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第一章 冒険者世界アリスト編
第21話 帰還
しおりを挟むドラゴンがいた山のふもとの町から王城がある町まで、一人ずつ子供を背負って帰った。
途中で気づいたのだが、明らかにルルは俺より体力がある。
俺の背負子はぐらぐら揺れるらしく、こちらに背負われる順番が来ると、子供たちは嫌な顔をする。
子供連れということで、途中は野宿をせず、距離を稼げなくても町に泊まった。
そのため、新居にたどりつくまでに11日かかった。
城のある町から山までが一週間だったことを思うと、ずいぶんのんびりしたものだ。
すみません。
のんびりじゃなく、俺に体力が無かったせいです。
ごめんなさい。
こうなると、新居を購入しておいてよかったよ、本当に。
子供たち二人は、寝室に寝かせておいて、討伐でほっておかれた引っ越し仕事を片付ける。
こちらに着いたのは昼過ぎだったが、子供たちは、次の日の午後になっても起きて来なかった。
よっぽど疲れてたんだろうね。
起きたら名前を付けてやろう。
ドラゴンのゴッドファーザー。
ちょっとかっこいいかもしれない。
夕方に、ちょっとだけギルドに顔を出す。
無事に帰って来た報告をするためだ。
ドラゴン討伐の報酬もかなり高額だったらしく、故郷に帰った冒険者もいたらしい。
まさに故郷に錦を飾るだよね。
あと、武器屋や薬屋、道具屋がものすごく儲けているらしい。
高くても買ってしまう冒険者がいるから、モノの値段が高騰してしまう。
この世界にもインフレってあるんだね。
俺とルルの報酬は、ギルド預かりとなっている。
引き出してもよかったが、手持ちの余裕があるので、そのままにしてもらう。
利子は、つかないみたいなんだけどね。
「おお、思ったより顔色良さそうじゃねえか」
マックが熊のような手で、俺の背中をバンバン叩いてくる。
俺は、激しく咳込んだ。
このおじさん、そのうちだれか殺すぞ、挨拶で。
キャロが近づいてきて心配してくれる。
「よく生きて帰ってこれたね」
ホント、自分でもそう思うよ。
たった今も、殺されかけたし。
「なんか、雰囲気変わったね」
え、そうかな。
自分では分からないけど、やっぱり、家族ができたからかな。
あーでも、レベルとかスキル知るの、ちょっと怖いな。
おや、点ちゃんがチカってる。
マックとキャロに挨拶して、新居へ帰る。
ギルドでは、点ちゃんと話せないからね。
庭に出て、点ちゃんに話しかける。
点ちゃん、何か用?
「ご主人様~、忘れられちゃったかと思いましたよ」
そういえば10日以上会ってなかったもんね。
ドラゴンのことでは、本当(ほんとう)にありがとう。
ごめんね。
嫌な仕事を押し付けちゃって。
「いえいえ。 ご主人様に使ってもらえると、嬉しいですよー」
あ、そうそう。 点ちゃん、何か用があったんじゃないの?
「ご主人様、さっきレベルとかスキルのこと考えてたでしょう」
考えてたね。
しまった、ツーといえばカー。
筒抜けだった。
「好きな時に、レベルとかスキルが見られますよ」
えっ!
「だから、好きな時に、レベルとかスキルが見れるんですよ」
はあっ?
そんな便利なもの、なんでもっと早く教えてくれなかったの!
「だって、聞かれなかったもん」
そうだよね。 ここは、怒っちゃダメ、怒っちゃダメ。
落ち着け、落ち着け。
ひひふー、ひひふー。
「ひひふーって、何ですか」
いや、それはいいから。
レベルとスキルの見方、教えて下さいな。
「は~い。 じゃ、私を四角い板のような形にして下さい」
みょんみょんぴーん
「板に意識を集中して、スキルのことを考えてください」
点魔法、点魔法、点魔法。
「板を見てください」
点魔法 レベル8
おおっ! 成功(せいこう)。
あ、点(てん)に戻(もど)っちゃった。
「スキル自体のことを考えたら、全部のスキルが出ますよ」
みょんみょんぴーん
スキル
お、ほんとだ!
なになに。
点魔法 レベル8
加護 古代竜の加護
称号 ドラゴンスレイヤー
のんびりする者
えっ?
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