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第二章 獣人世界グレイル編

第4話 パーティー結成

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ドアの向こうに立っていたのは、食事処ワンニャン亭の看板娘ミミだった。


「ミミ、なぜ君がここに?」

ポルナレフが尋ねるのも無理はない。

「私ね・・冒険者になったの」

「ええっ!」

「だから~、たった今、冒険者登録してきたのよ」

「な、なんで?」

「なんでかなー、なんでだろ」

ミミは、からかうような目で少年を見ている。

「冒険者になって、どうするつもり?」

「あなたたち、パーティー組むんでしょ。
他の冒険者が、話してたわよ」

「いや、それは、そうだけど・・」

「私ね、そのパーティーに入るの」

「えっ!」

今度は、俺が驚いた。 

「えっと、パーティーは、二人だけのつもりだけど」

「ポン太は、鉄ランクよね」

「まあね、登録したばかりだから」

「私も、鉄ランク。
聞くところによると、あなた、金ランクらしいじゃない?」

「うん、そうだけど」

「金ランクに比べたら、鉄ランクなんて、ほんと雑魚でしょ」

「いや、そんなこと思ってないけど」

「とにかく、雑魚が一匹だろうが二匹だろうが、大した違いはないわけ。
分かる?」

「ど、どうなんだろう」

「だから、私がパーティーに入っても、なーんの問題もないわけね」

「「えーっ!?」」

これは、俺とポルナレフ。

「じゃ、よろしく頼むわよ、リーダー・・と、もう一匹の雑魚」


こうして、突貫猫耳少女ミミが、いつの間にかパーティーに入っていた。

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翌日、史郎たちは、ワンニャン亭でミーティングしていた。


議題は、パーティー名決定である。

俺の推薦である、「太の字」は、二人によって、あっさり却下された。

ポルナレフの案、「黒い稲妻」は、ミミが、なんとか病みたいということで、一刀両断にした。

ミミの「ポンポコリン」は、俺とポルナレフによって却下されるはずだったが、彼女が放った謎理論で、パーティー名として決定してしまった。

俺とポルナレフは、今日から背負わなければならないその名前に、肩を落としていた。

「あんた達、パーティー結成ってときに、そんな不景気な顔してたら、これからろくなことが待ってないわよ」

「そ、そうだね」 「ああ、そうかもな」


史郎とポルナレフは、ミミの謎理論によって、脳内を侵されつつあることに気づかなかった。

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「え? もう一度いいですか」

受付のお姉さんが訊いてくる。

それは、そうだよね。

「えー、ポンポコリンです」

「ポ、ポンポコリン・・」

「可愛い、ステキな名前ですよね」

ミミが言うが、誰も頷かない。

「可愛いは正義です。 正義は正しい。 だから、ポンポコリンは正しい」

謎理論が、またまた炸裂する。

「まあ、差別的なものでなければ、パーティー名として却下とはなりませんが・・」

お姉さんは、二の足を踏んでいるようだ。

まあ、金ランクメンバーがいるパーティーの名前としては、どうかと思うよ。

「では、こちらにサイン下さい」

あーあ、とうとう決まっちゃたよ。

ミミは、当然のようにドヤ顔をしている。

どう見ても、このパーティーのリーダーって彼女だよね?


受付を終えると、冒険者たちが話しかけてくる。

「パーティー組んだんだって?」

「はあ・・」

「なんて名前にしたんだい」

「(ポンポコリン)です」

思わず、小声になってしまう。

「え? 何って?」

「ふふふ、聞いて驚いてくださいよ。 
私たちのパーティー名は・・ジャーン!
ポンポコリンです」

俺の代わりに、ミミが答えちゃったよ。

「えっ!? なに? ポンポコ?」

「ポンポコリンですよ、ポンポコリン。 
間違えないで下さい」

ミミが大声で、はっきり言う。

爆笑の渦が巻き起こったのは、言うまでもない。



パーティー結成当日から、ギルド内で、「ポンポコリン」の名を知らぬ者はいなくなった。
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