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第二章 獣人世界グレイル編

第39話 神獣の真実

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二日後、史郎はミミ、ポルそれにコルナを連れて、お城に上がっていた。


リーヴァスさんも一緒だったが、今は別室でレダーマン騎士長と話をしている。
ピエロッティの件だろう。

俺たちは、王の間で女王と謁見していた。
女王としての威厳を身に着けた、黒髪の少女が玉座に座っている。
彼女は、まぶしいほど美しかった。

「面を上げよ」

「はっ」

「で、その方らが、グレイルからの客人か」

まあ、耳としっぽで一目瞭然なんだけどね。

「はっ。 こちらが、狐人族コルナ、元獣人族会議議長です。
こちらは、猫人族ミミ、狸人族ポルナレフでございます」

俺が三人を紹介する。

「遥々、よう参られた。 
聞けば、聖女救出にも、力添えしてもらったとか。 
大儀であったぞ。 
この国に滞在中は、賓客として迎えよう。」

「は、有難き幸せ」

「おお、そうであった。 
お主らに、アリスト城自慢の庭を見せようと思うてな。
誰か、用意せい」

女王は立ち上がると、歩き出した。 
侍従長と近衛騎士が慌てて付いて行く。

俺たち四人も、促されて後に続く。

城の中庭に出る。

そこは以前来た時と、大きく様変わりしていた。

花壇であったところに木が植えてあり、一面が森の様になっていた。

膨大な人手と費用を使ったに違いない。

畑山さん・・何やってんの。

「お主らは、ここで待て」

騎士と侍従長にそう言うと、女王は森の中に足を踏み入れた。

俺たちも、その後を追った。

森を少し入ったところに、差し渡し20mほどの円形の広場があり、真ん中には噴水があった。

噴水の所まで来ると、女王の表情がやっと緩んだ。

「ボー、お帰り。 
舞子から聞いたけど、大変だったね」

彼女はやっと、友人である畑山の顔になった。

「ああ。 でも、仲間が助けてくれたからな」

俺は、コルナ、ミミ、ポルの方を見る。

「え? なんで女王様と、そんなに気やすく?」

ポルが訊いてくる。

「ああ。 黒髪を見て分かるように、彼女は俺と一緒にこの世界に転移してきた友人なんだ」

「「えっ!」」

ミミも、これには驚いている。

しかし、彼らが本当に驚くのは、ここからだった。

森の中から、白い巨大なウサギが躍り出た。

「「「うわっ!!」」」

獣人の三人が驚いて、尻もちをつく。

キュゥ~ン

ウサギが畑山の横で頭を下げると、彼女はその頭を撫でてやった。

「あんたを獣人世界に見送った後、ウサ子、城まで付いて来ちゃってね。
もう、町も城も大騒ぎだったわよ」

畑山に撫でられているウサ子は、気持ちよさそうに目を細めている。

「そうそう、帰ってきた舞子にも、なぜか超なついちゃったのよ。
ねー、ウサ子」

俺が後ろを見ると、コルナ、ミミ、ポルの三人が石像のように固まってる。

君達、何もそこまで驚かなくても。

しかし、次の瞬間、こちらの方が驚かされることになる。

急に三人が、ばばばっと後ろに下がったと思ったら、平伏してしまった。

「おいおい、今さらかい?」

今さら、女王陛下に敬意を表してどうする。

「「「しししししっ」」」

「ししししし?」

何それ? 何かの呪文か?

「「「神獣様ーっ!!!」」」

えっ? どういうこと?

三人は、平伏姿のまま、微動だにしない。


えっと、何が起きたの?

-------------------------------------------------------------

石の様に固くなった三人を、無理やり立たせて聞いたところによると、ウサ子の姿こそ、かつて獣人たちに君臨していた、神獣そのものなのだそうだ。


もちろん、生きている獣人たちで、神獣を実際に見た者はいないから、その姿も言い伝えによるに過ぎないのだが。

畑山は、ウサ子が城に来てから禁書庫でいろいろ調べたそうだ。

すると、マウンテンラビットが200年くらい前に急に霧の森に現れた、という記録が見つかった。

また、マウンテンラビットについて書かれた、古い本も見つかった。
そこには、彼らに適した食べ物や適した環境についても、事細かく書かれていたそうだ。

200年前、ポータルを渡り歩いた英雄が書き残したものらしい。

間違いない。 ウサ子は、神獣だった。


背中に気配を感じて振り返ると、舞子の姿があった。
斜め後ろには、当然の様にピエロッティが控えている。

「史郎君、お帰り」

舞子は微笑みを浮かべてそう言うと、俺の手を握ってきた。
以前より落ち着いているな、彼女は。

「私もね、ウサ子ちゃんと話せるようになったんだよ」

ウサ子が、舞子にすり寄る。

本当に、懐いてるな。

舞子は、ウサ子の首の横を撫でてやっている。

「「せ、聖女様!」」

あー、ミミとポルが、また平伏しちゃったよ。

引き起こすの、もうめんどくさいよ。
そのままにしとこう。

『さすが、ご主人様』

いや、点ちゃん。 そこで「さすが」って言われてもねえ・・


畑山女史、舞子、俺の三人は、久しぶりに会って積もる話をすることができた。

まあ、こうなると一人いないのが余計目立つよね。

次は、加藤の番だ。



史郎は、学園都市世界へ旅立った、親友の顔を思い浮かべるのだった。
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