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第二章 獣人世界グレイル編
第36話 驚きと再会
しおりを挟む獣人世界でポータルを渡った史郎達は、パンゲア世界アリスト王国の鉱山山頂付近にあるポータルに出て来た。
ここでルルと別れ、獣人国へ渡ったのが、つい昨日の様である
異世界が初めてのコルナは、物珍しそうに周囲を見回している。
俺たちは、受付の少年にギルド章とコルネが書いた許可証を見せる。
少年は金ランクのギルド章にちょっと驚いたようだが、何も言わず鉱山の下に続くトンネルの方を指さした。
舞子は俺の手を離すと、少年に話しかけた。
「あなた。 言葉が、しゃべれないのね」
少年が頷く。
舞子の光る手が、少年の喉に触れた。
「う、うう、あああ!」
「大丈夫、もう声が出せるわ。
後は、練習するだけね」
少年は、涙を流して喜んでいる。
押しいただくように舞子の手をとり、階段を降り始める。
後からポータルを渡ったピエロッティが、すかさず後を追う。
俺とコルナも、階段を下りた。
ギルドの裏戸を開ける。
いきなり熊のような手で両肩を叩かれた。
「ガハハハッ! 帰ってきたな。
元気そうじゃねえか」
この大男は、俺の家族がお世話になっているマックだ。
ちょっと驚いたが、彼の後ろから出てきた二人を見て、俺は口をあんぐり開けてしまうことになる。
「リーダー、遅かったですね」
「あまり、待たせないでよね」
何でお前達がここに!?
「ポル、ミミ! どうして?」
「これからシローが学園都市世界に行くって言ったら、指名依頼を出されたのよ」
アンデ、何やってる。
「しかし、パーティーは、もう解散したんじゃ?」
「するわけないじゃない。
これだけ名前が売れたんだから。
私達の活躍はこれからよ!」
「おう、お前がパーティー組むとはな。
で、パーティー名は?」
ああ、来ちゃったよ。
その質問が。
「「ポンポコリンです!」」
そこ、声を合わせるってどうよ。
「ポ、ポンポコリン! ガハハハハ・・」
腹を抱えて転げまわる大男は放っておいて、俺はもう一人の友人に声を掛けた。
「ブレット! 久しぶりだね」
後ろに、ハピィフェローの面々もいる。
「シロー、お帰り。
今回は、女王陛下の指名依頼なんだ。
それより、俺たちも、やっと金ランクになったぞ」
聞くと、アリストの町を襲ってきた、ワイバーンの群れを撃退したらしい。
「すごいな」
「ああ、その時は、ルルちゃんやリーヴァスさんも活躍してね。
ルルちゃんも、金ランクになったんだよ」
やったね、ルル。
でも、「ルルちゃん」って何よ、「ちゃん」って。
『ご主人様ー、それって嫉妬?』
点ちゃん?
ああそうですよ、嫉妬ですよ。
コルナに袖(そで)を引っ張られて、やっと気が付く。
「あー、この人は、俺の友人のコルナ」
「皆さん、初めまして。
狐人族のコルナといいます。
よろしくお願いします」
「こ、こ、こ、コルナさん。
ブレットです。 よ、よろしく」
相変わらず、女性に耐性がない男だな、ブレット。
「マック。 ルルは来てないの?」
「ああ。 ルルはな、ナルとメルと一緒に、あの家(うち)でお前を出迎えたいそうだ」
ルル・・
俺は一刻も早く、ルルに会いたくなった。
「あー、申し訳ないがな。
ちょっとギルドに寄ってくれるか?」
今回、ギルドには本当にお世話になったから、まあしょうがないよね。
「ええ、では急ぎましょうか」
「聖女様と従者様はこちらへ」
二人の騎士が、舞子とピエロッティを馬車に案内する。
どうやら、二人は城からお迎えが来ているようだ。
「じゃ、舞子。 畑山さんによろしくな」
「うん。 史郎君、お城に来てね」
「ああ、もちろんだ」
『ご主人様ー』
何だい、点ちゃん。
『この世界に置いてた点が、生き返ったみたい』
なるほど、点がポータルを渡らなければ、大丈夫ってことか。
『畑山さん、聞こえる?』
『え!? ボー! いつ帰って来たの?』
『たった今。 一時的だけどね。
とりあえず、舞子だけ連れ帰った。
詳しいことは、彼女から聞いてくれ』
『分かった。 あんたも来てくれるんでしょ』
『二三日はかかるけど、必ず行くから』
『わかった。 じゃ、待ってるね』
すごく変わった舞子を見て、きっと驚くぞ。
史郎は、既に和気藹々とおしゃべりしている仲間達の後を追いかけるのだった。
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