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第二章

墓参り ルイス視点

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「ありがとうございます。ここまで連れてきてくれて。」
「………いいや、礼を言われる程の事ではない。」
 どこか変な方向に顔を向けているラインハルトが話す。
 _____俺達は、墓参りに来ていた。
 フェンリルの母さんの墓である。
 花畑から少し離れた所にあるそこは、目印なんて何も無い。
 そこに、予め買っておいた花束を置いた。……包装紙は取っておいたほうがいいだろうな。母さんも要らないって言いそうだし。
 そもそも花も要らないって言いそうだけど、そこは俺の気持ちである。
 ……今の俺は人間だけど、俺ってわかるのかな。
 まあ、わからなくてもいいか。俺の自己満足だし。
 前に供えた花は、もう何処かへ消えていた。風に飛ばされたか、枯れてしまったか。
 
 特になにか起こるでもなく、墓参りを終え俺達は帰路についた。
 あの俺が居た森は、とても危険な場所らしく、許可を得た人間しか入る事が出来ないらしい。もしくは、許可を得た人間を護衛として連れて行くしか無いのだとか。
 その許可を貰うにも、色々と試験があるらしく、時間が掛かるとか。
 そこでクリストファーさんに提案されたのが、ラインハルトと一緒に行く事である。ラインハルトは許可を持っているらしい。
 迷惑じゃないかとも思ったんだが、JK並にキャピキャピしたテンションのクリストファーさんがどんどんと話を進め、ラインハルトの了承もやや強引に取り、二人で行く事が決まった。
 その時の会話がこれである。
『ラインハルトー!!』
『…っ!!何兄さっ……、ルイスっ!?』
『ルイスくんが森に行きたいんだって~!!付き添いで行くよね?』
『え、あ、っへ?』
『良いって~!!』
 以上である。
 ……本当に俺に付き添ってもらってよかったのかラインハルト……。
 やっぱり明後日の方向を向いたままのラインハルトを見ながら思う。
「……すいません。仕事も有っただろうに付き添っていただいてしまって、ご迷惑をお掛けします。」
 つい、謝罪が口から出た。紛れもない本心だ。
 多分、ラインハルトは寝不足になるくらい忙しいのに、また時間を削ってしまって本当に申し訳ない。
「えっ、えと……ほ、本当に気にしないでくれ。仕事は大丈夫だし、こ、此処らの見回りも立派な仕事になる。」
 …………やっぱりラインハルトはいい奴だな。
「……お気遣い、ありがとうございます。」
 俺の言葉を最後に、会話は止まってしまった。
「………………。」
「………………。」
 二人して無言のまま、花畑を歩く。実にシュールだ。
 ちらり、とラインハルトへ目線を向ければ、ラインハルトも此方を見ていたようでバッチリ目があった。
「……っ!」
 驚いた様にびくっとしたラインハルトは、直ぐに目線を逸らしてしまった。
 丁度30センチ弱ほどの身長差で、下からラインハルトの顔が見える俺。しっかりとラインハルトの赤くなった耳も見えるぞ。
 知らず、にまぁ、と口角が上がった。
 スススっ……
 ラインハルトの視界に入るように場所を移動する。
「……っ!?!?」
 ラインハルトの真っ赤な顔が見えたが、またもや目が逸らされる。……物凄い勢いで首を動かしているため、少々首をやらないか心配である。
 ま、それはそれとして。
 スススっ…。
 また移動。
「……~~~っ!!!???」
 更に顔を赤くして後退るラインハルト。
 俺の気分は完全に獲物を見つけてしまった猫ちゃんだ。
 暫くそれを続けていれば、ラインハルトは両手で顔を覆ってしゃがみこんでしまった。顔どころか首まで赤くなっているのがしゃがんだお陰でよく見える。
 ……ちょっと悪戯が過ぎたかもしれない……。
 俺もしゃがんでラインハルトを覗き込みながら思う。
 ……ラインハルトってコミュ障というか、引っ込み思案なんだなぁ。
 やっぱり慣れていない姿形だから、緊張するだろうか。赤面症の人も居るのだし、悪い事をしてしまったのかもしれない。
 ……嫌われては無いよな……?
 なんか、好きな子にちょっかいをかける小学生男子みたいなことしてないか俺。…否めないな……、どうしよう。
「……………。」
 でも………、赤くなってるラインハルト、可愛いな。
 大変だ、俺はちょっとSっ気があるのかもしれない。
 いや、別に可哀相なラインハルトが見たい訳じゃないし……。……ラインハルトの照れ顔が好きなのか?
「…………すみません。悪戯が過ぎました。」
「……………ほんとうに、心臓にわるいからやめてくれ………。」
「______可愛すぎるから……。」
 ……あの……、小声で言ってるところすまん……。俺耳良いから全部聞こえる……。
「……っ~~~~………!!」
 可愛いのはどっちだっっ……!!
 寸でのところで叫ぶのは堪えたが、トキメキが止まらない。
 可愛い、出来るならば今すぐ抱きつきたい。そんな欲望もでてくる。
 可愛すぎるってなんだ、周りの花の事か!?ラインハルトのことか!?
 ま、まさか俺では無いよな!!?お、おおれだとしたら身長か!?身長が小さくて可愛いってことか!?
「……っ!!……か、帰りましょぅ!!ふ、ファーリーさんたちも待ってますよ…!!」
 盛大に動揺した末、俺はそう叫んだ。
「そ、そうしたいのは山々なんだが……!!い、今物凄く情けない顔をしていてだな……!!」
 もにょもにょ、と言うにはでかい声で動けないでいるラインハルト。
「な、なら俺が手を引くんで顔隠しててください!!」 
「え、は、ルイスぅ!?」
 後ろで困惑するラインハルトの声が聞こえるが、俺だって今見せられない顔してるんだ。
 ラインハルトと手を繋ぎながら走る。
 手を引っ張れるほど強くは手を握っていないが、手が離れる事は無かった。


 ラインハルト視点
 俺を引っ張るルイスの背中が見える。  
 顔が熱い。握っている手が熱い。何なら心臓も熱い。
 痛いほどになる心臓を宥めるにも、ルイスから伝わって来るこれまた速い鼓動と、目に映るルイスの赤い耳が、また鼓動を早める。
 引っ張られるほどの力は入っていなかったが、手を離す気にはならなかった。
 寧ろ、いつまでも繋いでいたいと思った俺は、気づかれない様に、少しだけ手に力を入れた。
 _____ルイスも、俺と同じように、痛いほど心臓が鳴っていたりするだろうか。

 ラインハルト視点終了



 _____元気そうで何よりだぞ。鮮やかな赤いの。
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