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第四章 聖樹世界エルファリア編
第22話 フェアリス族
しおりを挟む史郎達の前に現れた小さな「人」は緑の服を着ており、頭には先折れのとんがり帽をかぶっていた。
俺は、アリスト国で彼と同じ種族を見たことがある。
「私は、フィロと言います。キャロの父親です。娘を助けてくれてありがとう」
彼は、リーヴァスさんに向けて頭を下げた。
「娘は……キャロは幸せにしていますか?」
これには、俺が答える。
「ギルドマスターとして、皆に信頼されています。
俺も、とてもお世話になっています。みんな、彼女が大好きですよ」
「キャロ……」
フィロの目からは、涙が止まらない。
「キャロの話だと、ダークエルフにさらわれたということでしたが……」
リーヴァスさんが言いかける。
「ダークエルフ!!」
フィロが顔に恐怖を浮かべる。
「どこかにさらわれた後、逃げ出して、船で密航したそうです。
船が着いたところが『東の島』だったと聞いております」
「最初私達が、あなた方を恐れたのは、ダークエルフと人族が私達フェアリスを狩っていたからです」
「狩る?」
「ええ。 目的は分かりませんが、多くの同胞がさらわれてしまいました。
私達は住んでた場所を捨て、森の中に隠れ住まなければなりませんでした」
獣人世界と同じようなことが、この世界でも行われていたのか。
俺は、腹の底から怒りが沸きあがってきた。
「今回、私達が調査しているのは、まさにダークエルフなんです」
「えっ! どうして奴らを?」
「少し前に、『東の島』でエルフの都を魔獣が襲いました。その背後に彼らがいる疑いがあるのです」
「そういう事でしたか」
フィロの後ろで、また、甲高い声のおしゃべりが聞こえたと思ったら、突然多くのフェアリスが現れた。
大きなフェアリスでも身長1mくらいだ。
彼らの背後に隠れるようにしている子供達は、50cmも無いだろう。
まさに、おとぎ話の小人の世界である。
白い髭を生やした高齢のフェアリスが、前に出てくる。
「わしが族長のセロですじゃ。 少しの間なら、ここに滞在することを許しましょう」
「かたじけない」
リーヴァスさんが頭を下げる。
史郎達も、それにならった。
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フィロの先導で、森の中を少し進むと広場に出た。
差しわたし100mはあろうかという、大きな空間である。
広場の周辺ぐるりを大木が囲んでおり、その枝で広場が上空から見えないようになっている。
木漏れ日で照らされた広場はとても美しかった。まさに、俺好みのくつろぎ空間である。
広場の周囲の大木の間それぞれに緑色のドアが見えるから、大木を利用した住宅を作っているのだろう。
フィロが、広場を指さした。
「あなた方のような大きな方用の住居は無いのです。テントをお持ちですか?」
俺は少し考えてから、尋ねてみる。
「ここに少しの間だけ家を作ってもいいですか?
もちろん、立ちさるときには、元の通りに戻しておきます」
「そのような事ができるのですか? 長に聞いてみましょう」
長から許可が出たので、俺は土魔術で家を作ることにした。
俺達が危険でないと知ったフェアリスの人々が、わらわらと広場に現れた。 かなりの数がいる。
皆、興味津々で俺達の事を見ている。
地面に設計図を書き、土魔術で持ちあげる。慣れているから、5分ほどで家が建った。
フェアリスの人々が口をポカーンと開けている。
妖精のような子供達は、さっそく中に入って走りまわっている。
「人族は皆、このようなことが出来るのか?」
族長が呆れている。
「ははは、このようなことが出来るのは彼だけですよ」
リーヴァスさんが、こちらを見て微笑んでいる。
「パーパ、ボードで遊んでもいい?」
ナルが、俺の裾を引っぱる。
「人にぶつからないように、気をつけて遊ぶんだよ」
俺は、コルナの方に合図する。 ボードの名手である彼女がいれば大丈夫だろう。
ナル、メル、コルナのボードを出す。
何もないところか出てきた板に驚いていたフェアリスの人々だったが、コルナ達がボードに乗って滑りだすと、もっと驚いていた。
フェアリスの子供は、驚くより面白がって、すぐにボードに乗せてもらっている。
娘達が板の前にフェアリスの子供を乗せて、二人乗りでゆっくりボードを滑らせる。
乗っている子供から、歓声が上がる。
あっという間に順番待ちの長い列ができた。
コルナは、万一に備えて横に控えている。
大人は、土の家に興味があるようで、みんな壁に触ったり、中に入ったりしていた。
どうやら、俺達は受け入れてもらえたようだ。
史郎は、無事彼らとコンタクトできて、ホッとしていた。
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その夜は、史郎達一行を歓迎する宴が、広場で開かれた。
フェアリスの人々がテーブルを並べ、その上に次々と料理を置いていく。
すべて小さく、おままごとセットの様である。 ナルとメルが喜んでいる。
ただ、フェアリス料理は二人ともあまりお気に召さなかったようだ。
彼らの料理は火を通していないから、生である。
果物はいいのだが、肉も野菜も生なので、慣れないとキツイだろう。
俺は、それなりに美味しかったけどね。
フェアリスの酒は、かなりのものらしく、リーヴァスさんが絶賛していた。
たくさん飲んでいたようだが、酔ったりはしていない。さすがだね。
点ちゃん、今日は大活躍だったね。 ありがとう。
『えへへ(*´∀`*)今日は楽しかったなー』
また、明日も活躍してもらうからね。
『わーい!』
二人のいつものやり取りが終わると、史郎は土の家で眠りについた。
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