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第九章 異世界訪問編
第34話 地球世界の神樹 -- アフリカ --
しおりを挟む点ちゃん1号に乗りこんだエミリー、翔太、ハーディ卿、俺は、進路をアフリカ周回コースに取った。
透明化した点ちゃん1号の下には、砂漠が広がっている。
砂漠の緑化も目標の一つだが、今はとにかく先を急ぐ。
「シローさん、こちらの方角にお願いします」
俺はエミリーが指さした方向に点ちゃん1号の進路を変える。
「もうすぐです……あ、この辺りに降りてください」
ボードに乗り、四人が草原に降りた。
いわゆる、サバンナとかサバナと言われる地域だろう。
少しの間、目を閉じていたエミリーが東の方を指さす。
「あちらです」
俺たちが歩く先には、幹が細く背が高い木々の林があった。
ボードで草原を掻きわけ、そちらに向かう。
木立の中に入ると、俺はボードを消した。
エミリーは迷うことなく、どんどん歩いていく。
翔太がその横にピタリとついている。
俺とハーディ卿は、その後をついていく。
「ありました」
エミリーが指さしたのは、驚くほど小さな木だった。
学園都市世界の神樹メアリー様よりまだ小さい。
高さが一メートルほどで、幹の太さは片手で握れるくらいしかない。
その木が放つ独特の雰囲気が無ければ、俺でも神樹様とは分からないだろう。
「えっ?
こんな木が……」
ハーディ卿が絶句している。
俺は『光る木』の『枯れクズ』を点収納から取りだし、エミリーに手渡した。
彼女が翔太に何かささやくと、彼が詠唱を始める。神樹の根元に近い地面に穴が開いた。
エミリーはその穴に『枯れクズ』を入れ、翔太に頷く。
再び翔太が詠唱すると、穴は綺麗にふさがった。
エミリーが小木に手をかざす。
木が輝きだす。
比較的おだやかな光が収まったとき、神樹様からの念話が聞こえた。
いつものように、俺たちには理解できない波動だ。
「この子は、『ここはどこ』って尋ねています」
神樹様の言葉が理解できるエミリーが通訳してくれる。
この神樹様の意識は生まれてすぐのようだ。
点ちゃんが点を飛ばし、エミリー以外の三人にも神樹様の念話が聞こえるようにした。
『みんなはだれ?』
『あなたは神樹という存在です。
私たちはあなたを助けに来たの』
エミリーが話しかける。
『私はエミリー。
あなたのお母様から、あなたを守るように言われてここに来たの』
『ボクのママ?』
『ええ、聖樹様とおっしゃるのよ。
あなた自身でも、お母様とお話できるはずよ』
『やってみる』
神樹様の念話がしばらく途絶えた。
『ママと話せたー!』
神樹様の嬉しそうな念話が聞こえる。
『よかったね、テリー』
『テリー?』
『そう、あなたの名前よ。
私がつけたの』
『あーっ、メアリーお姉ちゃんが言ってた人だね』
『テリーは、今、メアリーと話したのね』
『うん!
すごく元気にしてもらったって言ってた』
『よかった。
メアリーは元気そうね』
『そこにいる他の人はだれ?』
『俺はシローです。
聖樹様にはいつもお世話になっております』
『ああ、君の事もママが言ってたよ。
すごく助けてもらってるって』
『(・ω・)ノ テリーちゃん、こんちはー』
『あれ?
シローの中に、もう一人誰かいるね』
『つ(・ω・) 点ちゃんですよー』
『点ちゃんか、よろしくね』
『(^▽^) わーい、よろしくー』
『ボクは翔太と言います』
『ああ、君がエミリーを守る人だね』
『はい、そうです』
『エミリーをよろしくね』
『はい、分かりました!』
翔太の念話は、いつも元気がいい。
『娘がお世話になります。
私はエミリーの父です。
ハーディとお呼びください』
『父か、パパのことだね。
ボクにはママしかいないからよく分からないけど。
そうだ、エミリー、ボクの弟たちが近くにいるみたいだから、そちらも助けてもらえる?』
『分かったわ。
すぐに行くわね』
『お願いだよ』
神樹様に何かあったとき、点が守るように設定すると、点ちゃん1号を出した。
全員が乗りこむと、エミリーが示す方向へ機首を向ける。
アフリカ大陸には、合計三柱の神樹様がいた。
どれも小木なのは、彼らの特徴なのかもしれない。
神樹テリー様以外の神樹は、幼すぎるからか、エミリーが治療しても念話をすることができなかった。
俺は点ちゃん1号の進路をヨーロッパへ向けた。
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