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第九章 異世界訪問編

第37話 地球世界の神樹4 -- 南アメリカ --

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 俺は、ニューヨーク、スタテンアイランドにあるハーディ邸で目を覚ました。

 ここの敷地には、森があるから、朝の散歩をする。
 リスなどの小動物が沢山いて、とても楽しい散歩だった。

 屋敷に帰ると、翔太が庭で魔術の練習をしていた。
 彼は、可能な限り毎日魔術の練習をしている。
 ピエロッティとの約束だそうだ。

 素人の俺から見ても、翔太の魔術は凄かった。
 周りに森や建物があるので、火魔術は使わないが、水、土、風、全てにおいて、俺が今まで見たどの魔術師より優れている。
 旅行中、ハーディ卿が、手を切ったことがあったが、彼が治癒魔術であっという間に治していた。
 これでまだ十二歳だから、末恐ろしい才能だ。

 エミリー、翔太、俺が揃った朝食の席で、ハーディ卿が話しはじめた。

「シローさん、今回は旅行に連れていってくれてありがとう。
 今だから言いますが、私は、娘が「聖樹の巫女」になったと聞き、あなたを恨んだこともありました。
 娘の目を治してくれた恩も忘れてです。
 今回の旅行で娘の姿を見ていて、彼女のお役目がどんなに大切なものか、そして、あなたとショータが、娘をどれだけ大切にしているか分かりました。
 どうか、娘の事をよろしくお願いします。
 死んだ家内が今の彼女を見ると、きっと誇りに思うに違いありません」

「俺たちは、もうエミリーを他人だとは思っていませんよ。
 彼女は、翔太と俺が何としても守ります」

 翔太も、ハーディ卿の方を見て力強く頷いている。
 そんな翔太を見て、エミリーが赤くなっている。

「シローさん、この後、南米にも行くのですよね」

「ええ、南米を北から南へ調べる予定です。

「私は、その旅にはついて行きません」

「ハーディさん、なぜですか?」

「娘がこれだけの事をしているのです。
 私は自分ができることで娘を応援したいと思います」

「あなたが一緒でも、俺たちには何も負担ではありませんよ」
 
「そうおっしゃってくださるのはありがたいですが、もう決めたことです」

 ハーディ卿は、微笑んでいた。

「エミリー、頑張ってくるんだよ。
 パパも頑張るからね」

 せかっくだから、異世界に連れていく研究者の人選を彼に頼むことにした。
 アリストの研究所、マスケドニアの研究所、学園都市の研究所にそれぞれ二名ずつだ。
 ある理由から、派遣するメンバーの半数は二十五歳以下にしてもらった。
 研究所はそのうち、エルファリアとグレイルにも作るつもりだが、そちらへ送る研究者は後回しでいいだろう。

「分かりました。
 魔術研究所、錬金術研究所、科学研究所、各二名、合計六名。
 地球最高の知力を集めますよ」

「よろしくお願いします。
 では、俺と翔太は自室で少しくつろぎますので、エミリーの用意ができたら呼んでください」

 エミリーには、お父さんに甘える時間をあげないとね。

「お気遣いありがとうございます。
 では、後ほど」

 俺と翔太は、出発に備えて準備を始めるのだった。

 ◇

 エミリー、翔太、俺の三人は、ハーディ邸をたち、点ちゃん1号で南米に向かう。

 途中、ニカラグアのジャングルで神樹様の治療をすると、更に南に下る。

 広大なアマゾンのジャングルには、三柱の神樹様がいた。
 そのうち一柱の神樹様がある森は、消滅寸前だった。
 大規模な焼き畑が、目の前まで迫っていたのだ。
 俺はすぐにブラジル大統領に電話を入れた。

「大統領、シローです」

「ああ、お久しぶりです。
 何のご用でしょう」

 俺は、自分がどこにいるかを告げ、焼き畑を中止してもらうように頼んだ。

「うーん、そうですね。
 できる限りやってみましょう」

 ところが、何時間待っても、大統領から返事が来ない。
 その間にも焼き畑は広がっていく。

 痺れを切らした俺は、大統領執務室に直接現れた。
 エミリーと翔太は、一旦、ハーディ邸に戻してある。

 ブラジル大統領は、机に肘をつき頭を抱えていた。

「お返事が無いから、直接うかがいました」

「シ、シローさん! 
 すみません。
 待たせてしまって」

「一体どうしました?」

「それが、あそこの焼き畑を手掛けている会社は、麻薬王の息が掛かっていまして、我々にも手が出せないのです」

「なるほど」

「どうか、このことで、『枯れクズ』を売らないなどと言わないでください」

 自分たちの要求だけ通そうというのは、虫がいい話だ。

「それは、とりあえず保留にしておきましょう。
 麻薬王にどうして手が出せないか、具体的な理由を教えてください」

 大統領は、政府高官の中にも麻薬王と関係がある者がいること、麻薬王の関係者は、警察はもちろん、 裁判所にもいて、例え裁判に掛けられても、逃げおおせることを教えてくれた。

「ああ、そんなことですか」

「そんなことっていっても、どうすることもできませんよ」

「詳しいことは話せませんが、あの地域の森を保全することに、地球の存亡が掛かっているんです。
 この件は、俺に任せてもらえますか?」

「え、ええ、それはもちろんです」

「麻薬王とその一味は、消しても構いませんね」

「もし可能なら、それをお願いしたい」

 点ちゃん、久々に忙しくなりそうだよ。ブランにもそう伝えておいてね。

『(^▽^) わーい、分かったー!』

 こうして、俺、白猫ブラン、点ちゃんの神樹様救出作戦が始まった。
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