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第四章 聖樹世界エルファリア編
第46話 サーフィンと販路拡大 - ポンポコ商会3号店オープン -
しおりを挟む史郎達の島でのバカンスは、二日目を迎えた。
俺はナルとメルに頼まれて、点ちゃんボードを出した。点魔法の「付与 重力」で作った長さ1mくらいの板である。下にあるものから10cmくらいの所に浮くように出来ている。
ボードが初めてのメンバーは、興味深そうに見ている。
まずは、名手コルナが乗り方を見せる。
少し沖まで海面を滑っていって、立ったまま波を待つ。
この島は外海に面しているから、時々大きな波が来る。
コルナは見事にその波をつかまえた。
波のチューブの中をスーッと滑っていく。
その勢いで、皆のいるところまで自然に戻ってきた。
みんなが拍手喝采する。
初めての者にもボードを作る。コルナのような芸当は無理だろうが、波打ち際で滑るには問題ないだろう。
すぐに、みんなが夢中になる。
娘達とルルは、コルナに波乗りのコツを習っている。
俺は、波打ち際で初心者に教えている。
なんと、一番最初に乗れるようになったのは、あのデロリンだった。
子供の頃、故郷の海辺で波乗りをしていたそうで、体重移動のコツが最初からつかめていた。
彼も手伝って、1時間ほどで全員が乗れるようになった。
「ニャ~、気持ちいい~」
ミミが珍しく猫言葉をしゃべっている。
「うわ~、これはいいなー」
ポルもボードが気に入ったようだ。
それぞれがボードを楽しんだ後は、水着から服に着がえて点ちゃん1号に乗りこむ。
この後、史郎達は食事会に招かれている。
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点ちゃん1号は、あっと言う間に学園都市の上空にやって来た。
学園都市が初めてのパリスやメリンダは、上空から見た都市の偉容に驚いていた。
指定された場所は、かつて俺達が滞在した、ギルドの宿泊施設だった。
その庭に降下する。
そこには、懐かしい顔が待っていた。
「シロー! よく来た。久しぶりだな」
握手しながら、もう一方の手で肩を叩いてくるのは、元パルチザンのダンである。
でっぷりした体は変わっていない。こう見えて、彼は「黒髪の勇者」である。
「シロー」
小声で俺に話しかけてくるのは、おくるみに包まれた赤ちゃんを抱えた犬人ドーラだ。
赤ちゃんは、すやすや寝っている。
見ると、頭の上に垂れ耳がついている。人族のダンと彼女の子供だが、犬人族の特徴が強く出たらしい。
「ホープって言うのよ。まだ生まれて一週間なの」
俺はプレゼントも兼ねて、点魔法のコケットを渡しておく。俺がこの世界を去れば、ハンモック部分が消えるかもしれないが、それはダンに作ってもらおう。
意外にもダンの趣味は木工や金属加工みたいだから、すぐに代替品ができるだろう。
「またお目に掛かれて光栄です」
優雅に礼をする女性は、この都市の最高権力者メラディス首席だ。
史郎達は、ギルドから提供された建物に入った。
-----------------------------------------------------------------
中には、元パルチザンの主要メンバーやギルドの冒険者、この地に残って獣人解放の事後処理に携わっている獣人達がいた。
俺達が、入口から中に入ると、拍手と歓声が上がる。
「歓迎! ポンポコリン」
そう書かれた横断幕が壁に張ってある。
ミミ、ポル、コルナが獣人達から握手を求められている。
備えつけのテーブルの上には、俺も見たことが無い学園都市世界の料理が所狭しと並んでいた。
「今日は、この町を救った英雄とその仲間が帰ってきてくれた。
みんな、思う存分楽しんでくれ。じゃあ、乾杯!!」
ダンの音頭でみんなが乾杯をする。
皆の声に驚いたのか、ダンとドーラの子供、ホープが目を覚ました。大きな声で、泣き始める。
俺はドーラに言って、ホープをコケットの上に載せてもらった。
ホープはすぐに泣きやみ、寝息を立てだした。
「「「(すげー!)」」」
押し殺した、皆の声が上がる。
俺はメラディス首席に事情を話し、コケットを宣伝する許可をもらう。
「あなたには、まだ十分報いていませんでしたね」
そう言った主席が囁いたのは、俺も思いつかない大胆な宣伝方法だった。
---------------------------------------------------------------------
次の日、ちょうど学園都市の通学通勤に当たる時間帯に、住民は思いがけないものを目にした。
学園都市のビルには窓が無い。そのつるりとしたビル一つ一つの壁面に大きな映像が映ったのだ。
「みなさーん、お早うございまーす」
元気な声で登場したのは、ミミだった。
「お久しぶりー、元気にしてたかな?
今日は、ミミちゃんから耳寄りなお知らせがあるよ」
画面が切り替わり、泣いている赤ちゃんが映った。赤ちゃんを抱いている獣人の女性が、おくるみをそっと緑のベッドの上に降ろす。すると、すぐに鳴き声が寝息に変わった。
ミミの声が画像に重なる。
「泣いてる子でも敵わない。ステキな寝心地、ふわふわコケット」
次の画像は、サーシャのものだった。
エルフの少女が、トテトテ歩いてくると、ぽふっとベッドに横になる。
「ふわふわ~♪」
サーシャの気持ちよさそうな顔がアップになる。
画像が再びミミに変わった。
「寝心地抜群の緑のベッド、ふわふわコケット。
提供は、『ポンポコ商会』でしたー。
あ、忘れてた。
協力は、エルファリアのギルド本部と『南の島』でした。
お送りしたのは今回も、パーティ『ポンポコリン』所属、ミミでしたー」
街が大騒ぎになったのは、言うまでもない。
行政府には、コケットとポンポコ商会についての問いあわせが殺到した。特に生まれたばかりの子供を持つ人々からの反応が凄かったらしい。
さすがなのはメラディス首席で、問いあわせに対応する部署をあらかじめ作って対応していた。輸入の手続き、関税等に関しても、融通を利かせてくれた。彼女は、そのために議会まで動かしたそうだ。
この世界での販売は、ポンポコ商会学園都市支店が行うことが決まった。支店長はダンで、獣人達と元パルチザンが手伝ってくれる。
彼らも獣人の事が落ちついたら暇になるから、ちょうどよかったとも言える。
俺は収納している『緑苔』を全てその支店の倉庫に出しておいた。ベッドの組み立ては支店に頼む。
こうして、史郎は、バカンス、懐かしい再会、販路拡大という三つの事を済ませて、学園都市世界を後にした。
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