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第六章 竜人世界ドラゴニア編

第11話 竜人の村2

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 青い髪の竜人ルンドに連れられた史郎達は、15分ほど歩いて、竜人の村にやって来た。

 村の家々は、非常に屋根が低く、地面から1mくらいしかない。きっと半地下の構造になっているのだろう。板葺(いたぶ)きの屋根には、漬物石のような大きな石が沢山載せてあった。
 この地は、強風が襲うのかもしれない。

 見慣れない俺とポルの姿を見て、村人が次々に家から出てきた。

 「お姉ちゃん、あれ誰?」

 「あいつ、尻尾があるぞ!」

 「顔鱗が無いわ!」

 村人は俺達を取りかこむと、口々にしゃべりだした。
 彼らをかきわけて、白髪を伸ばした大柄の竜人が現れると、皆が静かになった。

 「ルンド、そいつらは誰じゃ」

 「村長、異世界から転移してきた人族と狸人族だそうです」

 「そこに横たわってるのは黒竜族じゃな。そっちの三人はどうした?」

 「はい。その人族と戦って、このような姿に」

 「なに! 人族に負けたじゃと? この部族の面汚しがっ!」

 村長は、ボードの上で、気息奄々となっている若い竜人の頭を蹴ろうとした。

 ガン

 「痛たたっ!」

 村長が足を抱えてうずくまる。俺がとっさに張ったシールドを蹴っちゃったんだね。

 「それで分かったろう。こいつらは弱くて負けたんじゃないんだよ」

 村長にそう言うと、彼はまっ赤な顔をして、片足で立ちあがった。

 「ええいっ! こやつを打ちのめせっ」

 比較的体が大きい竜人が数人、俺を取りかこんだ。
 また、治療するのも面倒くさいから、点をつけて吊りあげる。

 「あわわわわ」

 「ひい、降ろしてくれー」

 「……」

 ああ、一人は気を失っちゃったか。20mくらいしか上げてないんだけどね。とりあえず、地面に降ろしておく。みんな足腰が立たない状態だ。

 「村長、あんたも上がっとくか?」

 俺が尋ねると、首をブルブル振っている。

 ともあれ、俺達は、村で歓迎(?)を受けることになった。

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 史郎達は、村長の家に招かれた。

 その家は他の家を二棟くっつけたサイズで、広い客室もある。よそから来た者は、その客室に泊まるのだそうだ。

 囲炉裏の周りに敷物が置いてあり、そこに座る様だ。
 俺は、村長の隣にポルと並んで座った。
 腕を失った竜人の女は、薬師の家に寝かせてある。
 車座に座っているのは、ルンドを始め、がっしりした体格の竜人達である。

 食事が始まろうとするとき、俺が村長の前にある料理と俺のを取りかえる。村長は、嫌な顔をしていたが、俺は気にも留めなかった。その料理をポルと半分ずつする。
 給仕をしているのは、女の竜人だけである。どうやら、かなり原始的な社会形態のようである。

 村長の乾杯の合図で食事が始まる。食事は、何かの肉を香草と一緒に焼いたもののようだが、なんだかひどくまずい。
 気がついたのは、塩を使っていないのでは、ということ。

 地球にいたころ、塩を忘れてキャンプしたときに食べた料理の味に似ていた。
 点ちゃん収納から、塩を取りだして、自分の料理に振りかけてみる。なかなかいける。少なくとも、普通レベルの香草焼きになった。
 顔をしかめながら食べていたポルも、料理に塩をかけてやると、にっこり笑った。

 「これなら食べられます」

 ルンダが、塩に興味を持ったので、少し料理にかけてやる。

 「な、何だこれは! うまいぞ」

 他の竜人達も欲しがったので、料理にかけてやった。

 「おお! 本当だ。いつも食べてたジジの肉がこんなに旨くなるなんて」

 「ああ、こりゃ旨いな」

 好評である。

 「なあ、シロー殿、それは何だ?」

 「ああ、これは塩だよ」

 なぜか、場が凍りつく。
 え? 俺って何かいけないこと言った?

 「塩って、あの塩か?」

 「ああ、単なる塩だよ」

 車座の男達が騒ぎだす。

 「塩だ!」

 「俺、初めて食べたぞ」

 「母ちゃんに自慢するぞ」

 「すげーな! 白いから塩なんて思わなかった」

 聞くと、この国では、塩が非常な貴重品らしい。ほんのわずかに採れる岩塩は、中央の貴族が独占しているそうだ。
 おそらく、この世界の海水からは、あまり塩が取れないのだろう。

 パーティーで使った折り紙が残っていたので、それを薬包紙のように使い、塩を少しずつ分けてやった。本当は沢山あるのだが、あまり目立つことをしたくないからね。
 竜人の皆は、折り紙で包んだ塩をそっと懐に入れている。どんだけ塩が貴重なの、この世界。

 「このようなモノをもろうて申しわけないの。都までは、若いのに案内させよう」

 「助かる」

 俺は、気にかかっていたことを尋ねることにした。

「この世界の竜人には、いくつかの種族があるのか?」
 
 「ああ、四つありますじゃ」

 「四つとは?」

 「黒竜族、赤竜族、白竜族、そして我ら青竜族じゃ」

 「本当の竜は、いないのか?」

 「恐れ多いことじゃ。天竜様は、天空にいらっしゃると言われとる」

 村長は天竜という言葉を口にするとき、恭しく平伏していた。
 天空ね。どういう意味だろう。


 そもそも、本当に竜がいるのかね。
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