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番外編
結婚準備1
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とある辺境伯の屋敷の一室。
そこに、四人の男が頭を突き合わせて考えていた。
……否、正確には主に三人の男である。
「やっぱり、白は一着決定として何着かカラフルなのも欲しいよね!」
一人は四人の中で2番目に小柄なこの男。優しげな桃色の髪をお団子にくくっていて、先程からぽんぽんと新しい案を出している。
「…確かに、ルイスなら何色でも合いそうだ。」
次にこの男。一番ガタイの良いこの男は、一目見ればか弱い者なら震え上がる容姿である。それとは反対に先程から『ルイスなら何でも似合う』しか言っていない。
「ではまず、白の一着について詳細を決めて参りましょう。」
そしてこの男。男と言うには少々年齢が高いが、しっかりと伸びた背筋で実年齢より若く見える。燕尾服を身に纏ったこの男が、先程から意見を纏めて話を進めている。
最後に、
「…………。」
既に無言でどうにでもなれ、と言うような雰囲気を発しているこの男。此方は男と言うより、少年と言っても差し支えないくらいに幼く見える。
つい十分程前に、『俺のよりラインハルトの服の方が大事じゃないか?』と言った瞬間に全員から反論されたためずっと黙っている。
そんな四人の男達が話している事はといえば、結婚式の衣装についてである。
…実際に着るであろう当事者は既に虚無っているが。
その当事者を真横に、いそいそと意見を纏める紙を机に出す燕尾服の男こと、ファーリー。
「あ、そうだラインハルト、あれ買いに行ったの?」
その間暇になった用で自身の弟と雑談に持ち込む桃色の男、クリストファー。
「……あ、」
兄からの問いに、たった今思い出したかの様に一音だけ発する『ルイスなら何でも似合う』しか言わない男ラインハルト。
「忘れてたの……!!」
「…あれってなんですか?」
絶句するクリストファーと、何の話かわかっていない先程から論外にされている男ルイス。
「結婚式で一番大事なアクセサリーだよ…!!結婚式の衣装が真っ白か真っ黒なのは、アクセサリーだけを相手の色にしてその他の奴は有象無象って意味にするためなの…!!」
ふんすふんすと両手を上下に振るクリストファー。
へぇ……、とどこか他人事の様にぼやっとしてるルイス。
一般的な反応はクリストファーの方が正しい。
なにせ一生に一度の結婚式である。そこで『貴方以上に好きな人は居ません』と意味するアクセサリーを忘れるなど、『これから浮気します、貴方には興味がないです』と言っている様なものである。なお、そのアクセサリーの存在自体を知らなかった者はこれに入らない。本当に論外である。
「……やってしまった……。さいあくだ……。」
一方で此方、いつの間にか部屋の端に移動しきのこを栽培しだしたラインハルト。じめ~…、っとした空気を纏いながら三角座りで落ち込む。此方も一般的な反応である。
なにせ、最愛の人との結婚式で二番目に大事な物を忘れていたのである。勿論一番は最愛の人自身だ。
不誠実だ、大嫌いと張り倒されても文句の言えないこの状況、最近やっと少し緊張するだけで手を繋げる様になった男には辛い。
じめじめしたラインハルトを見たラインハルトの最愛は、実に軽い足取りで傍に行く。
ラインハルトと目を合わせる様にしゃがみ、ラインハルトを覗き込むルイスの心境といえば、特に気にしてないけどラインハルトが落ち込んでるから慰めよう、である。
「……ラインハルト、忘れていたのは俺もだ。そもそも存在すら知らなかった俺も悪い。
だから、一緒に買いに行こう。まだ日も高いから店も開いてる。」
「……ありがとう、ルイス。」
ルイスに手を貸してもらって立ち上がるラインハルト。全く人騒がせなバカップルである。
よかったねぇ、と思いながら店を紹介しだすクリストファーは、ラインハルト好い人見つけたねとしか思っていない。
「そうと決まれば、早速行こ~!!」
ほぼ話を仕切っているのはクリストファーであった。あとファーリー。当事者二人が仕切っていない事には突っ込んではいけない。
所変わって。
ここは大通りに店舗を構えるとあるアクセサリーショップである。
特徴といえば、アクセサリーの中でもウエディング用の物を中心に扱っていることだろうか。
そこに入ってきた客人は三人。
年齢もほぼ一緒の者達が来るのは、少々珍しい。ウエディング用を買いに来る客は大体二人である。恋人同士で来るので。
「いらっしゃいませ。」
しかし疑問は顔に出さずに対応する店員。クリストファーが紹介してきただけはある。
一度買い物をしたことのあるクリストファーは、慣れたように店員に話しかける。
「ウエディング用のアクセサリーを買いに来たんだけど、練習させてもらえる?」
「はい。少々お待ちを。」
対する店員は、二十代程の眼鏡をかけた女性で、伸びた背筋といい、一寸の乱れも許さないという風に括られた髪の毛といい、きっちりとした雰囲気の人である。
「…練習ってなんですか?」
店員が奥へ引っ込んだ隙にそう聞くルイス。
「ああ、ルイス君は魔力を流すとその人の髪色に変わる鉱石を知ってる?
