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第二章 獣人世界グレイル編
第33話 ケモミミ・サプライズ
しおりを挟むポルナレフが長を務める町の設営も初期のインフラ整備を終え、史郎はやっと一息つけるようになった。
大事な話があったので、俺は狐人族の少女コルナに声をかけ、点ちゃん1号の中に来てもらった。
最近になって備え付けた、応接セットに向かい合って座る。
しかし、この飛行機、内部が普通の家みたいになってないか?
外から見えないように、壁はオリジナルの青色にしておく。
「コルナ。 来てくれてありがとう」
「何の話? お兄ちゃん」
「学園都市世界へのポータルなんだけど、この世界にあるかな?」
「学園都市世界? お兄ちゃん、そんなところに行って何する気?」
「いや、友達が今そこにいるんだよ」
「あそこと繋がってるポータルって、『唄の島』じゃなかったっけ」
「そのポータルって使えそう?」
「まあ、無理ね」
「でも、猿人の町に人族がいたって話だろ。
彼らは、どこから来たんだろう」
「うーん。 考えられるのは、猿人領、ああ、今では旧猿人領か。
そこのどこかに、隠しポータルがあるって線ね」
「ふーん。 それって、簡単に見つかると思う?」
「それは、簡単でしょ。
お兄ちゃんが、捕えた人族二人に尋問すれば」
「そうか。 その手があったか」
「ところで、その友だちは、どこのポータルから学園都市世界へ渡ったの?」
「俺が来た世界のポータルからだけど」
「お兄ちゃん、今その人が学園都市世界のどこにいるか知ってるの?」
「いや、分からない」
「じゃ、危険を冒して奴らのポータルを使うより、元居た世界のポータルから渡った方がいいよ」
「なんで?」
「だって、そのお友達が学園都市世界のどこにいるか、知らないんでしょ。
元の世界のポータルを使えば、少なくとも、その人が最初にいた場所に出るじゃない」
「ああ、そうか。 それも、そうだな」
俺はポータルを使うのに慣れてないから、そんな簡単なことに気付かなかったのか。
「コルナ、ありがとう。
君の話は、とても役に立ったよ」
「エへへへ。 じゃ、座らせてくれる?」
「ああ、いいぞ」
俺はソファーから立ち上がり、敷物の上に胡坐(あぐら)をかいた。
コルナが、いそいそと膝に座る。
安定の後ろ向きスタイルである。
俺の目の前で、三角耳がピクピクしている。
元居た世界へ帰るなら、この三角耳ともお別れである。
ちょっと残念だが、仕方ないな。
「コルナ。 もう少しで、お別れだね」
「えっ? なんで?」
「だって、俺は元の世界へ帰るでしょ」
「うん、それで?」
「いや、だから、もう少しでさよならだねって」
「さよならしないよ」
「えっ!?」
「何でウチが族長まで辞めて、お兄ちゃんと一緒にいるか分かってる?」
「い、いや、分からないけど」
「ずっと、お兄ちゃんと一緒にいるために決まってるでしょ」
ええっ! そう来ましたか。
「えっとね。 でも、向こうは人族の世界だよ」
「知ってるよ」
「俺、向こうに家があるし、家族もいるよ」
「うん、舞子から聞いた」
最近になって、彼女と舞子の仲は、喧嘩友達から普通の友達へと進化している。
「ええっ!」
「お兄ちゃんの家族に会うの、楽しみだなー」
「え? え?」
「お兄ちゃん、向こうでもよろしくねー」
コルナは嬉しそうに、耳としっぽをピクピク動かしている。
狐人の少女を膝に載せたまま、呆然とする史郎であった。
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