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第十二章 放浪編
第24話 海底洞窟
しおりを挟むマンボウ型点ちゃん5号は、海底をゆっくり進んでいく。
『(Pω・)ノ ご主人様ー、あれじゃない?』
おっ、本当だね。巨大な岩に囲まれて穴が開いている。
『(*'▽')つ レッツゴー!』
えーっ! あんなところに突入って、危なすぎるだろう!
……入っちゃいましたよ。
意外に大きな洞窟だね。
マンボウ、余裕で通れるね。
『(*'▽')つ う~っ、マンボっ♪』
なんか違う、っていうか、なんでそんなの知ってるのかな?
◇
「へえ、海の中に、こんな場所があるなんて凄いね」
洞窟の中を進んだ俺たちは、水面に浮かんでいた。
打ちあげた光の玉に照らされたそこは、洞窟の中にある巨大な空間だ。
点ちゃん、この洞窟内の空気は呼吸可能なの?
『(・ω・)ノ 短時間なら何の問題もないですよ』
長時間ならヤバいんだね。
することしたら、すぐに撤退しよう。
俺は点ちゃん5号『マンボウ』の上部ハッチを開け、ボードを浮かべた。
ボードに腰掛け、洞窟内の陸地へと進む。
あっ、あれだな。
洞窟の一番奥の壁に長方形をした緑色の岩がある。
それは俺がかつて見たことがあるものだった。
点を二つ飛ばし、長方形の岩に固定する。点魔法で二つの点を手前に引っぱると、ガリガリと音を立て、緑色の岩が左右に開いた。
中には、黒いもやが渦巻いている。紛れもなくポータルだ。きっと学園都市世界のどこかに繋がっているに違いない。
「よっし、とりあえず目標達成と」
ホッとした俺は、ポータルの横に張りだした岩棚に座った。
『(・ω・)ノ ご主人様、いくらのんびりだからって、そんなところに座りますか?』
えーっ、ポータルも見つかったんだし、少しくらいいいでしょ。
『へ(u ω u)へ ……まあ、いいですけどね。少し反省してもらいましょ』
どういうこと?
あれ?
地面が遠くなってる。
なんだろう?
あれれ?
腰掛けてる岩が動いてる。
な、なんじゃこりゃーっ!
俺が腰かけていたのは、甲羅の幅が十メートルはあろうかというカニだった。
◇
カニの巨大な爪が俺の方へ伸びてくる。
慌ててカニから飛びおり、空中で自分に重力付与を行う。
カニの爪が横殴りに襲ってくるのを、重力の方向を変えることで回避する。
俺は首から下げたペンダントを手に取る。
「ガンモード!」
ティアドロップを繋げたような形をしたペンダントは、ライフル型に姿を変えた。
『枯れクズ』で作ったカートリッジをチェインバーに入れ、カニの頭に狙いを定めトリガーを引く。
まばゆい光がライフルの先からほとばしり、カニの頭に向かう。
驚いたことに、カニの甲羅はその光を弾いた。
ビームが当たったところが少し変色しているが、カニにダメージが通った様子はない。
再び爪が襲ってくる。
これはしょうがないな。
点ちゃん、ちょっと考えがあるから、傷つけないように仕留めてくれる?
『(^▽^)/ はーい!』
俺に迫っていたカニの爪が、ピタリと止まる。
ズズン!
巨大なカニの身体が傾き崩れおちた。
点ちゃんが『・』をカニの内部に送りこみ、生命維持に関する器官を断ったのだろう。
グッジョブ、点ちゃん!
『(≧▽≦) えへへ』
このカニ点収納に入れとくから、甲羅の成分を調べてくれる?
『ぐ(Pω・) 了解!』
さて、ポータルズは見つかったが、これを潜るのはちょっと待った方がよさそうだ。
もしも、これが一方通行のポータルで、こちらの世界群でセルフポータルが開かないと、銀ちゃんとタムをあのまま放置することになるからね。
◇
点ちゃん1号が、森の隠し小屋近くに着陸する。
機体から降りてすぐ、何かおかしいなと感じた。
タムが飛びだしてこないのだ。
今朝、あれほど蜂蜜クッキーを喜んでいたのにだ。
もしかして、昼寝してるのかな?
小屋に入ると、誰もいない。
念のためベッドが置いてある隣の部屋も確認するが、こちらにも人はいなかった。
パレットを出し、銀さんとタムがどこにいるか確認する。彼らには『・』をつけてあるからね。
近くにはいないようだ。
マップに映る範囲を拡大していくと、やっと二つの点が現われた。
それは街の中心、『旅立ちの森』という例の黒い建物近くにあった。
二つの点は、その建物へ向かって動いている。その周囲に五つ、銀仮面を表す点がある。
これは……。
『(・ω・)ノ 二人は銀仮面にさらわれたようです』
しかも、例の建物に向かっているってことは……。
『(・ω・)ノ 恐らく、あの二人に『旅立ちの儀』を施すためでしょう』
どういうことだ?
三十日間の猶予はどうなってるんだ?
『d(u ω u) 何かの理由で予定を早めたのかも』
とにかく、何が起こってるか突きとめるよ。
俺は自分とブランに透明化の魔術を掛けると、『旅立ちの森』に向け瞬間移動した。
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