上 下
484 / 607
第十一章 ポータルズ列伝

銀髪の少女編 第5話 ナルとメル、先生に謝られる

しおりを挟む
 パーパが学校に呼びだされた次の日。
 授業時間になって教室に入ってきたファーグス先生は、なにかさっぱりした顔をしていたの。

「授業を始める前に、君たちに話しておかなければならないことがある。
 私は、この前、ナル君とメル君が言っていたことを嘘だと決めつけてしまった。
 しかし、調べてみると、彼女たちが言っていたことは全部本当のことだった。
 先生の不勉強だ。
 ナル君、メル君、先生が悪かった。
 この通り、許してくれ」

 先生が、地面を見るように頭を下げたの。
 私とメルはちょっとびっくりしたけど、こう言ったの。

「「だいじょーぶー」」

 ホントは、先生の頭をいい子いい子してあげたかったんだけど、やめておいたの。

 先生は前の日までとは打ってかわって、元気に授業するようになった。
 他の生徒も、みんな驚いていたわ。急に授業が面白くなったって。

 分かり切った事でも、見方を変えるといろんな事が分かるようね。
 私も少し授業を聞くっていう意味が分かってきたわ。
 分かりきったことを、じっと座って聞くだけじゃなかったのね。

 ああ、そうそう、ウチに帰ってから、パーパにたずねると、昨日ファーグス先生をしかっていたおじいさんは、『こーちょー先生』といって、学校で一番えらい人なんだって。
 女の人は、『きょーとー先生』で二番目にえらいそうね。

 でも、そうやって、先生みんなに別の名前がついていたら、ごちゃごちゃしないかしら。

 ◇

 次の日、学校に行くと、教室のすみで、ぽっちゃりした女の子が泣いていたの。

 どうしたのって聞いたけど、最初は何も言わなかったわ。
 いろいろ言葉を変えてたずねると、何があったか、少しずつ話してくれた。
 太っていることで、男の子からイジメられたみたい。

 イジメるっていうのがどういうことか、私には分からないけど、あまりいいことじゃないのは確かね。
 だって、この子が泣いてるんだもの。

 その子が住んでるところをたずねると、私たちが学校まで来る途中みたい。
 明日から一緒に学校に来ようって約束したの。

 あれ? 
 窓の外でまたじーじに似た人がおそうじしてる。
 最近、なぜだか家族に似た人をよく見かけるのよね。

 ◇

「ナル、メル、今日はどうしてこんなに早いの?」

 朝、学校に行こうとすると、パーパにたずねられたの。

「友達と一緒に学校に行きます」

 私がそう言うと、パーパは、すごく嬉しそうな顔をしてたわ。

 ◇

 私とメルはいつもの道を通って学校に行ったの。
 でも、今日は、途中で本屋さんに寄ったんだ。
 そこが、キャサリンのおうちだから。
 キャサリンっていうのは、昨日学校で泣いていた、ぽっちゃりした女の子。

「「こんにちはー」」

 私たちが言うと、眼鏡を掛けたおじさんが、お店から出てきたの。

「君たちがナルちゃんとメルちゃんかな」

「はい、そうです」
「うん、そうだよ」

「すぐに娘も出てくるから、ちょっと待ってね。
 この本を見てるといいよ」

 おじさんは、たくさん絵がついた大きな本を渡してくれたの。
 パーパは、「この世界では、本はとてもこーかなものだ」って言ってた。
 ウチにも、そんなにたくさんは本がないの。
 こんなにいっぱい本があるキャサリンがうらやましいな。

「おはよう……」

 キャサリンちゃんは、声が小さいの。
 もっと大きな声でしゃべればいいのに。

 それから、三人で学校に行ったの。
 途中で公園を通るんだけど、そこに背が高い子供が三人いた。
 全員男の子ね。

「お、豚がきたぞ!」
「豚キャシー!」
「やーい、ぶうぶうっ!」

 この子たちがキャサリンをイジメてるのね。
 イジメるって悪口を言うことかしら?

「あなたたち、自分より小さな女の子をイジメて恥ずかしくないの?」

 そう言ってやったわ。

「お前、誰だ」
「おい、この二人、同じ顔してるぞ」

 馬鹿な子たちね、姉妹だから同じ顔は当たり前じゃない。

「なんで髪が白いんだ」
「やーい、白カミー」

 パーパが、「心が小さい人間は、自分と少しちがうことが許せない」って言ってたけど、この子たちは、心が小さいのね。

「あなたたち、心が小さいわね」

 私はそう言ってやったわ。

「ちっちゃいねー」

 メルもそう言ってる。

「なんだと! 
 こうしてやる!」

 一人の男の子が、私の髪を手で触ろうとしたの。
 私はその手首をつかんで、ぽいって投げたの。
 その子は、公園の反対側の、木がいっぱい生えているところに飛んでいったわ。
 木から生えた足が動いてるから大丈夫ね。

「な、なんだこいつ!?
 えいっ!」

 一番大きな男の子が、その辺におちていた木の棒で私になぐりかかってきたの。
 木は、私の肩にぶつかったわ。

 ボキッ

 木が折れちゃった。
 あら、男の子が手を押さえてうずくまってる。
 なんでかしら。

 もう一人の男の子が、メルを突きとばそうとしたの。
 その前に、メルがちょんと男の子の胸をつついたの。
 その子も、最初の子みたいに公園の反対側の木から足が生えることになったわ。

 この子たち、こんなに弱っちいのに、なんで女の子をイジメてたのかしら。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

男装の皇族姫

shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。 領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。 しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。 だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。 そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。 なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ  どこーーーー

ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど 安全が確保されてたらの話だよそれは 犬のお散歩してたはずなのに 何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。 何だか10歳になったっぽいし あらら 初めて書くので拙いですがよろしくお願いします あと、こうだったら良いなー だらけなので、ご都合主義でしかありません。。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

処理中です...