その人の髪色に近い鉱石を探すよりも、その鉱石を使った方が色が近くなるから、ウエディング用では人気なんだよ。」
スラスラと説明するクリストファー。流石嫁の居る既婚者である。自身の結婚式の為に調べた情報が今でも役にたっている。
「そうなんですね。」
何も知らないルイスはもう少し調べた方が良い。ラインハルトは知っていても偶にうっかりで忘れる。
「ちなみに、自分の魔力を流すから、何かあったら相手を守ってくれますように、っていう願いもあるらしいね。
まあ、染めるのにも魔力がちょっと多めに要るし、魔力制御が難しいから大体の人は自分の色に近い鉱石を探すんだけどね。」
「……ちょっとづつとか、何ヶ月か掛けて染める、とかは大丈夫ですか?」
ルイス、魔力量には自信が無い。それでも自身の色を好きな人に着けてもらいたい、とは思うので打開策を考えた。
「大丈夫だと思うよ?俺の知り合いも何人かそうやって染めた人居るし。」
そう答えるクリストファーに、希望を見つけたルイス。
それにしても、クリストファーは本当に知り合いの多い男である。
「お持ちしました。」
「で、ここはその鉱石を染める練習を無料でさせてくれるお店なんだ。ありがとうね。」
丁度良く出てきた店員の手には、1センチ無いだろう小ささの石の欠片が。
「いえ。此方は加工の際に出た切れ端でして、売るのには少々使えない品質ですので。」
その店員の言葉にまじまじとルイスは欠片を見るが、どこから見ても綺麗な破片で、売り物に出来ないと言ったら大きさ位だろうか、としかわからなかった。素人なので。
「はい、ラインハルトも一回練習しときなよ。ルイス君もどうぞ。」
「有難うございます。」
「……ありがとう、兄さん。」
クリストファーが空気の様になっていたラインハルトにも声をかけ、二人して練習を始める。勿論店の端に移動してである。カウンター前でやると邪魔になるので。
「…あっ…。」
早速ラインハルトがやらかした。
手のひらにはどす黒く染まった鉱石が。ほんのり赤みを帯びた黒は、どこか禍々しい。
魔力の入れ過ぎである。
「……おぉ…!」
そして次にルイス。感嘆の声を出しているが、鉱石は薄っすらと染まっているだけ。本人が染まった事に驚いて声を出しただけである。
「わぁ、正反対だぁ…。」
一人遠い目をするクリストファーは取り敢えずもう一回鉱石貰ってこようかなと思った。ラインハルト用に。
「……すまないが、もう一度練習していいだろうか。」
「……どうぞ。」
クリストファーは感激した。人付き合いの苦手なラインハルトが自ら話しかけに行っている。気分は初めておつかいに行った子供を見守る親である。
未だに鉱石と格闘しているのルイスの横に戻って来たラインハルトは、今度は極々弱く魔力を流しだす。
「「……っよし…!」」
そして二人同時に出来上がった。
まずラインハルト。
「おぉ…!ラインハルトの色そっくりだ…!」
先程よりも少しだけ赤みが増し、深い赤色になった。ルイスがラインハルトの色だと言う通りに、ラインハルトの髪色そっくりの出来である。
クリストファーは一般的に美しい出来かどうかは別としてルイス(義弟)が喜んでいるようなので無言を貫いた。
そしてルイス。
「……ルイスだな。」
「…きれいだねー!」
鮮やかな緑と赤のグラデーションがかかった鉱石である。ラインハルトがルイスだ、と言う通り、全くもって完璧にルイスの色である。
クリストファーは二人共が何より先に、相手の色だ、としか言わないのでラブラブだなぁ、と思いながらやけくそ気味にきれいだと言っておいた。一応本心である。
どちらともが自身の色にするのに必死な所を見るに、本当に相思相愛というか、愛が強い。
その後、それぞれ二人で相手に指輪を買ったラインハルトとルイスであった。
ラインハルトは剣を持つ時に傷つかないよう、ルイスはもし獣化しても大丈夫な用にネックレスの鎖だけ買った。
指輪をつけない時はネックレスにしてつけておく気満々である。
ちなみに、それぞれ結構な値段だったと言っておこう。ラインハルトはともかく、ルイスは最近冒険者ギルドなる所でランクを上げ、上級の依頼をこなして稼いでいるらしい。
