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第四章 聖樹世界エルファリア編

第43話 『南の島』を救おう - ポンポコ商会1、2号店オープン -

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 史郎達が、大侵攻をしのいでから10日が過ぎようとしていた。

 続けて降った雨で、王城横の大きな穴は池になっていた。これは、『メテオ』が落ちた場所である。ついでだから、その池の水がかれないように地下の水脈と繋げておいた。
 エルフ王は、そこに『平和の泉』という名前を付けた。人々の憩いの地にするのだそうだ。

 心配していた『東の島』南部の開発は、順調にいっている。なるべく木を切らないように住居を作るのは、エルフにとって、お手の物である。

 問題は、『南の島』である。学園都市世界からの援助が途絶えた今、他との交易をほとんど行ってこなかったこの地は、経済的な危機に瀕していた。ナーデ議長も頭を抱えているようである。

 『緑山』のポータルはギルドが管理することになったが、それを使えば、学園都市世界との貿易は可能なはずである。しかし、この大陸には目ぼしい資源が無い。エルフ、ダークエルフ共同での寒冷地の開発が期待されているが、それには何分時間が掛かる。
 また、ダークエルフに対する根深い偏見も他の地域との取引を妨げていた。
海産物など、輸出できるものはあるのだが、「ダークエルフが関わったもの」というだけで売れないそうだ。

 史郎も、何とかしてやりたいのだが、いいアイデアが浮かばない。

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 パーティ・ポンポコリンはエルフ王から受けた『東の島』南部での指名依頼を済ませて王城に帰ってきたところだ。

 ミミがコケット(苔のベッド)で寝息を立てている。彼女は最近、コケットで昼寝するのが日課になっている。俺は、自立式のハンモックからこぼれ落ちた緑の苔を拾って、それをミミの横に置いた。

「!」

 あるアイデアが閃く。少しの間、考えを巡らすが、上手くいきそうである。

 騎士の訓練を依頼されているリーヴァスさんを除き、俺は、みんなを点ちゃん1号のくつろぎ空間に集めた。
 アイデアを皆に話す。

「お兄ちゃん。また、訳の分からないこと始めるのね」

「シロー、大丈夫でしょうか」

 コルナとルルは心配してくれるが、失敗しても失うものがない試みだから気楽に取りくめる。この際だから、『聖樹の島』のエレノアさんに連絡して、ギルドからの依頼にしてもらおう。

 まず、手始めに、『東の島』と『南の島』に格安の物件を借りた。倉庫付き家屋はエルフ王とナーデ議長の口利きで、ただ同然の賃料である。
 次に点ちゃん1号で、『南の島』寒冷地に飛び、緑山から大量の苔を持ちかえった。ついでに、『南の島』の金属加工業者に、自立型ハンモックを発注しておいた。

 最初に完成した、新型コケットは、エルフ国王、ナーデ議長、ミランダさんに送った。必ず人が目にするところに置くように念を押しておく。

 コケットを試した三人は、皆その寝心地に驚いていた。それぞれが、さっそく何台か注文してくれた。価格は、金貨1枚。日本円で約100万円である。かなり高めに設定してある。

 後は、いかに一般向けに宣伝するかだが……

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 史郎は、マーシャル卿の屋敷を訪れた。

「シロー殿! よく参られた。今日は、何のご用で?」

「実は、こういうものを売りだそうと思いまして……」

 俺は、点ちゃん収納からコケットを1台取りだした。
 何もないところから急に現れたハンモックに驚いたマーシャル卿だったが、寝心地を確かめて叫び声をあげた。

「な、なんだ、このふわふわ感は!」

「この商品を宣伝したいのですが、ぜひ娘さんに協力してもらいたいのです」

「サーシャに? 娘は、まだ7才ですよ」

「ああ、それは大丈夫です。このようなモノを作りたいのです」

 俺は、一枚のシートを取りだす。
 画面をタップすると、ミミの映像が現れた。

「とってもふわふわ~。すぐにぐっすり。キモチイ~」

 ミミが、コケットに横になって、気持ちよさそうにしている。

「どうです。サーシャさんの可愛さなら、ものすごい宣伝効果が見込めますよ」

「う~ん」

 マーシャルは、悩んでいるようである。

「世界中の人にサーシャちゃんの可愛さを知ってもらうチャンスじゃないですか。
ご協力いただけたら、このコケットは進呈しますよ」

「サーシャの可愛さが、世界規模に……」

 彼は、俺の手をがっしと握る。

「ぜひ、協力させてくだされ!」

 史郎はサーシャの映像を記録すると、お礼を言って城へ帰った。

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 点ちゃん1号の入り口で、ポルが待っていた。

「シローさん! さっそく大量注文が入りましたよ」

 え!? まだ、宣伝さえしてないのに?

「カズノ船長から20台の注文です」

 ああ、なるほど。俺はミミとポルから、『西の島』への航海の話は聞いていたから、納得がいった。船乗りは、高収入だからね。
 ついでに、先ほどマーシャルに見せた、ミミの宣伝シートも人数分付けておこう。

 外から、モリーネが入ってくる。

「シロー。 ナーデ議長から、『コケット』30台の注文ですって。ところで、コケットって何?」

 陛下には1台渡してあるのだが、彼女はまだ試してないのだろう。それならと、1号機にいつも備えつけているコケットを使わせる。

「な、なに、これ! ふわふわ~」

 モリーネは、さっそく昼寝モードに入っている。
 しかし、価格を高めに設定したのにいきなり50台の注文か。


 史郎は、口コミが最強の宣伝方法だと知らなかった。

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 次の日、エルフ王から100台の注文が入る。

 こうなると、俺達のパーティだけで対処できる量を越えている。
 俺は、『東の島』の店をチョイスに、『南の島』の店をメリンダに任せ、人を雇ってもらう。

 大規模な仕事になってきたので、看板をつけることにする。
 ミミの発案でつけた名前が、「ポンポコ商会」。
 またまた、こんな名前でいいのかね。

 ところが、この名前が意外な効果をもたらすのだった。

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