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第二章
買い出し〜恋話を添えて〜 ルイス視点
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「る、ルイスさん……!魔力測定、ど、どうだった?」
魔力測定を終え、エミリーさんと合流した。
「可もなく不可もなく、って感じだった。属性は水らしい。」
「み、水…!!お、掃除に使えそうで素敵な属性だね……!!」
きらきらと目を輝かせるエミリーさん。ほんとに掃除が好きなんだな……。
「エミリーさんの属性は聞いてもいいか?」
「わ、私は、火、だよ。あんまり、お、お掃除には使えないんだけど…、結構気に入ってるの…!」
た、確かに掃除には使いにくいだろうが……、判断基準はそこなんだな……。
「格好良くていいな…、水も悪くないんだが、イマイチ具体的な使い道が思いつかなくてな……。」
いいなぁ、属性火。暗いところでも灯りいらずになるし、火種がなくても野宿しやすそうだ。
「え、えと、水、なら、グレイもそうだったから……、グレイに聞いてみると、いいかも……?」
言っている途中で、俺に対するグレイの反応を思い出したのか、段々と声が小さくなっていくエミリーさん。
………聞けるかな……。
「……!!で、でも、ま、魔力測定ででる属性は、と、得意属性って言って…、えと、その属性しか、使えないわけじゃないから……、い、一度他のも、使ってみるといいと思うよ……!火だったら私もおしえりるし…!」
……噛んだな、エミリーさん。というか、他の属性も使えないわけじゃないんだな。
「…ありがとう、取り敢えず色々と試してみる。」
「…ううん、大丈夫だよ……!と、ところで、お昼ご飯なんだけどね、えと…、」
!もうそんな時間か、何食べよう。
もじもじと何か言おうとして居るエミリーさん。何か食べたいものでもあるんだろうか?
「こ、この近くで、お祭りが、あって…、その…、屋台とかで、ご飯もあるし……、えと、えと……、」
おそらく行きたいんだろうな、祭り。これ、吃っているが、俺から聞いたほうがいいだろうか、喋り終わるまで待つか?
「……い、一緒にお祭り、い、行きませんか……!!」
お、おぉ……、最後まで言えたな、エミリーさん。敬語に戻っちゃったけど。
「よし行こう。楽しそうだな。」
「う、うん!こ、こっちだよ……!」
うきうきと、俺を引っ張るエミリーさんが妹のようでとてもかわいい。……身長は俺よりでかいが。
身長の差にスン、となりながら、俺達はお祭り会場についた。
前世は何度か行った覚えのある祭りだが、今世は行った事がない。
活気のある楽しそうな雰囲気は前世の祭りとよく似ている。
「私、お友達とお祭りに来るの、初めてなんだ、!で、でも、来たことはあるから…、あ、案内は任せて…!!」
と、友達…!そうだな、友達だ…!!
「よろしく頼む…!」
思い返せば、俺も今世では同年代の友達は初めてかもしれない!!教会の兄妹たちは、まあ、兄妹だし、知り合いは全員、十歳ほど年上だ。
久しぶりの友達に感動しながら、俺は祭りを楽しんだ。
「、この串焼き美味しい!」
「このコーン焼きも美味いぞ。」
「え、え、魔力射的があるよ……!!」
「あれなんの店だ……?」
たっっっっのしいな……!!祭り!!!
「たのしいね……!!」
思わず声に出ていたらしく、思い切り同意された。
祭りを楽しんでいる間に、エミリーさんはあまり吃らなくなっていて、随分仲良くなれたと思う。
「あ、スースー釣りがあるよ!」
「スースーすくい……?」
ヨーヨーすくいじゃないのか?
あれあれ、と指さされた先には木の枠に水をためて、カラフルな丸い球体の浮かぶ、本当にヨーヨーすくいにしか見えない屋台である。
「おっ!嬢ちゃん達チャレンジするかい!?一本100フィリンだよ!」
気の良さそうな店主が、俺達に声をかけてきた。
ヨーヨーすくいと同じく、釣り糸の様なものを買うらしい。
「えと、えと……、あ、や、やります…!!い、一本ください…!!」
知らない人に話し掛けられ、エミリーさんの吃りが復活した。そのまま押しに負けたのか、一本買ってしまうエミリーさん。
「あいよ!お前さんはどうする?」
「俺はやめとくよ。」
「そうかい、やりたくなったらいつでも言いな!」
俺は辞めておくことにした。まあ、お手伝いとかでためた貯金はあるが、とくに欲しいわけではないからな。
「す、スースーはね、時間がたって乾くと、綺麗な球体のまま固まるんだ…!部屋に置いたり、誰かに送ったりとか、色々出来るし……。す、好きな人とかに、自分の髪色のものを贈ったりとかも……。」
へぇ…、そうなのか、確かに今世の人達の髪色はカラフルだしな……。
エミリーさんの甘栗色をした髪を見ながら思う。…エミリーさんはまだ日本でも居そうなカラーリングだな。
押しに負けたのかと思っていたエミリーさんは、欲しいデザインのスースーがあったらしい。あの一瞬で見つけたのか…。
「ほい、嬢ちゃん、一本な。」
「あ、ありがとうございます…!」
買った糸を持ち、先端についている釣り針を早速水につけていくエミリーさん。
他のものより少し小さめで、パステルカラーの水色っぽいスースーを狙っているようだ。
「……!!」
あ、切れた……。
スッと上に持ち上げた瞬間、プチッと糸が切れてしまった。呆然と糸の切れたところを見るエミリーさん。
「…………、もう、一本ください……。」
「あ、あいよ……。」
いざもう一度。一本また買ったエミリーさんの気迫が最初と全然ちがう……!