なおこの1年で身長は少しだけ伸びたルイス。あの後ドレーシア家で礼儀作法も教わっているのでどこに出しても恥ずかしくない公爵令息である。
本人はいたってラインハルトの横に立つためと頑張った結果だが、今では少し立場が逆転していることは気づいていない。気づいても多分気にしないので終わりである。
そんなはたから見れば格差のあるなんで付き合ってるのかわからない二人は、帰り道に仲良く手を繋いで微笑み合うのであった。
おまけ
ルイス達が帰った後のアクセサリーショップ。
「………あなた、よく顔色も変えずに接客できたわね。」
店の奥から出てきた別の店員が、眼鏡の女性、カミーアに声をかける。
訝しげに同僚を見やるカミーアは、お客様への対応は今のが普通だろうと言いたげた。
「いや別に容姿の方じゃないわよっ!いや容姿の方も怖いけど!あの魔力!膨大な魔力過ぎて怖いのよっ!」
同僚、多めに魔力のあるタイプの男であった。なのでラインハルトの魔力を感知出来てしまったようである。
「……私、魔力少ないので感じませんでした。」
「えっ?ああ、俺も宮廷魔法師とかより低いけど…、あの人が魔力デカすぎたのかな…。それでも、あの容姿相手にピクリとも表情動かさないなんて凄いね。」
この同僚、別に容姿を貶している訳では無い。美人でも不細工でも、鳥でも熊でも、びっくりする客が来たらびっくりしない?と聞いてるだけである。
「……私、絵付きの本で慣れてるので。」
カミーアはホラー好きのオタクでだった。
遠回しにラインハルトがホラーじみているということは置いておこう。
そこに、四人の男が頭を突き合わせて考えていた。
……否、正確には主に三人の男である。
「やっぱり、白は一着決定として何着かカラフルなのも欲しいよね!」
一人は四人の中で2番目に小柄なこの男。優しげな桃色の髪をお団子にくくっていて、先程からぽんぽんと新しい案を出している。
「…確かに、ルイスなら何色でも合いそうだ。」
次にこの男。一番ガタイの良いこの男は、一目見ればか弱い者なら震え上がる容姿である。それとは反対に先程から『ルイスなら何でも似合う』しか言っていない。
「ではまず、白の一着について詳細を決めて参りましょう。」
そしてこの男。男と言うには少々年齢が高いが、しっかりと伸びた背筋で実年齢より若く見える。燕尾服を身に纏ったこの男が、先程から意見を纏めて話を進めている。
最後に、
「…………。」
既に無言でどうにでもなれ、と言うような雰囲気を発しているこの男。此方は男と言うより、少年と言っても差し支えないくらいに幼く見える。
つい十分程前に、『俺のよりラインハルトの服の方が大事じゃないか?』と言った瞬間に全員から反論されたためずっと黙っている。
そんな四人の男達が話している事はといえば、結婚式の衣装についてである。
…実際に着るであろう当事者は既に虚無っているが。
その当事者を真横に、いそいそと意見を纏める紙を机に出す燕尾服の男こと、ファーリー。
「あ、そうだラインハルト、あれ買いに行ったの?」
その間暇になった用で自身の弟と雑談に持ち込む桃色の男、クリストファー。
「……あ、」
兄からの問いに、たった今思い出したかの様に一音だけ発する『ルイスなら何でも似合う』しか言わない男ラインハルト。
「忘れてたの……!!」
「…あれってなんですか?」
絶句するクリストファーと、何の話かわかっていない先程から論外にされている男ルイス。
「結婚式で一番大事なアクセサリーだよ…!!結婚式の衣装が真っ白か真っ黒なのは、アクセサリーだけを相手の色にしてその他の奴は有象無象って意味にするためなの…!!」
ふんすふんすと両手を上下に振るクリストファー。
へぇ……、とどこか他人事の様にぼやっとしてるルイス。
一般的な反応はクリストファーの方が正しい。
なにせ一生に一度の結婚式である。そこで『貴方以上に好きな人は居ません』と意味するアクセサリーを忘れるなど、『これから浮気します、貴方には興味がないです』と言っている様なものである。なお、そのアクセサリーの存在自体を知らなかった者はこれに入らない。本当に論外である。
