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第一章 冒険者世界アリスト編

第22話 称号と膝枕 -点魔法と称号ー

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史郎とルルが町へ帰ってくる数日前、城ではある騒ぎが起こっていた。

ドラゴン討伐後に、勇者が水盤の儀をとり行った。
レベルは、大幅に上がっていた。

そこまではよかったのだが、勇者には、肝心の称号が付いていなかった。

「う~む、ドラゴンを倒したのに、称号が付いてないとは・・」

筆頭宮廷魔術師のハートンが、首をかしげている。

「称号が付かないと、何か不都合でもあるのか」

加藤が尋ねる。

ちなみに、黒髪の勇者たち三人も、多言語理解の指輪をもらっていた。

「いえ、多くの者が現場にいたので、ドラゴン討伐がなされたこと自体に疑いはないのですが・・」

ハートンは、どこか歯切れが悪い。

「ドラゴンなどを倒したときの称号は、まあ、討伐の証のようなものですし、相手の強さによって、いろいろな能力を手に入れることができるのです」

なるほど、思ったより俺が強くなってないから不満なわけだな。 
加藤は、推測した。

「まあ、討伐が目的だったんだから、いいじゃないか」

「え、ええ、そうですね。
勇者様。 これからは、ドラゴンスレイヤーをお名乗り下さい」

「そうした方がいいってんなら、そうするがな」

「そういえば、倒したドラゴンは、特殊個体だったとか」

「そうらしいな」

「その辺の事情が、からんでいるのかもしれません」

「ま、難しいことは、どうでもいいや。 
これでしばらくは、何もないんだろう?」

「はい、そのとおりでございます」

「じゃ、俺はもう行くぜ」

加藤は、つかつかと部屋から出て行った。

残されたハートンは、頭を抱えていた。

「まあ、誰かに調べられるわけではありませんから、大丈夫でしょう。
しかし、これを王様にどう報告したらいいのか・・」

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場面は、史郎とルルの新居に戻る。


点ちゃん、「古代竜の加護」って何?

「加護は、高位生命体や神が付けてくれる、エンチャントの最上級ですね」

エンチャントって?

「祝福とも言われます。 
対象者に、色々な恩恵がつきます」

古代竜と普通の竜は、どう違うの?

「古代竜というのは、大昔、竜の力が強かったころの純血種ですね。
竜は次第に数を減らしていますから、種族維持のために近種の竜との交雑が盛んにおこなわれたようです。
その結果、古代竜はすでに絶滅したと言われています」

竜のお母さんって、天然記念物のようなものだったのか。

「天然記念物とは?」

いや、それはいいから。
それより、加護でついた恩恵って、どうやったら調べられるの?

「それは、もう一度パレットを作って加護で調べてもいいですし、加護という文字に触れても分かりますよ」

もうパレットが消えちゃってるから、スキルでもう一回作ってと・・
「古代竜の加護」という文字をチョンと・・できた!

古代竜の加護 物理攻撃無効

うはっ!  これって、いけないやつだ。
ジャイ〇ンに殴られても、カキーンみたいな・・

「ジャイ〇ンってなんでしょう」

だから、それは今はいいって。

称号も調べておくか。

パレットを作ってチョン

ドラゴンスレイヤー ドラゴンを倒したものに与えられる称号

えっ! 

これってやばくない? ってことは加藤にはドラゴンスレイヤーって称号がついてないわけでしょ。

・・まあ、いいか。

もう一回、パレットをチョンっと。

のんびりする者 のんびりした者に与えられる称号

はい、はい。 こちらはどうでもいい、ってどうでもよくないよ!
俺にとっては、最高に嬉しい称号じゃん。

はっきり言って、ドラゴンスレイヤーより上?

「ご主人様は、称号もらっても、ちっとも有難みがありませんねー」

え? でも、俺って人生の目的がくつろぐことだからねえ。

「くつろいで、長期間、私を放置しないようにして下さい」

おっしゃる通りです。

会おうと思えば、すぐ会えるんだから。
今日からなるべく毎日会うよ。
情報収集も兼ねて・・

「・・・ご主人様の目的は、情報収集(じょうほうしゅうしゅう)ですか・・
私、いらない子?」

いやっ! そういう意味じゃないよ。
点ちゃん、大大大好き!

「(〃´∪`〃)ゞ」

ちょろいな。

「何か、おっしゃいましたか?」

いえっ、何も。

お、子供たちが起きたみたいだから、今日はここまでね。

点ちゃん、ありがとう。

「またのお越しを、お待ちしております」


お店かい!

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子供達は、目が覚めてしばらくは、少しぐずっていた。


その間は、ルルと二人で抱いてやる。

子供達が落ち着いたら、ルルがお手洗いを教える。

その間に、俺は食事の用意をしておく。

ベーコンに似た干し肉を炒め、鶏卵よりやや小ぶりの卵を上から落す。
香ばしい匂いが漂う。

子供たちは、テーブルに着くと、がつがつと食べ始めた。
ああ、手づかみだね、やっぱり。

ルルがフォークの使い方を教えている。
まだ、ナイフはちょっと早そうだね。

「おいしいか?」

尋ねるとニコッとうなずく。
二人ともミルクが大好きのようだ。

食事が終わると、二人に名前を付けることにする。

二人とも金髪だが、髪の色がやや濃く、瞳の色が碧いほうがサファイヤ、瞳の色が紅(あか)いほうをルビーとした。

「でも、お母さんからもらった名前があるの」

はいっー、ゴッドファーザー計画、見事に頓挫。 
うううっ。

瞳が碧いほうがナル、紅いほうがメルだそうだ。

「お母さんからもらったものは、大事にしようね」

あちゃ、お母さんのこと思い出させちゃった。
涙ぐんでるよ。

「旦那様、今日は二人を連れて、ピクニックにでもいきませんか」

ルルさん、ナイスフォロー。

そうだね。 家でずっとゴロゴロしてても、喜ぶのは俺だけだし。

「いいところがあるよ。 
行ってみよう」

ランチとお茶の用意をして、ルルのポーチに入れてもらう。
ホント便利だわ、これ。



例の河原にやって来る。

砂地に布を引いて、その上に座る。

子供たちは、キャッキャと水辺で遊んでいる。

雲がゆっくり流れていく。
鳥の声と川のせせらぎ。

のどかだねえ。

うとうとしていると

「旦那様、横になってください」

子供達が見えるように、川の方に向いて横になる。
ルルが近づいてきて、頭の下に膝を入れてくれる。

ルル様、まじ天使。




史郎17才にして、嬉し恥ずかし膝枕デビュー。
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