上 下
373 / 607
第九章 異世界訪問編

第34話 地球世界の神樹 -- アフリカ -- 

しおりを挟む

 点ちゃん1号に乗りこんだエミリー、翔太、ハーディ卿、俺は、進路をアフリカ周回コースに取った。

 透明化した点ちゃん1号の下には、砂漠が広がっている。
 砂漠の緑化も目標の一つだが、今はとにかく先を急ぐ。

「シローさん、こちらの方角にお願いします」

 俺はエミリーが指さした方向に点ちゃん1号の進路を変える。

「もうすぐです……あ、この辺りに降りてください」

 ボードに乗り、四人が草原に降りた。
 いわゆる、サバンナとかサバナと言われる地域だろう。
 少しの間、目を閉じていたエミリーが東の方を指さす。

「あちらです」

 俺たちが歩く先には、幹が細く背が高い木々の林があった。
 ボードで草原を掻きわけ、そちらに向かう。

 木立の中に入ると、俺はボードを消した。

 エミリーは迷うことなく、どんどん歩いていく。
 翔太がその横にピタリとついている。
 俺とハーディ卿は、その後をついていく。

「ありました」

 エミリーが指さしたのは、驚くほど小さな木だった。
 学園都市世界の神樹メアリー様よりまだ小さい。

 高さが一メートルほどで、幹の太さは片手で握れるくらいしかない。
 その木が放つ独特の雰囲気が無ければ、俺でも神樹様とは分からないだろう。

「えっ? 
 こんな木が……」

 ハーディ卿が絶句している。

 俺は『光る木』の『枯れクズ』を点収納から取りだし、エミリーに手渡した。
 彼女が翔太に何かささやくと、彼が詠唱を始める。神樹の根元に近い地面に穴が開いた。
 エミリーはその穴に『枯れクズ』を入れ、翔太に頷く。
 再び翔太が詠唱すると、穴は綺麗にふさがった。

 エミリーが小木に手をかざす。
 木が輝きだす。
 比較的おだやかな光が収まったとき、神樹様からの念話が聞こえた。
 いつものように、俺たちには理解できない波動だ。

「この子は、『ここはどこ』って尋ねています」

 神樹様の言葉が理解できるエミリーが通訳してくれる。
 この神樹様の意識は生まれてすぐのようだ。

 点ちゃんが点を飛ばし、エミリー以外の三人にも神樹様の念話が聞こえるようにした。

『みんなはだれ?』

『あなたは神樹という存在です。
 私たちはあなたを助けに来たの』

 エミリーが話しかける。
 
『私はエミリー。
 あなたのお母様から、あなたを守るように言われてここに来たの』

『ボクのママ?』

『ええ、聖樹様とおっしゃるのよ。
 あなた自身でも、お母様とお話できるはずよ』

『やってみる』

 神樹様の念話がしばらく途絶えた。

『ママと話せたー!』

 神樹様の嬉しそうな念話が聞こえる。

『よかったね、テリー』

『テリー?』

『そう、あなたの名前よ。
 私がつけたの』

『あーっ、メアリーお姉ちゃんが言ってた人だね』

『テリーは、今、メアリーと話したのね』

『うん! 
 すごく元気にしてもらったって言ってた』

『よかった。
 メアリーは元気そうね』

『そこにいる他の人はだれ?』

『俺はシローです。
 聖樹様にはいつもお世話になっております』

『ああ、君の事もママが言ってたよ。
 すごく助けてもらってるって』

『(・ω・)ノ テリーちゃん、こんちはー』

『あれ? 
 シローの中に、もう一人誰かいるね』

『つ(・ω・) 点ちゃんですよー』

『点ちゃんか、よろしくね』

『(^▽^) わーい、よろしくー』

『ボクは翔太と言います』

『ああ、君がエミリーを守る人だね』

『はい、そうです』

『エミリーをよろしくね』

『はい、分かりました!』

 翔太の念話は、いつも元気がいい。

『娘がお世話になります。
 私はエミリーの父です。
 ハーディとお呼びください』

『父か、パパのことだね。
 ボクにはママしかいないからよく分からないけど。
 そうだ、エミリー、ボクの弟たちが近くにいるみたいだから、そちらも助けてもらえる?』

『分かったわ。
 すぐに行くわね』

『お願いだよ』

 神樹様に何かあったとき、点が守るように設定すると、点ちゃん1号を出した。
 全員が乗りこむと、エミリーが示す方向へ機首を向ける。

 アフリカ大陸には、合計三柱の神樹様がいた。
 どれも小木なのは、彼らの特徴なのかもしれない。
 神樹テリー様以外の神樹は、幼すぎるからか、エミリーが治療しても念話をすることができなかった。

 俺は点ちゃん1号の進路をヨーロッパへ向けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

罪人として生まれた私が女侯爵となる日

迷い人
ファンタジー
守護の民と呼ばれる一族に私は生まれた。 母は、浄化の聖女と呼ばれ、魔物と戦う屈強な戦士達を癒していた。 魔物からとれる魔石は莫大な富を生む、それでも守護の民は人々のために戦い旅をする。 私達の心は、王族よりも気高い。 そう生まれ育った私は罪人の子だった。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

処理中です...