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第十章 奴隷世界スレッジ編
第23話 ナルとメルの秘密作戦1
しおりを挟むナルとメル、子竜を部屋の隅に寝かせたまま、テーブルの周りにシローの家族が集まった。
リーヴァス、ルル、コルナ、ルル、それに天竜の長が参加している。
竜王様も念話で参加されるようだ。
テーブルの上には、ドラゴニアギルドから届いた地図や書類が広げられていた。
「まず、状況を整理しておきますかな」
リーヴァスが、書類で確認しながら、シローとカトーが、いなくなった竜人の人々を追ったこと、その中には、エンデとリニアが含まれていること、彼らが潜ったポータルは、恐らくはスレッジに通じていること、そういうことを整理していった。
「シローなら、きっと大丈夫。
でも、もしかすると、私たちにも何かできることがあるかもしれないわ」
状況が分かると、ルルがまっ先に発言した。
「そうね。
彼からドラゴニア世界とスレッジ世界の因縁は聞いていたから、私にも一つ思い当たることがあるの」
コリーダが、落ちついた声で自分の意見を述べる。
「エルファリアへ戻られるのですな?」
リーヴァスには、コリーダが何をしようとしているか、それが分かっているようだ。
「ええ、あの国から、必要なものを持ちかえるつもりです」
「ならば、あなたは、私がお守りしましょう」
「おじい様……ありがとうございます」
「あたしも、神樹様におうかがいを立てるためにグレイル世界に帰るわ」
コルナが、言葉を選び慎重に発言した。
「おじい様、私はどうすべきでしょう?」
ルルは思うところがあるようだが、リーヴァスに助言を求めた。
「そうだな、ナルとメルの事があるから、軽々しく動かぬようにな。
みなで合流できる手はずも、今から考えておかねばならぬ。
ギルドの力を借りねばなるまい」
「はい、おじい様」
これからの行動に頭がいっぱいで、大人たちは、ナルとメル、そして一番大きな子竜たちが薄目を開け話を聞いているのに気づけなかった。
◇
ルルたちが『ゆりかごの部屋』から出ていくと、ナルとメルがコケットから起きだした。
「みんな、今の聞いた?」
ナルが話しかけると、大きな子竜三体が頷いた。
大人たちの会話は、ナルが念話で子竜に同時通訳していた。
「パーパがどこか分からない場所に行っちゃって、マンマたちがそれを探そうとしてるんだよ」
子竜とメルが、同時に頷く。
「ナルお姉ちゃん、『ちいドラ隊』で探しに行くの?」
メルが言う『ちいドラ隊』とは、彼女たちが子竜に人化を教えた時に作ったチームだ。
ナル、メル、一番大きな子竜三体がメンバーだ。
メルが「小さなドラゴン隊」から名づけた。
「よーし、『ちいドラ隊』出発準備にかかれー」
「おー!」
「「「グルルル~!」」」
こうして、小さなドラゴンたちは、パーパ捜索作戦を始めた。
◇
『竜王様、ご報告があります!』
リーヴァスの報告は、念話だからこそ、その焦りがはっきりと感じられた。
『なんじゃ、リーヴァス。
お主が慌てふためくとは珍しいの』
『それが、ナル、メル、一番大きな子竜たちの姿が見えませぬ』
『なんじゃとっ!』
竜王様も、さすがに驚きの色が隠せない。
『いつ姿が見えなくなったのじゃ?』
『ここ二三日、ナル、メル、子竜たちは、朝から泉で遊んでおりました。
姿が見えぬので、今日も泉かと思っておりましたが、たまたま水汲みに行ったところ姿がありませんでした』
『となると、いなくなったのは、ずい分前じゃな……』
『ええ、すでにルルが、天竜に連絡を取りに行っております』
『ぬう、天竜の休暇中にそのような事が起こるとはな……』
いつもなら何人かの人化した天竜が真竜廟にいるのだが、たまたま彼ら一族の行事があったため、彼らはここを離れていたのだ。
『とにかく、全ては天竜と連絡を取ってからじゃ』
普段は、この時間帯に昼寝をする彼らだが、今日はそれどころではなかった。
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