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第九章 異世界訪問編
第33話 エミリー研究所2
しおりを挟む昼食は、『エミリー研究所』の一番大きな部屋に研究者一同が集まって行われた。
スタッフまでは入りきらないから、彼らとは夕食を共にする。
食後は、俺が振まうエルファリア産のお茶と、ドラゴニア産蜂蜜クッキーを楽しみながら、各部門から簡潔な成果発表を聞く。
同時に所長の発表もした。
これまでに一番成果を挙げたアフリカ出身の若い研究者キジーが選ばれた。
この研究所においては、年齢、過去の実績は問われないからね。
所長の任期は、次に俺が研究所を訪れるまでとする。
この研究所の所長は、名誉職で、優秀な所長が研究業務に支障をきたさないように、ほとんどの雑務は専用のスタッフがこなすよう決められている。
ハーディ卿と俺は、思ったより研究が進んでいて満足だった。
研究者はもちろん、全ての職員には、相応のボーナスを支給しよう。
そうそう、研究所の名前が目の前にいる少女からつけられたと知ってみんな驚いていた。
そして、翔太は、ここでも人気者だった。
彼が本物のプリンスになったこと、異世界への留学生第1号であることが知らされると、みんなから凄い拍手があった。
昼食会が終わる頃には、研究者たち全員の白い実験着に、エミリーと翔太のサインが入っていた。
夕食会は、研究発表もなくお気楽なものだったので、俺たちは、ひたすら飲んだり食べたり、おしゃべりを楽しんだ。
翔太の水玉パフォーマンスもあり、場は凄く盛りあがった。
縁の下の力持ち役の彼らに感謝して、俺は『フェアリスの涙』を一杯ずつ振まった。
金額を聞くと彼らが気兼ねするだろうから、内緒にしてある。
俺たちは、ハーディ卿とエミリー、俺と翔太に分かれ、来客用の部屋に泊まった。
翔太が寝た後、俺はブランと一緒に研究者、職員のスクリーニングを行った。
やはり、性懲りもなくスパイを紛れこませている国があった。歴史あるヨーロッパの小国だ。
きっと、かつての栄光を取りもどすきっかけにでもしたかったのだろう。
まあ、容赦しないけどね。
俺は、点を設置しておいたフランスのエッフェル塔に瞬間移動すると、点ちゃん1号を出し、その国へと向かった。
政府要人には、すでに点をつけてあるので、その一人から軍事施設の情報をブランが抽出する。
俺は、その国の軍事施設の八割を消しておいた。
人員は消していないけれど、さっそく大騒ぎになったはずだ。
その国の首相には、ホットラインを通じ、向こう十年間の『枯れクズ』販売停止を告げた。
強権政治で知られるその男は、いろいろな条件を提示して、期間の短縮を必死で頼みこんだが、俺は聞きいれなかった。
このことは、有料の「異世界新聞」で世界中に配信される。
他国を出しぬこうとした、この国の立場は台無しだろう。
ちなみに、一月千円/十ドルで購読できる「異世界新聞」は、「異世界通信社」のドル箱になりつつある。
すでに世界中から購読申しこみが殺到しており、その件数は一億を越えそうだ。
ミミが悪い顔で、「異世界でも売りませんか、へへへ」と言っていたが、さすがに通信網がない場所では無理がある。
『エミリー研究所』で二泊した俺は、地球世界に来た本当の目的に取りかかることにした。
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