ポータルズ －最弱魔法を育てようー

第一章 冒険者世界アリスト編

第２３話 モヤシとキツネとタル

昼食後、子供達が遊び疲れて眠ってしまったので背負って帰る。

家に帰ると子供たちをベッドに寝かせ、ルルと今後のことを打ち合わせる。

「旦那様は、元の世界に帰りたくはないですか」

「いや、今のところ、そうは思ってないよ」

ルルが、ほっとした顔をする。

「問題は、国が加藤たちをどう扱うかだよね」

「ええ、ドラゴン討伐直後ですから、すぐには動かないでしょうが、今後はどうなるか分かりません」

「ふむ。　とりあえず冒険者として足場を固めるか。
子供達二人（ふたり）のこともあるから。
自分がしっかりしていないのに、他人の心配してもしょうがないからね」

「それがいいと思います。
冒険者業に打ち込むなら、パーティを組む方法もあります。

けれど、旦那様の魔法のことが知られるくらいなら、二人だけで依頼を受けるのもいいかもしれません」

「点魔法については、まだまだ分からないことだらけだから、少なくとも十分な情報が得られるまでは、秘密にしとくべきだね」

その後、子供たちをルルに任せて、俺はギルドに向かった。

冒険者達から気安く声が掛かる。
やはり、肩を並べて命をかけた体験は、互いの垣根を取り払うらしい。

「お、来たか。　今日はどうする？」

当然のようにマックが話しかけてくる。
ギルマスが、ルーキーにかかずらわってていいのかね。

「適当な依頼があれば、受けようかと思います」

「ふむ、一人だけでか？」

「そうなるか、ルルと二人でするか、依頼を見て決めますよ」

「なるべくなら、ある程度大きなパーティに入るのを勧めるがな」

まあ、当然ですよね。

「安全マージンは、きちんととりますよ。
まあ、大した依頼は、受けられないでしょうが」

「ブレットたちとは、組まないのか」

う～ん、下手すると、こっちのごたごたに巻き込んじゃうかもしれないからね。

「今すぐには、考えていませんね」

どちらともとれる返事をしておく。

「ルルに何かあったら、承知しねーぞ。 
とにかく無理はするんじゃねえぞ」

「はい、分かりました」

ここは素直に聞いておく。
だって、ルルのこと心配してくれてるんだもんね。

「ああ、思い出したが、お前のランク、上がってるぞ」

「え？　いつの間に？」

「いつの間にって。 
ゴブリンキング討伐の功労者、その上、ドラゴン討伐にも参加ってなりゃあ、上がらねえわけねえだろ。 
もう、ルーキーとも呼べねえな」

「そんなもんですか」

「全く、いつものんびりしてるぜ、お前は」

それが人生の目的ですから。

「おーい、キャロ。 こいつに新しいギルド章、持って来てやってくれ」

「はーい」

キャロは小さいので、カウンター越しだと、どこにいるのかわからない。
カウンターの上にギルド章を持ったちっちゃな手が出てきた。

お礼を言って受け取るが・・
これ、銅なんですかね、なんか白っぽいけど。

「あっという間に、銀ランクになっちまうとはな」

あちゃ、銀ですか、目立たなけりゃいいけど。

「若手の出世頭だぜ」

すでに目立ってるってことか。

「まあ、二回も死にかけたんだ。
二階級特進ってやつよ」

この世界にもあるのか、死んで二階級特進。

「まあ、大丈夫だとは思うが、妬ましく思うのもいるから、用心は怠るなよ」

「はい、ご忠告ありがとうございます」

マックは、言いたいことを言うと、二階へ上がって行った。

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ギルドを出たところで、人相の悪い三人組が近づいてくる。
おいおい、さっきの忠告、聞いてたみたいなタイミングだな。

点ちゃ～ん。

「はい、何でしょう」

とりあえず、手出ししないようにね。
この人達が死んじゃうと、後が面倒だから。

「は～い」

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「オメエがシローってやつか。 
最近、大っきな顔してるらしいな」

真ん中の狐顔の男が、にらみつけてくる。

いえいえ、どちらかというと小顔と言われることが多いです。

「まちがいねえ、こいつだぜ」

左側のモヤシっぽいやつだ。
声もなんだかモヤシっぽい。
名前は知らないが、見覚えがある顔だから、どちらかの討伐時に、メンバーだったのかもしれない。

「おい、なんとか言わねえか。 
びびってて、動けねえのか」

これは、右側の樽っぽいやつ。

とりあえず、左からモヤシ、キツネ、タルって名付けておく。

キツネが、いきなり腹めがけてパンチを打ち込んできた。
おいおい、いきなりだな。

ぐきっ

「ぐっ、痛ぇ。 
気を付けろ。
こいつ、腹に鉄板か何か入れてるぞ」

いえいえ、そんなものは入れてませんよ。
勝手に殴ってきて手をくじくって、どんだけ間抜けなの。

「くらえっ！」

モヤシが、腰のうしろに差していたらしい、短いこん棒を叩きつけてくる。

やばっ！

ボキッ

あれ、こん棒が折れちゃってる。
安物だな。　
武器をケチっちゃいけないね。

モヤシ男が驚いた顔で短くなったこん棒を見ている。

ん？  タルちゃん、なんで足元で伸びてんの？

こいつら、新手の漫才か？ 
というより、異世界にも漫才ってあるのか？

キツネが、痛めてない方の手にナイフを取り出した。

さすがに、これは避けないとやばいか。

シュッ　シュッ

意外に速いな。
ナイフの持ち方が慣れた感じだ。
点ちゃんに頼むかな。

うえっ、頬っぺた切られちゃったか？　

あれ？  痛くない。　
あ、ナイフが折れてる。

モヤシと同じように、驚いた顔で折れたナイフを見ている。

二人そろって同じ表情、同じ格好するのやめい。

「「お、おぼえてろ！」」

そんなの震えた声で言われてもねえ。
って、タルちゃんは、このまま放置ですか。
友達がい無いな～。

うーん、最後まで何がしたいのか謎だった

点ちゃん、どう思う？

「古代竜の加護ですね」



あ、物理攻撃無効か。