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第六章 竜人世界ドラゴニア編

第19話 大入り

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 今まで串肉を売っていた場所に、土魔術で、屋根つきの新店舗を開いた。

 看板は、ネアさんに書いてもらった。俺は、読めるけど書けないからね。
 素人目にも、かなり上手い字だと分かる。とりあえず、外装はこれでいいか。

 ノボリも作る。この世界には、ノボリの習慣が無いようだから、店の前に立てると非常に目だった。ノボリには、「とろ~り甘いクッキーだよ」とイオが書いた。

 さっそくお客が来る。

 「おい。兄ちゃん、これ『甘い』って書いてるが、本当か?」

 少年と手を繋いだ赤竜族のおじさんが聞いてくる。

 「本当ですよ。でも、作り方は秘密です」

 「とりあえず、一枚だけ買えるか?」

 「一枚が小さいので、袋売りです。でも、試食はできますよ」

 「その『シュショク』って、何だい?」

 なるほど、この世界には試食の文化も無いんだな。

 「一枚だけなら、無料で食べられます」

 「おい。そんなことをして、損にならねえのか?」

 「大丈夫です。ウチは商品に自信がありますから。食べたら必ず買いたくなりますよ」

 「じゃ、一枚試食するぜ」

 「お子さんのもどうぞ」

 俺は、二枚のクッキーに蜂蜜をわずかに垂らすと、渡してやった。

 「な、何だこれ! あめーぞ!」

 「父ちゃん、すっごくおいしい!」

 俺も思わず笑顔になる。

 「おい、2袋。いや、5袋くれ」

 「はい。毎度ありー」

 二人の様子を見ていたお姉さんが足を停める。

 「ねえ。シショクって私もできるの?」

 「ええ、どうぞ」

 「なにっ、これ! 甘いー!」

 この辺から、店の前は物凄い人だかりとなった。
 試食した人の「甘いー!」の叫びと注文の声で、耳が痛いほどだ。
 途中から、ネアさんとイオも手伝ったが、また長い行列ができてしまった。
急遽、串肉の時に使った「美味肉、最後尾」という看板の「肉」という字を消して利用する。
 多めに作ったクッキーは、一時間もせずに全部売れてしまった。
 今日は、ネアさんも含めて五人でハイタッチする。

 「やったー!」

皆、顔が輝いている。


 史郎は、元気が無かったリニアがイキイキしているのを見て、店を開いて本当に良かったと思った。
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