「……やってしまった……。さいあくだ……。」
一方で此方、いつの間にか部屋の端に移動しきのこを栽培しだしたラインハルト。じめ~…、っとした空気を纏いながら三角座りで落ち込む。此方も一般的な反応である。
なにせ、最愛の人との結婚式で二番目に大事な物を忘れていたのである。勿論一番は最愛の人自身だ。
不誠実だ、大嫌いと張り倒されても文句の言えないこの状況、最近やっと少し緊張するだけで手を繋げる様になった男には辛い。
じめじめしたラインハルトを見たラインハルトの最愛は、実に軽い足取りで傍に行く。
ラインハルトと目を合わせる様にしゃがみ、ラインハルトを覗き込むルイスの心境といえば、特に気にしてないけどラインハルトが落ち込んでるから慰めよう、である。
「……ラインハルト、忘れていたのは俺もだ。そもそも存在すら知らなかった俺も悪い。
だから、一緒に買いに行こう。まだ日も高いから店も開いてる。」
「……ありがとう、ルイス。」
ルイスに手を貸してもらって立ち上がるラインハルト。全く人騒がせなバカップルである。
よかったねぇ、と思いながら店を紹介しだすクリストファーは、ラインハルト好い人見つけたねとしか思っていない。
「そうと決まれば、早速行こ~!!」
ほぼ話を仕切っているのはクリストファーであった。あとファーリー。当事者二人が仕切っていない事には突っ込んではいけない。
所変わって。
ここは大通りに店舗を構えるとあるアクセサリーショップである。
特徴といえば、アクセサリーの中でもウエディング用の物を中心に扱っていることだろうか。
そこに入ってきた客人は三人。
年齢もほぼ一緒の者達が来るのは、少々珍しい。ウエディング用を買いに来る客は大体二人である。恋人同士で来るので。
「いらっしゃいませ。」
しかし疑問は顔に出さずに対応する店員。クリストファーが紹介してきただけはある。
一度買い物をしたことのあるクリストファーは、慣れたように店員に話しかける。
「ウエディング用のアクセサリーを買いに来たんだけど、練習させてもらえる?」
「はい。少々お待ちを。」
対する店員は、二十代程の眼鏡をかけた女性で、伸びた背筋といい、一寸の乱れも許さないという風に括られた髪の毛といい、きっちりとした雰囲気の人である。
「…練習ってなんですか?」
店員が奥へ引っ込んだ隙にそう聞くルイス。
「ああ、ルイス君は魔力を流すとその人の髪色に変わる鉱石を知ってる?
その人の髪色に近い鉱石を探すよりも、その鉱石を使った方が色が近くなるから、ウエディング用では人気なんだよ。」
スラスラと説明するクリストファー。流石嫁の居る既婚者である。自身の結婚式の為に調べた情報が今でも役にたっている。
「そうなんですね。」
何も知らないルイスはもう少し調べた方が良い。ラインハルトは知っていても偶にうっかりで忘れる。
「ちなみに、自分の魔力を流すから、何かあったら相手を守ってくれますように、っていう願いもあるらしいね。
まあ、染めるのにも魔力がちょっと多めに要るし、魔力制御が難しいから大体の人は自分の色に近い鉱石を探すんだけどね。」
「……ちょっとづつとか、何ヶ月か掛けて染める、とかは大丈夫ですか?」
ルイス、魔力量には自信が無い。それでも自身の色を好きな人に着けてもらいたい、とは思うので打開策を考えた。
「大丈夫だと思うよ?俺の知り合いも何人かそうやって染めた人居るし。」
そう答えるクリストファーに、希望を見つけたルイス。
それにしても、クリストファーは本当に知り合いの多い男である。
「お持ちしました。」
「で、ここはその鉱石を染める練習を無料でさせてくれるお店なんだ。ありがとうね。」
丁度良く出てきた店員の手には、1センチ無いだろう小ささの石の欠片が。
「いえ。此方は加工の際に出た切れ端でして、売るのには少々使えない品質ですので。」
その店員の言葉にまじまじとルイスは欠片を見るが、どこから見ても綺麗な破片で、売り物に出来ないと言ったら大きさ位だろうか、としかわからなかった。素人なので。
「はい、ラインハルトも一回練習しときなよ。ルイス君もどうぞ。」
「有難うございます。」
「……ありがとう、兄さん。」
