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第三章 学園都市世界アルカデミア編

第35話 歓迎

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史郎達は、ポータルから獣人世界へ降り立った。


「おかえりー!」

「「おかりなさい」」

ポータルを出ると、何人かの獣人が出迎えてくれた。

先頭にいるのは、コルナの妹、狐人コルネである。
まだ若いけれど、この大陸の最高行政機関、獣人会議の議長をやっている。

その後ろには、犬人族族長およびケーナイのギルドマスターをやっている、アンデの姿もある。

コルネとコルナは、久々の再開で、抱き合っている。

俺は、アンデと握手した。

「「「ようこそ、グレイルへ」」」

ナルとメルは、さっきまでと違う風景に戸惑っているようだ。

俺の家族は、見覚えあるギルドメンバーに案内され、地下から地上へ上がった。
ここのポータルは、地下にあるのだ。

地上に出ると、ケーナイの町は、もっとすごいことになっていた。

『な、なんじゃこりゃー!』

点ちゃんの決まり文句が出るのも当然だね。

地上に出た所は、町がすっかり様変わりしていた。

広い範囲にわたって、さら地になっている。

「すごいだろ。 聖女様をお迎えするために、ここを広場にしたんだぜ」

アンデが説明してくれる。

この世界にとって、「神様」のような存在、聖女が帰って来たのだから、まあ納得できないことはない。

ポータルの出口は、「聖女広場」と名付けられ、円形状にひらけていた。

そこが、獣人で埋まっている。

「「「聖女様ー!」」」

皆が口々に聖女の名を叫んでいる。

舞子が、演台に上がった。

「皆さん、ただいま戻りました」

群衆が、一斉に声を上げる。

「「「お帰りなさい!」」」

「約束通り、この地に帰って来れたことを、嬉しく思います」

群衆から、嵐のような拍手が起こる。

「この度は、ある世界で捕われていた、皆さんのご家族を連れてくることが出来ました」

聖女が手招くと、演台の上に小さな犬人の少女が上がった。
聖女が少女を自分の横に立たせる。

「ただいま、テル。」

テルというのは、少女の友達の名前だろう。

群衆が静まる。

「今回は20名ですが、これからたくさんの方々が帰って来ます。
みなさん、彼らを温かく迎えてあげて下さい」

聖女の声で、人々が割れんばかりの拍手をする。

「では、みなさん、よろしくお願いします」

聖女がペコリと頭を下げると、地鳴りなような拍手とともに、魔術花火が撃ちあがる。

『聖女様、おかえりなさい』と、書かれた、大きな横断幕が上がる。

『がんばったぞ、ポンポコリン』の小さな垂れ幕も見える。

聖女舞子と俺の家族は、二台の馬車に乗り込み、ケーナイ郊外にある舞子の家に向かった。

沿道も全て、獣人で埋め尽くされていた。

舞子が客車の窓から手を振りながら、町を通り抜けた。

町の人々で話し合って決めてあるのだろう。
舞子の屋敷周辺は、誰も人が居なかった。

御者役のアンデが、皆を屋敷内に案内する。

ドアを開けたところには、数名の犬人メイドと、執事姿のピエロッティが並んでいる。

「お帰りなさいませ」

ピエロッティの声で、メイドたちが服や手荷物を部屋に運んでいく。

俺達は、食事用の大部屋に案内された。

部屋には、ミミママとミミパパが、食事処ワンニャン亭の仕事着で立っていた。

「ママ!」 

ミミが、抱き着く。

「みんな、元気そうだな」

ミミパパが、笑っている。

「今日は、腕によりをかけたぞ」

聖女、俺の家族、コルナとコルネ姉妹、モリーネ、ミミ、ポル、ポルのお母さんが大テーブルに着く。

メイドが、料理を載せたワゴンを押して入ってくる。

「あ、この料理は!」

俺は、その料理に見覚えがあった。

「わざわざ、これのために、ギルドから討伐隊が出たんだぜ」

ミミパパが、説明してくれる。

皆の前には、食前酒と、マティーニグラスに入った前菜が置かれた。

「では、いただきましょう」

舞子の言葉で、食事が始まる。

食いしん坊のメルが、驚いている。

「パーパ、これ、美味しいっ!」

「ははは、美味しいだろう。 でも、この後も、どんどん美味しいのが出てくるよ」

「わーい!」

子供達も、ゴールデン・スライムの美味しさに驚いたようだ。
俺達は、コース料理をゆっくりと楽しんだ。
皆、美味しさに言葉を失い、黙々と食べている。
ナルとメルは、デザートのプルプルゼリーを、何杯もおかわりしていた。


食後、子供達は、すぐに寝てしまった。
まあ、慣れない旅で疲れていた上に、お腹いっぱい食べちゃったからね。
ルルは、様子を見に娘達の部屋に行っている。

俺達はソファーがある部屋に移って、お茶を飲みながら話をした。

コルネに獣人解放までの経緯を説明する。
今まで大まかな事しか話していなかったので、リーヴァスさんも興味深くその話を聞いていた。

コルナとモリーネは、相変わらず何か話している。
知り合って、そんなに立たないのに、この二人はなぜか仲がいいんだよね。


旅行中なので、この日は遅くならないうちに寝た。

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次の日、史郎の家族は、狐人領へ向かうことになった。


エルフが住む世界、エルファリアへのポータルは、狐人領にあるのだ。
家族とコルナ・コルネ姉妹、モリーネを連れて、点ちゃん1号に乗り込む。

ミミとポルは、しばらくこの世界に滞在し、後からエルファリアに向かうことになっている。



舞子、ピエロッティ、ミミ、ポルの四人に見送られ、点ちゃん1号は空に舞い上がった。
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