が、頑張れ……!
しかし無常にも……。
プツっ……。
「……………も、もう一本…ください……。」
「…あいよ……。」
エミリーさん……!!どれだけ欲しいんだ……!
見かねたのか、店主も取りやすいようにスースーを動かしてくれている。
だがしかし……!!店主、そっちじゃないぞ……!!
店主が取りやすいようにしているのは、隣の赤いスースー。しかしエミリーさんが取りたいのは水色のスースーだ。
しかもエミリーさんは店主が動かしているのをわかっていない。
もう糸は6本目。未だ取れない水色のスースー。
またも無情に切れる糸。半泣きのエミリーさん。
「……店主、俺にも一本くれ。」
「…あいよ。」
……い、一本だけだ。
スッと、水色のスースーから出ている輪っかに、釣り針を合わせる。
そっと、そっとだ……。
横には、俺が釣り始めたからか、今は釣っていないエミリーさんがじっと息を詰めている。
店主もどこか緊張した面持ちで見守ってくれていて、祭り中とは思えない緊張感だ。
「………、………!!…と、とれた………!」
「2個も取るとは、やるなぁあんちゃん!!ほれ、このついてる紐は引っ張ったら取れっからな!」
取れたスースーを店主から貰う。
ぽよん、と手のひらで少し跳ねた。
……2個も、取れてしまった。
片手には、お目当ての水色のスースー。もう片手には、赤色のスースー。
「はい、エミリーさん。」
ま、取り敢えず、水色のほうはエミリーさんに上げよう。
「おいおい、あんちゃん、そりゃあないぞ……。」
何故か店主から非難の目で見られた。
「あ、ありがとう…!!」
なんだ、エミリーさんは喜んでるだろう。
「それでいいのか嬢ちゃん……。」
微妙な顔の店主にの屋台から離れ、二人してスースーをぽよぽよしながら並んで歩く。
「る、ルイスさん、本当にありがとう…!!」
「いや、俺もやってみたくなっただけだ。気にしないでくれ。」
「そ、そっか。」
嬉しそうにスースーをぽよぽよするエミリーさんを眺めながら、なんとなしに既視感を抱いた。
……水色…、パステルカラー……。
「……グレイ?」
「!!???」
思い当たった人物の名前を呟けば、大袈裟なほど全身が跳ねるエミリーさん。
「な、な、なん、…、??」
「グレイっぽい色だなって……。」
動揺しまくりのエミリーさんに正直に告げる。
一度グレイっぽいと思うと、もうその色にしか見えなくなる。
「あ、あぅ……、そ、そういうのじゃ、なく、なくて……、いや違くて、えと、そうなんだけど、」
エミリーさんは噛みまくりながらも、何かを弁解しようとする。
……も、申し訳ないことしたかな……。普通に良い色だと思って取ろうとしてたのかな……。
「ご、ごめんな、変なこと言って……。い、良い色だもんな、き、綺麗で……。」
「わ、わかる!?」
お、おう……。急に身を乗り出してくるなぁ……。
エミリーさんは我が意を得たりと言う風に、バッとこちらを向いた。
「い、いつもハキハキしてて、お庭も綺麗にしてくれてるし、」
それグレイじゃないか?
「か、髪は短いけど、いつも元気そうで、イキイキしてるし、」
グレイだな。
「く、口は悪いけど優しいし……。」
エミリーさん限定だと思うぞ。
「あ、ご、ごめん、私だけ喋っちゃって……。」
「大丈夫だ。」
むしろ面白いぞ。最終的にエミリーさんはグレイが好きってことでいいだろうか。
「る、ルイスさんは?こ、恋人とか、す、好きな人とか、いるの?」
…………、そうきたか。
う、うぅ~…、こ、これ、話さないとだめか…?
