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第十章 奴隷世界スレッジ編

第57話 決戦3

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 遠くに母親の異変を感じた子竜二体は、幼子から竜の姿に戻ると、里から飛びたち母親がいるだろう方向へ飛翔した。
 途中から猛烈な気だるさが襲ってきたが、二体は飛びつづけた。
 突然、気だるさが消える。前方の草原に横たわる母の姿を見つけた。

 急降下した二体の子竜は、横たわる母の近くで再び幼子の姿となった。
 ぬいぐるみと一緒に母の体にすがりつく。

「マンマー!」
「マーマ!」

 コルナとコリーダが、同時に上体を起こす。

「「あなたたち……」」

 二人の声に、子竜が喜ぶ声が重なった。

 ◇

 点ちゃんからの報告で、コルナとコリーダの子竜が急に里を離れたと知り、俺は彼女たち二人が近くまで来ていると確信した。

『(・ω・)ノ ご主人様ー、ドラゴナイトの効力が消えたみたい』

 そうか、きっとコルナとコリーダが何かしたに違いない。

『バルクさん、聞こえますか?』

『おお、頭の中でシロー殿の声が聞こえる』

『俺の魔術なんです。
 それより、体調の方はどうです』

『里に着くなり楽になったわい』

『よかったです。
 もう一度、こちらに来れますか。
 戦える人は、前線に集まってもらいたいのです』

『しかし、ドラゴナイトがある限り、我らはなにもできぬが』

『仲間がドラゴナイトを無効化してくれました。
 もう、来ていただいて大丈夫ですよ』

『なんと!
 そのようなことができるのか?
 とにかく、それなら、むしろ我らに戦わせてほしい』

『では、こちらに移動させますよ。
 皆さんが驚かないように、声を掛けておいてください』

『分かり申した』

 俺は拡声用クリスタルを持ち、それに話しかけた。

「同盟軍の諸君、もう君たちに勝ち目はない。
 諦めたまえ」

 これには、すぐガーベルが反論する。

「馬鹿を言うな。
 ドラゴナイトの影響で、そちらの戦力は限られている。
 どう見てもお前らに勝ち目などないぞ」

「ははは、ドラゴナイトは、すでに無効化されたぞ。
 勝ち目がないのはお前たちだ」

「ば、馬鹿なっ!
 誰がそんなたわ言を信じる?」

 その瞬間、並んだ神獣の周囲に巨人が多数現れた。
 彼らは手に槍を持っており、勝鬨を上げている。
 その前にマスケドニア、アリストの連合軍が並んだ。
 中心にいる三人、加藤、畑山さん、舞子が身に着けた黄金色の鎧が光る。
 それを見た同盟軍の兵士の多くが、逃走にかかった。  
 
 同盟軍はすでに陣がバラバラで、その数も半数以下に減っていた。
 
「くそう、全軍、突撃ーっ!」

 やけになった、王ガーベルが声を上げる。
 俺が一番恐れていたのがこれだ。
 死を恐れずかかってくる兵士は、消去するしかないからだ。
 
 五十万近い兵が、山岳地帯へ押しよせてきた。
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