ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

文字の大きさ
上 下
292 / 607
第八章 地球訪問編

第3話 林先生を守れ

しおりを挟む

「実は、学校でこういう問題が起きていてな……」

 先生がそう言って話してくれたのは、俺にも係わる事柄だった。

 前回、俺が地球を訪れた時、去り際に先生のスマートフォンに、俺、加藤、畑山さん、舞子の四人が映った「写真」をプリクラ風に加工し貼っておいた。

 ある日、先生は、そのスマートフォンを学校に置き忘れて帰宅した。
 誰かからの着信があったらしく、マナーモードで震えているそれを他の先生が手に取った。そして、俺達が映った「プリクラ写真」を見つけてしまった。

 職員会議でそれが問題となったとき、先生は、うっかり、俺達が「地球にいた」時に撮ったものだと主張してしまった。
 単に、「昔、撮った」と言えばよかったのだろうが、先生は俺達の実情を知っているから、口が滑ってしまったのだろう。

 地球にいた→今は地球にいない→すでに死んでいる

 こういう誤解があったようだ。言葉とは恐ろしいものだ。
 すでに、先生は警察からも事情聴取を受け、例のスマートフォンは、証拠物件として押収されてしまったそうだ。
 こういう事情で、林先生はいつ教師をクビになってもおかしくない立場に置かれている。
 今日、受けもちの授業が無かったのも、それが原因らしい。

 俺達四人は、顔を見合わせた。

「どうするべきかしら」

 畑山さんが、深刻な顔をしている。

「そのプリクラもどきには、ボーの点が付いてるんだろ。
 スマホごと消しちまえばいいじゃないか」

 俺もそれは考えたんだが……。

「だからあんたは馬鹿なのよ。
 そうなると、証拠を管理している警察官がクビになるでしょ」

 畑山さんは、さすがだ。

「誰も被害を受けないで、問題を解決しなくちゃいけないんですね」

 舞子が問題をまとめる。

「こういう面倒なこととなると、あんたの出番ね」

 畑山さんが俺の方を見る。 

「解決策が無くはないが、それにはみんなと家族の協力が必要だぞ」

「おう! 
 先生が辞めなくて済むならなんだってやるぞ」

 加藤が言っているように単純にはいくまい。

「もしかして、その方法って……」

 畑山さんが目を大きく見開く。頭のいい彼女なら気づくだろうね。

「ああ、そうだよ、畑山さん。
 俺達のことを公開する」

 場がシーンとする。
 誰もしゃべらない時間が5分は続いた。
 皆、公開した場合に起こることを脳内シュミレートしていたのだろう。

「大変な騒ぎになるな」

 加藤は、呆然とした顔をしている。

「騒ぎになるだけならまだいいんだけどな」

 情報規制がかかったり、下手をしたら俺達の存在そのものを消そうとする動きが出るかもしれない。
 
「とにかく、公開するなら、それぞれの家族全てが賛成してくれるのが条件だ。
 俺達の結論が出るまで、先生は絶対に軽はずみな行動をしないでください。
 これは先生だけの問題ではありませんよ」

 俺が指を鳴らすと、テーブルの上に封筒が現れる。
 そこには、黒々と書かれた「辞表」の二文字があった。

「お前、どうやってそれを!」

 林先生が、封筒に手を伸ばそうとする。

「先生! 
 やめないで」

 舞子が、その手にすがりつく。

「先生が辞めると、私、すごく傷つきます」

 畑山さんは、計算されつくした発言をする。

「やっぱり、先生が辞めるってのは間違ってるな」

 加藤が、珍しくきっぱり言いきる。

「お前らには、敵わないなあ。
 まあ、少しだけ様子を見てみるよ。
 俺は、もう辞めてもいいと思ってるんだがな」

 俺たちは、初めから四人揃って各家族を回る予定だったが、それに重大な案件が加わったことになる。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...