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第三章 学園都市世界アルカデミア編

第27話 決着

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映像は、ブラムが小さなガラス製のベルを鳴すところから、始まっていた。


「では、緊急賢人会を始める」

「ケーシー、報告してくれ」

「はい。 現在、獣人世界からの獣人搬入が、途絶えています。
これは、獣人を捕獲するために利用していた猿人族が、他の獣人の支配下に落ちたからです」

「なぜ、そんなことになった。 圧倒的な武力を持たせていたはずだろう」

「はい。 なぜ、そのようなことが起きたかは、未だに判明していません」

「問題は、これからどうやって獣人を確保するかですな」

「労働力は、ロボットで代用が利かないわけではないが、魔道具の素材としては、不可欠です。 確保は、絶対です」

「この世界を支えるために、魔道具の販売は、何より大切だ。 大至急、解決策を求めたい」

「ロボットを送り込んで、獣人を捕獲するのはどうだろうか」

「それにしても、現地に何人かは、派遣せねばならまい」


映像中の登場人物は、まごうことなく、被告人席にいる賢人達である。

今まで謎に包まれていた賢人会の全貌が明らかになったことより、その話の内容が人々に与えた影響は、とてつもないものだった。

なぜなら、知によって成り立ってきた、学園都市の粋ともいえる賢人が、いかに非人道的な事を行ってきたか、赤裸々になったからである。

これからは、学園都市世界の価値観そのものが、変わっていくかもしれない。

映像は切り替わり、ブランとケーシーが、秘密施設で、ソネルを殺しかけるところが映された。

最後の映像は、賢人達が、下級研究者をこの事件の身代わりにする計画を話し合っているものだった。

賢人の中には、ここに至っても、なお最後の悪あがきを続ける者もいた。

しかし、映像が消えた今、もう誰も賢人の言うことに耳を貸す者はいなかった。

裁判長は、怒りに震えていた。

それを、落ち着けるために、短い休廷を挟んだぐらいだ。

休廷後の審理は、恐ろしいほど迅速に進んだ。

鈴の音が鳴ると、賢人を除く全員が裁判長の言葉を待つ。

「判決を言い渡す。五賢人は、全員、死罪とする。
彼らの全ての財産は、獣人への補償に充てることとする」

傍聴人席から、拍手が沸き上がる。

「なお、残りの賢人ならびに獣人の誘拐に関与していた者は、後ほど改めて裁判を行う」

裁判長が、鈴を鳴らす。

「では、閉廷」

法廷内は、獣人たちへの謝罪と、パルチザンへの称賛の言葉で溢れた。

しかし、何より、五賢人への侮蔑と非難の言葉は、止めどが無かった。


大法廷の、長い一日が終わった。

-------------------------------------------------------------------

学園都市の遥か上空、点ちゃん1号の中で、裁判の様子を見ていた史郎は、全てが終わり、ほっとした表情だった。

点ちゃん、今回も、大活躍だったね。

「(*´ω`*)えへへへ」

しかし、新しいスキル、「付与 重力」の力は凄かったね。

巨大な地下施設を地面から切り離すのは、土魔術で比較的容易にできたが、問題はそれをどうやって持ち上げるかだった。

重力を無くするイメージを付与した点を、施設の底部に幾つか付けてみた。

結果は大成功で、巨大な施設が、軽々と浮き上がった。

後は、施設に点を付け、引っ張ってやるだけだった。

秘密施設を運び出す前に一つ問題が生じたが、それはこれからの課題だろう。


賢人会は、万一を考え、施設を爆破する装置を、あちこちに取り付けていたが、建築素材の内部まで入っていける点ちゃんの前には、意味をなさなかった。

爆破装置は、あっという間に消滅した。


ああ、裁判所のスクリーン?

あれは、加藤に付けておいた、幾つかの点を利用して設置した。


しかし、ミミの放送はひどかった。

まあ、目的は達しているから、合格と言えば言えるのだが。

あれで「ポンポコリン」の名前が、この世界にも知れ渡ってしまったではないか。

まあ、いいか。

俺は、仕事が終わった後の「くつろぎの入浴」を楽しみにかかった。



この少年、どこまでもマイペースである。
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