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第十章 奴隷世界スレッジ編
第9話 仲間の行方(下)
しおりを挟む次の日、すっかり元気になった俺は、再びブランに導かれ山道を歩きだした。
道は、草木が生えていない山岳地帯に続いていた。
もうそろそろ昼食のため一休みするかと考えた時、山肌に隠された洞窟を見つけた。
入り口を岩でふさぎ、隠してあるから、ブランがいなければ探すのに苦労したはずだ。
点をいくつか洞窟の奥に送りこみ、危険がないか確認した上で、中に入った。
入り口の岩は、元に戻しておく。
洞窟は俺が少し屈んで通れるくらいの高さで、ほぼ円形を成していた。壁となる岩肌が滑らかなことから、もしかすると人の手で掘られた洞窟かもしれない。
奥へとまっすぐ続く洞窟を三十メートルほど入ったところで、かなり広い空間に出た。
俺が手にした水晶灯に照らされたそこは、床が平らになっており、いくつかの見慣れない道具が置かれていた。
広さが教室ほど、高さは十メートルほどある、その空間の奥には、祭壇のようなものがあり、両開きの扉があった。
扉は緑色の石でできている。
マスケドニアの小島にあるポータルに同じ石が使われていたのを思いだした。
用心のため、少し離れたところから、点を扉につけ、それを開く。
「やっぱり、ポータルか」
加藤もそれがポータルだと予想していたようだ。
開いた扉の向こうには、黒い靄があった。
「どうする?」
「そうだな、ブランによると、さらわれた人たちがこれを潜ったのは間違いないようだから、後を追うしかないが……少し待ってくれ」
俺は念話のチャンネルを開いた。
◇
『アンデ、聞こえるか』
念話を開いた相手は、俺たちが今いる獣人世界、ケーナイという町在住のギルドマスターだ。
『おっ、シローか。
この世界に来てるのか?』
『ああ、今、南部の山岳地帯にいる』
『そんな所で、何やってるんだ?』
『最近、ドラゴニアにギルドができたのを知っているか?』
『ああ、知ってるぞ。
まだ、ギルマスレベルでしか知られていない情報だけどな』
『ドラゴニアのギルマスになったのが、俺の友人でリニアという女性なんだが、彼女がこの世界にいる仲間を救いに来ていたんだ』
『竜人が、このグレイル世界にいたのか?』
『ああ、一方通行のポータルで、ここに送りこまれた人たちがいたらしい』
『なるほど。
それで?』
『その友人を含め、竜人たちがさらわれたらしい』
『なんだと!?
また、学園都市世界のやつらがやったのか?』
『いや、今回のは、どうもスレッジという世界が怪しい』
『ああ、スレッジか。
聞いたことがある。
奴隷制を敷いている世界だな』
『俺たちは、さらわれた人の後を追って、隠されたポータルの前まで来たところだ。
場所をパレットに送るから、すぐに書きうつしてくれ。
これからそのポータルを潜るから、ドラゴニアにあるギルドとアリストギルドのキャロに連絡を頼めるか』
『ああ、それはいいが、手助けは要らないのか?』
『黒髪の勇者がいるから、大丈夫だろう』
『何かあれば、遠慮なく言えよ』
『ああ、ありがとう。
念のため、ギルド本部のミランダさんにも、連絡しておいてくれ』
『分かった。
気をつけてな』
念話が切れると、すぐに加藤が話しかけてくる。
「おい、ぼーっとして、どうした?」
「ああ、すまん。
ギルドへ報告を入れてたんだ」
「なるほど。
それじゃ、行くか?」
「ああ、行こう」
白猫ブランが、さっと俺の肩に乗る。
加藤と俺は、どこに行くかも知れないポータルを潜った。
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