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第六章 竜人世界ドラゴニア編
第18話 ポンポコ商会ドラゴニア支店 - ポンポコ商会6号店オープン -
しおりを挟む史郎達は、イオの家に厄介になる事になった。
折角なので、家の改築を申しでる。お母さんが是非にということだったので、大規模な改造を行う。
半地下部分は二部屋のままにして、その下に地下を作った。
豚小屋も、土魔術で建てなおす。廃材は、とりあえず点収納に入れておいた。
親子が肉を売って帰ってくると、家は出来あがっていた。点収納に保管しておいた家具などは、とりあえず元の位置に戻しておいた。
「な、なんです、これは!」
お母さんが、綺麗になった内部を見て驚いている。点収納に入れておいた余分なクッションやテーブルで、部屋は見違えるほど綺麗になった。
「ご不満なところがあれば変えますので、遠慮なく言ってください」
「いえ。こんなにも素晴らしくなって、不満なぞありませんよ」
お母さんは、呆れと驚き、そして喜びが混ざった表情をしている。
「わーい、フカフカだー」
イオが、ソファーの上で寝そべっている。
二人に、豚小屋の方を、案内する。
「まあ、ここまでこんなに。本当にありがとうございます」
「どうぞ、こちらもご覧になって下さい」
豚小屋の横には、小さな小屋が母屋に寄りそうように建っている。
親子に中を見せる。
「まあっ!」 「わあ!」
二人の前には、お風呂があった。
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風呂の水は、母屋の屋根に降った雨水を取りこむ方法と、水の魔道具を使う方法の両方が選べるようになっている。
お湯は薪を焚いて沸かす。かまどの上のパイプの中で温められた水が、浴槽に戻る仕組みになっている。この部分は、劣化しにくいように、点魔法と鉄板で作っておいた。鉄板は、取りはずしできるようになっている。スペアも用意した。
『(・ω・) ご主人様は、お風呂にはこだわりますねー』
だって、点ちゃん。くつろぎに関係するんだもん。
一番風呂に入った、親子が出てくる。
「お兄ちゃん! すごく気持ちよかった」
「本当に、ありがとうございました」
聞くと、今までは、町が運営する共同入浴施設に一月に一回入れたらいい方だったらしい。彼女達の後で、俺やポル、リニアもそれぞれ入浴を済ませた。やはり、お風呂は気持ちがいい。
風呂から上がった俺は、台所で点ちゃん収納からシカに似た獣を出す。
「まあ! このジジは?」
「この町に来る途中で襲ってきたんですよ。どうぞ、このお肉も販売用に使ってください」
「本当に、何から何まで……」
お母さんは、言葉を詰まらせた。
俺は、湿っぽい空気を払うために、次の計画を話しあうことにした。
下二階の客間に土魔術でテーブルと人数分の椅子を作った。
「ポル、何かいいアイデアは無いかい?」
「塩の在庫は、あとどのくらいありますか?」
「うーん、今の調子だと、一月ももたないな」
「砂糖の在庫はどうでしょう」
「ああ、砂糖なら山ほどあるぞ」
ちょうど、ミツさんから頼まれて、マスケドニアの「ポンポコ商会」支店向けに用意したばかりだったからね。
「お店を見て歩いたのですが、甘いものが売ってないんですよね。
ネアさん、甘い物ってどうなってますか」
ポルが尋ねる。
ネアは、イオの母親の名前である。
「この町に、甘いものはほとんど売っていませんよ。
海で獲れるある種の魚が甘い液体を分泌するのですが、それを採るための方法は、ある一族が秘密にしています」
「お兄ちゃん、甘いものは偉い人しか食べられないんだよ」
なるほど、そういう常識があるのか。
「蜂蜜などは、どうなってます?」
「蜂蜜?」
「蜂が作る、甘い液体です」
「森に行けば蜂はいますが、あまりに危険で、蜂蜜ですか、それを取る人なぞ誰もいません」
それは、「終の森」で出てきた蜂が相手なら当然だろうね。
「よし。蜂蜜を取ってきて、お菓子を焼こう」
「シローさん、大丈夫でしょうか」
「俺に考えがあるから、きっとうまくいくよ」
こうして、俺達のお菓子作り作戦が始まった。
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史郎とポルは森に入って蜂の巣を探すところから始めた。
ここで、ポルが獣人としての能力を遺憾なく発揮した。一つ蜂の巣を見つけると、その匂いを頼りに他の巣を見つけていった。
巣には点魔法で作った透明なパイプを挿し、そのパイプを通してビンの中に蜂蜜を集める。
蜂蜜のビンは、獣に盗られないように、シールドでカバーしておいた。
翌日、蜂蜜を集めにまわる。
ここの蜂は、サイズは大きいけれど、『終の森』ほど攻撃的ではない。念のため、シールドを被って作業したが、襲ってくる蜂はいなかった。
蜂の巣にどうやってパイプを挿せば、蜂蜜を取りすぎないかも分かってきた。取りすぎちゃうと、蜂が巣を捨てるみたいなんだよね。
イオの家に帰ると、机の上に蜂蜜が入った瓶を並べる。
ずらりと並んだ、黄金色の液体を見て、イオが歓声を上げる。
「うわーっ! 私、蜂蜜見るの初めて」
「ちょっと、舐(な)めてみるかい?」
スプーンですくって、渡してやる。
「んんん。美味しい!! こんなに甘いもの、食べたことない」
満面の笑顔になったイオの頭を撫でてやる。俺も舐めてみるが、今まで食べた、どの蜂蜜より濃厚で美味しい。
「よし。まずはクッキーから焼いてみるか」
クッキーは、ネアさんの得意料理だそうだ。
俺は、砂糖を点収納から出す。
「これを、生地に少し混ぜてください」
「これは、何です?」
「砂糖と言って、甘みを加える調味料です」
「えっ! これも甘いのですか?」
指の先に付けて、舐めるように勧める。
「甘いっ! 本当に甘いですね」
「ええ。だから、それほど沢山混ぜる必要はないでしょう」
「蜂蜜は、どう使いますか?」
「出来たクッキーに少量掛けましょう」
こうして、お店の新しい商品が出来あがることになった。
「シローさん。せっかくだから、お店の名前も考えてくれますか」
ああ、商店の名前があったか。
『( ̄x ̄) この人、間違った人に聞いてるー』
点ちゃん、それは無いだろう。
しかし、いくつか候補を出してはみたが、ポルとリニア、果てはイオにまで却下された。なんで、「とろあま商店」や「ハッチ商店」がダメなのか分からない。
結局、新しい店の名前は「ポンポコ商会ドラゴニア支店」に落ちついた。
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