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第七章 天竜国編
第32話 古代竜の学校
しおりを挟むようやく「枯れクズ」除去についての話しあいが終わり、天竜達が天竜国へ帰ることになった。
新店舗のことがあるので、どうするか迷ったが、ルル達のことが心配なので、俺もここで天竜国へ戻ることにした。
俺、ナル、メル、ポル、ミミ、リニアの六人で訪れることにする。もちろん、白猫を忘れてはいけない。
リニアは、「枯れクズ」関係のことで現地を視察する。
新店舗はネアさんがいれば大丈夫だろう。困ったことがあれば、念話するように言ってある。
ドラゴニアと天竜国は、ポータルで隔てられているわけじゃないからね。
天竜たちがそれぞれ竜の姿で飛びかえるようなので、俺たちは瞬間移動を使うことにした。
あらかじめ竜王様に念話しておき、いきなり竜王様の部屋前に瞬間移動する。
ここを初めて訪れるリニアが、目を丸くし、周囲を見まわしている。
俺たちが部屋に入ると、竜王様は、三体の子竜に何か教えているところだった。
竜王様の前で、子竜が体を動かしている。
動きが揃っているところを見ると、竜にとってなにか意味がある動きなのだろう。
ナルとメルが、ルル達の所に駆けていく。
「マンマ、コー姉、リー姉、ただいまー」
「ただいまー」
「「「おかえりー」」」
ルルたち三人が、ナルとメルに抱きつかれる。
お母さんを取られたと思ったのか、子竜達がよちよち近づいてくる。
俺の指示でナルとメルが竜の姿になると、子竜は、ナルとメルの所に寄っていった。竜王様の念話が入ったのだろう、ナルとメル、三体の子竜は、竜王様の前に並ぶ。
五体が、しっぽをふりふり動く様子は、心から癒されるものだった。
ルルが俺の所に来る。
「シロー」
「分かってるよ、ルル。
ナル、メルもそろそろ学校に入れるかな」
俺と母親役三人は、目を細め子竜の踊りを眺めるのだった。
◇
「おお、帰ったのですな」
リーヴァスさんが、手で髪を撫でつけながら「ゆりかご」の部屋から出てくる。その肩には黒猫が乗っている。
子竜と一緒に体を動かしていたナルとメルが人化して駆けていく。
「じーじ、パーパが花火してくれたー」
「じーじ、パーパと美味しいお店に行ったー」
「そうですか。
向こうでは、楽しかったようですな」
リーヴァスさんが目を細める。
「ミミは、みんなに迷惑かけなかったかな」
「リーヴァスさん、聞いてください。
蜂蜜を取りに行って……」
ミミがポルの口を塞ぐ。
「ははは、元気なら、まあよろしい」
俺は竜王様に一声掛けてから、こちらに残っていたパーティメンバーを「ゆりかご」の部屋に呼んだ。
テーブルと椅子を用意し、ドラゴニアであったことを話す。
「シローが、天竜祭の最後にそんなことをねえ」
コリーダは、俺が天竜祭のしめをアドリブで切りぬけたことに感心している。
「メルちゃんが言ってた美味しい店って、私達も連れていってもらえるのよね」
コルナは、美味しい店に興味を持ったようだ。
「エンデさんの気持ちが通じるといいですね」
ルルは、エンデのことが気にかかるようだ。
誰も新装オープンしたポンポコ商会の事には興味がないようだ。そういえば、この三人って、物欲があまりないよね。
『(・ω・) ご主人様も、立派な彼女たちを見習ってください』
いや、俺も物欲は少ない方だとおもうんだけど……。
『(・ω・)ノ ご主人様は、物欲よりもっと危険な欲がありますからねー』
え? くつろぎ欲って、そんなに危険かね。
『(´ー`*) ご主人様を見てると、危険以外のなにものでもありませんね』
くう、そうはいっても、ベンベン、はっ、やめられねえ~。
『(・ω・)つ ほら、だから危険なんですよー』
……。
俺と点ちゃんが馬鹿話をしていると、戸口からリニアが入ってきた。嬉しいような、当惑したような、何ともいえない顔をしている。
驚いたことに、彼女には右手があった。
「あれ?
リニア、その手……」
「竜王様が、天竜様を手伝ってもらうのに必要だからと……」
「凄いね、竜王様からのプレゼントだ」
俺がからかうと、彼女は赤くなった。俺も肩の荷が一つ降りたような気がした。
後で竜王様に尋ねると、竜と竜人にだけに効果がある治癒魔術によるらしい。
これから子竜達が増えると、怪我をするものも出てくるだろうから、竜王様がそういった魔術を使えるのは当然だね。
こうして、天竜国帰還後、数日は穏やかに過ぎていった。
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