上 下
106 / 607
第三章 学園都市世界アルカデミア編

第8話 学内調査開始

しおりを挟む


やたらと豪華な待機部屋に案内した後、スーシェは、史郎を教室まで連れて行った。


試験会場と同じ造りの教室は、100人くらい座れそうだ。

おれは、教室中央に一つだけ空いた、大きなサイズの机に着いた。

スーシェが、教壇に立ち、話し始める。

「それでは、自習は終わりです。 
シートを用意して下さい」

えっ!? この生徒たち、俺のために自習してたの?

『な、なんじゃこりゃー!』

……点ちゃん。

ああ、点ちゃんが、変な言葉を覚えちゃったじゃないか。
これは、やっかいだぞ。

「今日は、途中参加の新入生もいるので、魔術詠唱法の授業をおさらいしておきましょう」

そういうと、前の黒板に触れ、どんどん資料を開いていく。

黒板は、大きなシートで出来ているようだ。

俺は、なぜか自分だけ、椅子がフワフワのソファー仕様だったこともあり、夢の国に旅立った。

授業終了の鐘の音で、目が覚める。

スーシェ先生は、既に教室を出ていくところだった。

最初、こわごわ俺の方を見ていた生徒たちだが、赤髪の少女が話しかけてきたのを合図に、一気に周囲に集まって来た。

「あんた、受験1番だったでしょ」

そして、あなたは信号機、ぷぷぷっ。
ちなみに、俺は初対面で馴れ馴れしい人間は、絶対に信用しないことにしている。

「このトリビーナ学園始まって以来、最高点を取ったらしいわね」

ト、トリビーナ学園! 
俺が勝手につけた名前、「聖トリビア学園」とそっくりじゃん。

俺は笑いのツボを突かれ、思わず笑い出してしまった。

それを見た他の生徒は、ギョッとしただけで済んだが、赤髪の少女は、そうはいかなかった。

「あんた!  人が話してるのに、笑うって失礼でしょ」

初対面で「あんた」呼ばわりする方が、失礼だと思います。

興味が無い少女は放っておいて、マイペースでシートをタップする。

新入生用に送られた、情報データを開き、目を通す。

それを30分ほどして読み終えた時には、俺の周囲には赤髪の少女しかいなかった。

あれ?  俺、ここでもマイペース貫いちゃった?

時間を見ると、昼食時なので、俺専用の待機部屋に向かう。

待機部屋というのが呼びにくいから、とりあえず「タイタニック」と名付けておく。

タイタニックの扉を開けると、なぜか赤髪までついて来てしまった。

「な、何、この部屋!?」

『な、なんじゃこりゃー!』

そんなこと言うから、点ちゃんが、またやっちゃったじゃないか。

「何って、俺の部屋だけど?」

「あ、あんた、一体何者なのよ」

「ただの冒険者だけど?  
あ、今は、ただの学生ね」

俺はそれだけ言うと、どっしりした机の上に置いてある冊子に目を通す。

お! この部屋って、上級職員用の食堂から食事のデリバリーしてくれるのか。
でも、「上級」って、なんだろう?

うへー、洗濯とか掃除もしてくれるんだね。 
高級ホテル並みだな。
今度、ぜひ、ポルを連れて来てやろう。


史郎は何かぐじゃぐじゃ言っている少女を無視して、食事のデリバリーを頼むのだった。

------------------------------------------------------------

食事は前菜とスープで始まる、かなり本格的なものだった。


味も、まずまずである。

デザートを食べ終えると、眠くなってきた。
本来、ここで昼寝するのが俺流なのだが、今はすべきことがある。

あれ? 赤髪がハアハア言って、ソファでぐったりしている。

「あれ、赤髪、どうしたの?」

俺は、思わず心の中で使っていた名前を口に出してしまった。

「赤髪ですって! 
私には、コーネリアっていう、ちゃんとした名前があるの!」

プンプン怒っているが、こっちは知ったことではない。

「初対面の人に向かって、あんた呼ばわりし続けた人のセリフとは思えないね」

俺は、食後のお茶を飲みながら、指摘してやった。

「『あんた』、俺の名前、一度でも口にしたか?」

赤髪は、キィーッと叫ぶと、髪を掻きむしり、部屋から外に飛び出していった。

くつろぎを信条とする俺が、最も近寄りたくないタイプだな、あれは。

教室へ帰ると、クラスメートにいろいろ尋ねてみた。

どうも、黒髪の少年の情報は無いようだ。

放課後、すぐに受付に行き、黒髪の少年のことを尋ねる。

今度は、学生だということで、検索に応じてくれた。

「カトーあるいはカトウという名前に該当するものは、このトリビーナ学園に24名在籍しています。
そのうち、16~18才の生徒が6人いますが、いずれも黒髪ではありません」

ということは、ここまでの調査は外れか・・

となると、錬金術地区か。 
賢者の石でも狙ってるのか、加藤は。

いや、やっぱり、あいつが、そういう思考をするとは思えない。

もう一度、事実を元に洗い直してみよう。



ところが、加藤への糸口は、思わぬところからもたらされた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...