クリストファーが空気の様になっていたラインハルトにも声をかけ、二人して練習を始める。勿論店の端に移動してである。カウンター前でやると邪魔になるので。
「…あっ…。」
早速ラインハルトがやらかした。
手のひらにはどす黒く染まった鉱石が。ほんのり赤みを帯びた黒は、どこか禍々しい。
魔力の入れ過ぎである。
「……おぉ…!」
そして次にルイス。感嘆の声を出しているが、鉱石は薄っすらと染まっているだけ。本人が染まった事に驚いて声を出しただけである。
「わぁ、正反対だぁ…。」
一人遠い目をするクリストファーは取り敢えずもう一回鉱石貰ってこようかなと思った。ラインハルト用に。
「……すまないが、もう一度練習していいだろうか。」
「……どうぞ。」
クリストファーは感激した。人付き合いの苦手なラインハルトが自ら話しかけに行っている。気分は初めておつかいに行った子供を見守る親である。
未だに鉱石と格闘しているのルイスの横に戻って来たラインハルトは、今度は極々弱く魔力を流しだす。
「「……っよし…!」」
そして二人同時に出来上がった。
まずラインハルト。
「おぉ…!ラインハルトの色そっくりだ…!」
先程よりも少しだけ赤みが増し、深い赤色になった。ルイスがラインハルトの色だと言う通りに、ラインハルトの髪色そっくりの出来である。
クリストファーは一般的に美しい出来かどうかは別としてルイス(義弟)が喜んでいるようなので無言を貫いた。
そしてルイス。
「……ルイスだな。」
「…きれいだねー!」
鮮やかな緑と赤のグラデーションがかかった鉱石である。ラインハルトがルイスだ、と言う通り、全くもって完璧にルイスの色である。
クリストファーは二人共が何より先に、相手の色だ、としか言わないのでラブラブだなぁ、と思いながらやけくそ気味にきれいだと言っておいた。一応本心である。
どちらともが自身の色にするのに必死な所を見るに、本当に相思相愛というか、愛が強い。
その後、それぞれ二人で相手に指輪を買ったラインハルトとルイスであった。
ラインハルトは剣を持つ時に傷つかないよう、ルイスはもし獣化しても大丈夫な用にネックレスの鎖だけ買った。
指輪をつけない時はネックレスにしてつけておく気満々である。
ちなみに、それぞれ結構な値段だったと言っておこう。ラインハルトはともかく、ルイスは最近冒険者ギルドなる所でランクを上げ、上級の依頼をこなして稼いでいるらしい。
なおこの1年で身長は少しだけ伸びたルイス。あの後ドレーシア家で礼儀作法も教わっているのでどこに出しても恥ずかしくない公爵令息である。
本人はいたってラインハルトの横に立つためと頑張った結果だが、今では少し立場が逆転していることは気づいていない。気づいても多分気にしないので終わりである。
そんなはたから見れば格差のあるなんで付き合ってるのかわからない二人は、帰り道に仲良く手を繋いで微笑み合うのであった。
おまけ
ルイス達が帰った後のアクセサリーショップ。
「………あなた、よく顔色も変えずに接客できたわね。」
店の奥から出てきた別の店員が、眼鏡の女性、カミーアに声をかける。
訝しげに同僚を見やるカミーアは、お客様への対応は今のが普通だろうと言いたげた。
「いや別に容姿の方じゃないわよっ!いや容姿の方も怖いけど!あの魔力!膨大な魔力過ぎて怖いのよっ!」
同僚、多めに魔力のあるタイプの男であった。なのでラインハルトの魔力を感知出来てしまったようである。
「……私、魔力少ないので感じませんでした。」
「えっ?ああ、俺も宮廷魔法師とかより低いけど…、あの人が魔力デカすぎたのかな…。それでも、あの容姿相手にピクリとも表情動かさないなんて凄いね。」
この同僚、別に容姿を貶している訳では無い。美人でも不細工でも、鳥でも熊でも、びっくりする客が来たらびっくりしない?と聞いてるだけである。
「……私、絵付きの本で慣れてるので。」
カミーアはホラー好きのオタクでだった。
遠回しにラインハルトがホラーじみているということは置いておこう。
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