には、いくつかダンジョンがあるのじゃ」

「ダンジョン!」
「やった!」

 ミミとポルから歓声が上がる。

「我ら竜には、通路が小さすぎるので、時々人化した若いのが挑んでおる」

 それなら、わざわざ俺達を呼ばなくてもいいと思うが……。

「その中の一つに、真竜様に由来すると言われるダンジョンがあるのじゃ」

「ほう、それは興味深いですな」

 リーヴァスさんが、気を引かれたようだ。真竜に由来するということは、ナルとメルに関係するということだからね。

「今まで、若いのが挑戦してきたのじゃが、現れる魔獣が強くての。
 一番高く上がれたもので、第3層がやっとじゃ」

「何層あるか、分かってないんですね?」

「分かっておらぬ。
 恐らく5層くらいではないかと思うのじゃが」

「どうしてそう思われるのですか?」

 これは、ミミからの質問だ。

「他のダンジョンが3層か4層なので、そう思うたのじゃ」

 なるほどね。他のダンジョンは、一番上までクリアしてるのか。

「ダンジョンなのに、上がるのですか?」

 これは、ポルからの質問だ。確か、パンゲア世界やグレイル世界のダンジョンは、地下に伸びていると聞いたことがある。

「天竜国のダンジョンは、全部、山脈のふもとに入り口があっての。
 そこから斜めに上がっていく洞窟をダンジョンと呼んでおる」

「洞窟は、枝分かれしていますか?」

 ルルらしい、具体的な質問だ。

「数は少ないが、枝分かれしとるのもいくつかあるぞ。
 洞窟沿いの小部屋なら無数にある。
 魔獣は、そこから出てくるものが多いのじゃ」

「長も、入ったことがあるのですか?」

 尋ねてみる。

「ああ、若いころに数度な。
 何度か危ない目に遭うてな。
 それっきり行かんようになってしもうた」

「ダンジョンに入ったことがある方から、話をうかがってもいいですか?」

 これは、コルナからの質問だね。

「どうぞ遠慮なく聞いてくだされ。
 若い者には、そう伝えておきますゆえ」

 史郎達は、話し合った末、若い竜から情報を仕入れた後、ダンジョン攻略に臨むかどうか決めることにした。
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