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第十二章 放浪編
第23話 マンボウ - 点ちゃん5号登場 -
しおりを挟む瞬間移動で点ちゃん1号の中に戻った俺は、点ちゃんに頼み、壁に貼ったスクリーンに本のページを拡大して映していた。
『β世界の環境』の第六章、『その他』の内容を、最初からゆっくり調べていく。
うーん、なぜかポータルのことが載っていないな。
まてよ、もしかすると……。
俺は第五章を調べていく。
「あった!」
ポータルの事は、「移住の問題点」という項目に書かれていた。
『現在、β世界のゲートは、海抜1ミーダの所にある。
海面変化の推移から考えると、五十年後にはゲートが海面下になる恐れがある』
この「1ミーダ」というのがどれほどの長さか分からないが、もしかすると、すでにポータルが海面下に沈んでいる場合も考えられる。
点ちゃん、この本っていつ頃書かれたか分かる?
『(Pω・) アリスト年で、少なくとも百五十年以上前に書かれているみたいです』
ひゃ~、すっごい昔だね。
『(Pω・) 第三章と第五章の地図を合わせると、ポータルの位置が特定できそうです』
よし、じゃ、そこに行ってみるかな。
『(^▽^)/ わーい!』
遠足のノリだね、点ちゃんは。
◇
次の日、俺はポータルを探すため、点ちゃん1号で海岸線の上を飛んでいた。
点ちゃん、この辺り?
『(Pω・) 本が書かれた時より、ずい分海岸線が陸側に動いています』
とりあえず、ここが第一候補でいいのかな?
『(・ω・)ノ そうです。海岸から五十メートルくらい沖でしょう』
えっ!?
それって海底ってこと?
『(・ω・)ノ そうなります。ポータルが海水と接触したらどうなっているか……』
とにかく海に潜ってみるかな。
点ちゃん、この1号のまま潜れる?
『(*ω*)✨ 無理ではありませんが、ここは一つ、新型を!』
点ちゃん、目が光ってる。期待してるね?
よし、じゃ、二人で設計してみよう。
一番やっかいな潜水病対策は、点ちゃんに任せちゃおう。
◇
「うーん、これでいいのかなあ」
海上、目標地点上空で停めた点ちゃん1号の外に、潜水用の点ちゃん5号を出す。
なんだろう、この納得できない感じは。
きっと5号の形が、魚のマンボウに似ているからだろう。
今まで機体は、割と格好にこだわって作ってきたからね。
今回は機能重視ということでいいでしょう。
でも、いつかきっとかっこよく改良してやる。
マンボウ型点ちゃん5号に「付与 重力」を施しておき、乗りうつる。
あっ、そういえば、点ちゃん、ここの海って酸性が凄く強いんでしょ。
『(Pω・) すでに検証済みです。何年潜ってても大丈夫ですよ』
おー! 頼もしい。さすが点ちゃんシールド装甲。
では、海中へー、ざぶんと。
……あれっ?
もう底に着いちゃったよ。
『(・ω・) それはそうでしょう。ここって、水深二十メートルもありませんから』
あ、そうなの?
ちょっと拍子抜けしちゃった。
しかし、強酸性の海でも、生き物、割といるね。
『(・ω・)ノ ただ、種類は少ないみたいですよ』
魚が泳いでいるけど、どれも全身甲羅みたいなので覆われてるよね。
そういえば、この前、海水を採集したときにいた、触手を持った巨大生物はいないのかな。
『(・ω・) あれはもっと深い所でしたからね』
まあね、あんなに巨大な生物だから、深い所じゃないと……って。
点ちゃん、何か向こうの方から近づいてきてない。
『(・ω・) 例の巨大生物ですね』
なに余裕見せてるの!
いいの?
俺たち、食べられちゃうんじゃない?
『へ(u ω u)へ あの生物がどんなに頑張っても、5号の装甲は大丈夫です』
……なんか、触手でぐるぐる巻きにされてるんだけど。
あれれ、なんか船体が動いてるよ。
『(・ω・)ノ きっと棲み処に持っていって食べるつもりなんでしょう』
おーい! ダメでしょ、それ!
点ちゃん、なんとかしてよっ!
『(・ω・)ノ もう、ご主人様はビビりですね』
ええ、ビビりです! ビビりですから助けてーっ!
『(*'▽')つx はい、ちょんちょんっと』
あれ?
触手が外れた?
ていうか、バラバラになった触手が海中を漂ってる。
『(・ω・)ノ さあ、窓の外に注目ー!』
あ、あれ何?
『(・ω・) カニのハサミを参考に造ってみました』
ハサミがあるマンボウ!?
『v(*'▽')v カニ型マンボウ、フーっ!』
……もういいです。全てお任せします。
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