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第十一章 ポータルズ列伝

プリンス翔太編 第10話 学院対抗魔術競技会(4)

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 ボクは、コート中央に立っていた。
 審判からの合図を待っているんだ。

「おいおい、勝負を諦めたのか。
 こんなちっちゃな子にホールダーを任せるなんて」

「「へへへっ」」

 元皇太子エリュシアスの言葉に、相手チームのサポーター二人が、せせら笑っている。
 そんな言葉を聞いても、ボクの心は、風のない日の湖みたいに静かだった。

 審判が手で開始の合図をする。
 ボクは水玉を作った。直径一メートルくらいのやつを。

「な、なんだありゃ!?」

 敵のサポーターが驚いている。
 時間が無いので、ボクはすぐにそれを敵のゴールに向け撃ちだした。

 ドドーンッ!

 凄く大きな音が競技場に響く。水玉がゴールにぶつかった音だ。
 競技場がシーンとした。 

「ショータ、すごーい!」
「やったー!」

 ナルちゃんと、メルちゃんの声だけが聞こえてきた。
 向こうの選手が審判に向かい抗議している。ボクと水玉の距離がルール違反だと言いたてているに違いない。でも、きちんとルールには書いてあるもんね。

『<<相手>>コート内では、ホールダーと水玉とが一定距離離れると、攻撃権を失う』

 ボクは自分チームのコートから撃ってるから。

「な、なんと、アーケナンの選手が、開始線からゴールしました!
 6-9!」

 やっと始まった放送の声で、会場に歓声が戻ってきた。

「ふんっ! 
 どんなに悪あがきしても今さら手遅れだ、馬鹿めっ!」

 エリュシアスが吐きすてるように言うと、水玉を作った。だが、彼は一歩も動こうとしない。
 時間切れを狙っているんだね。

 バシャッ

 彼の頭上にあったが水玉が突然落下し、その頭にぶつかった。

「な、何だっ!?」

 ぬれねずみになった、元皇太子が呆然としている。
 ボクが風魔術で水玉を叩きおとしただけなんだけどね。

 再びこちらの攻撃。

 ドドーンッ!

 ボクの水玉が、相手ゴールを揺らす。

 こうした攻撃が繰りかえされ、あっという間に得点差が無くなった。9-9だ。

 相手は、最後にボクが思いもかけない作戦に出た。
 全員が自陣ゴール前に集まり、水玉や風魔術でゴールを守ったんだ。

 ボクは、開始線手前で黙ってそれを見ていた。

 審判が合図する。
 ボクは再び水玉を作った。直径三メートルほどのやつを。
 ゴール付近に集まった、相手チームの人たちが凍りついたように動きを停めた。

 ボクは水玉を、今までで一番速いスピードで撃ちだした。
 大きな水玉は、あっという間に相手ゴールに迫った。

 いくつもの水玉や風が、ボクの水玉にぶつかる。
 しかし、巨大水玉は、それを簡単に弾きとばしてしまった。
 なぜなら、ボクが巨大水玉を勢いよく回転させておいたから。

 水玉は、相手選手全員を弾きとばしてゴールに激突した。

 ドガーン!

 丈夫な材質で作られたゴールが、水玉がぶつかった衝撃で粉々に砕けちった。
 タルス学院の選手六人が、散らばって倒れている。

 しばらく場内が静かになったあと、爆発するような歓声が上がった。
 それと同時に管楽器が鳴り、試合終了を告げた。

「10-9、今年度『ウンディーナス』の勝利は、アーケナン魔術学院がものにしました!」

 場内放送が流れる。
 チームメートが、こちらに走ってくる。
 ボクは皆に胴上げされた。
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