ポータルズ －最弱魔法を育てようー

第十章 奴隷世界スレッジ編

第５９話 決戦５

　空を舞う天竜の一体が、近くに降りてくる。

『シロー殿、久しぶりだな』
　
　それはテレパシーが使える、天竜モースだった。
　驚いたことに、彼の背中から白竜族の青年が降りてきた。

「ジェラード！」

「シロー、戦況はどうだ？」

「お前たちのお陰で、なんとか戦闘が起こる前に終わりそうだよ」

「ならいいが。
　ところで、コリーダさんはどこだ？」

　こいつ、この期に及んでそれかよ。

「後で会わせてやるから、とにかく戦闘を終わらせるぞ」

「ああ、分かった」

　◇

「武器を捨て降伏せよ」

　戦場にマスケドニア王の威厳ある声が響く。
　彼の声には、俺などがまねできない説得力があった。
　敵兵のほとんどが、武器を捨てた。

　残ったのは、一万にも満たない敵兵だけだ。
　ついに、敵味方の数が拮抗したことになる。
　近衛兵中心のその隊は、中心にソラル、ガーベルの二人を守り、円陣を組んだ。

「残りはしょうがないか。
　点ちゃん、あれやるよ」

『(((o(*゜▽゜*)o)))　わーい、待ってました』
　
　点ちゃん、ノリノリだな。
　
　山岳の西に広がる草原から、砂煙が近づいてくる。
　それは、ナル、メル、イオを『巨人の里』まで連れてきたポポの群れだった。
　先頭のポポは、ずっと俺たちと一緒に行動してきた一頭だ。俺はその背中にまたがった。

　さて、点ちゃん。最後の仕上げ、いってみよう。

『(＾▽＾)／　おー！』

　◇

　ガーベルとソラルは、相談の上、敵に最後の突撃をすることに決めた。
　敵の数は、ドラゴンを除けば、およそ一万。乱戦になれば、ドラゴンも手を出せないだろうという計算だ。
　一番怖いのはドラゴンが吐く炎だから、素早く動き敵陣の中に切りこむ必要がある。
　　　　
「いいか、動きだしたら停まるな。
　敵の大将目掛けて攻めこめ」

　大将格の兵士たちの前で、ガーベルが命令を下す。

「た、大変です！」

　一人の近衛兵が駆けよる。

「ポポの群れが、こちらに向かってきます！」

「ええい、鬱陶しい！
　そいつらを蹴散らし、先ほど伝えたようにせよ！」

　一万の精鋭からなる円陣は、ポポの群れを迎えうつ準備を整えた。

　◇

　ポポに乗り、後ろを振りむいた俺は声を失った。いつの間にか、別のポポに加藤が
乗っているのだ。その横のポポには、なぜかジェラードが乗っている。
　
「こんな面白そうな事、一人でするなよ」

　加藤が、にやりと笑う。

「コリーダ様に、私の雄姿を見ていただかなくては！」

　ジェラード、君はぶれないねえ。

「しょうがない。
　しっかり掴まってろよ。
　落ちても知らないよ」

　二人には点をつけてあるから、何かあれば瞬間移動させればいいのだが、とりあえずそう言っておく。

　じゃ、点ちゃん、出発ーっ！

『ｐ(≧◇≦)ｑ　ゴー！』

　◇

　ポポの群れが近づいてきたとき、ソラルが叫んだ。

「あの者だ！
　先頭のポポに乗る者を討ちとれ！」

　ポポの体は比較的柔らかい。
　剣でも槍でも、十分貫けるだろう。
　兵士たちは、そう考えていた。

　ポポの群れが一万の兵と激突した。
　
　◇

「き、効かない！
　なぜだ！？」

　魔術が得意な兵士が氷の矢でポポを貫こうとしたが、それはピンクの皮膚に弾かれてしまった。
　呪文を唱えなおそうとした兵士は、ものすごい勢いでぶつかってきたポポに跳ねとばされ意識を失った。

　こちらは、槍でポポに突きかかった兵士。
　槍が弾かれたとおもったら、空高く弾きとばされていた。
　背中から地面に落ちた彼は、その衝撃で意識を失った。

　◇

「ヒャーッハーッ！
　これ、最高！」

　加藤はノリノリだ。

「コリーダ様ー！
　この戦いをあなたに捧げますー！」

　いや、ジェラード、それはいいんだけど、君が乗ってるのピンク色したカバだから。
　どう見ても格好よくないから。

　点ちゃんシールドで体表を覆われたポポたちが、同盟軍の兵士を蹂躙していく。
　それほど時間は掛からず、立っている兵士がほとんどいなくなった。