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第六章 竜人世界ドラゴニア編
第15話 リーダーを追って1
しおりを挟む獣人世界では、ケーナイギルドの会議室に、リーヴァス、ルル、コルナ、ミミが集まっていた。
もちろん、アンデもいる。そして、座の中央にいるのは猫賢者だった。
「シロー殿が、ポータルに消えた顛末は分かった。
それで、『黒竜王の涙』は、アンデ、お前が持っておるのだな。ニャ」
「はい。賢者様、こちらでございます」
「おお! まちがいない。宝玉じゃ」
猫賢者は、三つの玉を目より少し高い位置に掲げた。
「しかし、これを使う呪文が分からねば、意味をなさぬな」
アンデが、何か思いだすように話しだす。
「ああ。犯人の呪文ですが、一部なら聞きました」
史郎に向けて猫人の男が走りよろうとするタイミングで岩陰から飛びだしたのが、功を奏したようだ。
「確か、『黒き竜~今開かん』です。ほんの一部だけですが」
「おおっ! でかしたぞ、アンデ。それだけ分かれば十分じゃ。ニャッ」
「賢者様。それでは、シローと同じ世界に行けるのですね?」
ルルが顔を輝かせる。
「そうじゃ。まあ、実際に試してみるまでは分からんが。ニャ」
「リーヴァス様、リーダーとポン太を発見するまで、どうかパーティをお願いします」
ミミは、いつになく真剣な顔をしている。
「引きうけましょう。彼は私の家族ですからな」
「よし。そうとなったら、善は急げだ。ギルメンにも召集を掛けるぜ」
「いえ。アンデ殿、ここは私達だけで向かいます」
「しかし……」
「宝玉の効果が定かでないわけですから、皆さんに命を掛けろとは言えません。
分かってくだされ」
アンデは、リーヴァスの言葉に俯いていたが、きっと顔を上げるとこう言った。
「分かりました。私達は、全力でサポートに回ります。
賢者様、宝玉の準備ができるのは、最短でどのくらいでしょうか」
「そうじゃな。少し調べたいこともあるから、二日後というところか。ニャ」
「分かりました。リーヴァス様、物資の調達等は全てこちらにおまかせ下さい。
ケーナイギルドは、総力を挙げますよ」
「かたじけない」
リーヴァスさんが頭を下げる。
「「「ありがとうございます」」」
ルル、コルナ、ミミも頭を下げた。
こうして、ケーナイギルド全面協力の元で転移の準備が始まった。
------------------------------------------------------------------
リーヴァス達が、シロー専用部屋に戻ると、コリーダが出迎えた。
彼女は、ナルとメルの世話に、部屋に残っていたのだ。
「お話はどうなりましたか?」
「うむ、なんとかなりそうですぞ」
「良かった」
コリーダが、心底ほっとしたように、胸に手を当てた。
「おじい様、ナルとメルはどうしましょう」
ルルが、ベッドでぐっすり寝ている二人の髪を手で梳きながら小声で言う。
「そうだね」
リーヴァスさんも、今回の事に二人を連れていく事には、躊躇しているようだ。
その時、部屋のドアを小さくノックする音がした。
ミミが開けると、猫賢者が立っていた。部屋に入ってきた彼は、寝ているナルとメルの方に深々と礼をする。
「リーヴァス殿、伝えるのを忘れたことがあっての」
ナルとメルを起こさないようにだろう。猫賢者は、そうささやいた。
「何でしょう」
「この度の旅じゃが、お二方はぜひお連れするとよい」
「何か、お考えがあるのですな」
「竜人世界は、古代竜様の故郷ともいえる場所じゃ。ニャ」
「そうでしたか」
「神樹様と話したとき、ナル様、メル様のお母上の話が出ての」
「ナルとメルの母ですか?」
「そうじゃ。ニャ
その時、お母上はこういう時が来るなら、その世界を見せてやって欲しいとお願いになったそうじゃ」
「分かりました。彼女達も連れていきましょう」
「ぜひ、そうなさるとよい。ニャニャ」
猫賢者は、そう言うと、ベッドの方に一礼して部屋から出ていった。
「では、みなさん。明日からは忙しくなりますぞ。今日は、ゆっくり休んでおきなさい」
「「はい」」
リーヴァスが、部屋から出ていく。彼は、もう一つの客室を使うことになっている。
ミミも、実家で泊まるので出ていった。
部屋には、ルル、コルナ、コリーダが残った。部屋の隅に椅子を動かし、寝ている二人を起こさないように話を始めた。
「コルナ、コリーダ。もし、私に何かあったらナルとメルを頼むわよ」
ルルが、静かな声で言う。
「ルル、ナルとメルは私の子供でもあるのよ。そんなことで、気を遣う必要はないわ」
コルナが、応える。
「ええ。三人の誰かに何かあっても、この子達は絶対に守りましょう」
コリーダが、当然のように言う。
「シローのためにも、私達が出来ることをしましょう」
最後にルルが言う。三人は視線を交しあい、頷いた。
この瞬間、ルル、コルナ、コリーダは、本当の家族になった。
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