「ぜ、絶対秘密にするよ……!そ、それに、私だけ好きな人バレたみたいだし、ず、ずるいよ…!」
ゔっ………。は、白状するしかないのか……!
身を乗り出して催促してくるエミリーさんに、少しのけぞる俺。
「……い、居ます………。」
ついには消え入りそうになりながら、色々と白状する羽目になったのであった。
「ど、どんな人なの……!?」
「うぇっ!?え、えと、んと、あ、案外、子供っぽい…?人かな。」
ラインハルトは嫌な事をするとなると愚図りだすし、感情豊かだしな、うん。子供っぽいと思う。案外。
「じゃ、じゃあ、どこを好きになったとか…!き、聞かせて…!」
「え、えぇ……、どこ、どこだ……?」
す、好きなところか……。
『……俺と、一緒に来ないか?』
……一人な俺を誘ってくれた事、とか……。
『ルイスは本当に最高だな!!』
…お、思い切り褒めてくれるとこ、とか、
『ルイスぅ……。』
ちょっと、情けないとこ、とかも、
『くっ……、びっくりしたか?』
してやったりな顔とか……。
………うぁ……。
「えっ、えっ…、ルイスさん!?大丈夫!?顔が物凄く真っ赤に…!??」
「だ、大丈夫です、ほんとに、ほんと……。」
ラインハルトの好きなところを考えているうちに、エミリーさんに心配されるほど赤くなってしまった。
「あ、そそそうだ!エミリーさん!買い出し!買い出し行かないと!!」
「え、あ、そうでした!!大変!!」
う、うぅ……、俺だけダメージを負った気がする………。
こうなったら、いつか根掘り葉掘りエミリーさんにも聞いてやる…!!
決意を新たに、ジョセフさんに頼まれた食材を買いに行った俺であった。
魔力測定を終え、エミリーさんと合流した。
「可もなく不可もなく、って感じだった。属性は水らしい。」
「み、水…!!お、掃除に使えそうで素敵な属性だね……!!」
きらきらと目を輝かせるエミリーさん。ほんとに掃除が好きなんだな……。
「エミリーさんの属性は聞いてもいいか?」
「わ、私は、火、だよ。あんまり、お、お掃除には使えないんだけど…、結構気に入ってるの…!」
た、確かに掃除には使いにくいだろうが……、判断基準はそこなんだな……。
「格好良くていいな…、水も悪くないんだが、イマイチ具体的な使い道が思いつかなくてな……。」
いいなぁ、属性火。暗いところでも灯りいらずになるし、火種がなくても野宿しやすそうだ。
「え、えと、水、なら、グレイもそうだったから……、グレイに聞いてみると、いいかも……?」
言っている途中で、俺に対するグレイの反応を思い出したのか、段々と声が小さくなっていくエミリーさん。
………聞けるかな……。
「……!!で、でも、ま、魔力測定ででる属性は、と、得意属性って言って…、えと、その属性しか、使えないわけじゃないから……、い、一度他のも、使ってみるといいと思うよ……!火だったら私もおしえりるし…!」
……噛んだな、エミリーさん。というか、他の属性も使えないわけじゃないんだな。
「…ありがとう、取り敢えず色々と試してみる。」
「…ううん、大丈夫だよ……!と、ところで、お昼ご飯なんだけどね、えと…、」
!もうそんな時間か、何食べよう。
もじもじと何か言おうとして居るエミリーさん。何か食べたいものでもあるんだろうか?
「こ、この近くで、お祭りが、あって…、その…、屋台とかで、ご飯もあるし……、えと、えと……、」
おそらく行きたいんだろうな、祭り。これ、吃っているが、俺から聞いたほうがいいだろうか、喋り終わるまで待つか?
「……い、一緒にお祭り、い、行きませんか……!!」
お、おぉ……、最後まで言えたな、エミリーさん。敬語に戻っちゃったけど。
「よし行こう。楽しそうだな。」
「う、うん!こ、こっちだよ……!」
うきうきと、俺を引っ張るエミリーさんが妹のようでとてもかわいい。……身長は俺よりでかいが。
身長の差にスン、となりながら、俺達はお祭り会場についた。
前世は何度か行った覚えのある祭りだが、今世は行った事がない。
活気のある楽しそうな雰囲気は前世の祭りとよく似ている。
「私、お友達とお祭りに来るの、初めてなんだ、!で、でも、来たことはあるから…、あ、案内は任せて…!!」
と、友達…!そうだな、友達だ…!!
「よろしく頼む…!」
思い返せば、俺も今世では同年代の友達は初めてかもしれない!!教会の兄妹たちは、まあ、兄妹だし、知り合いは全員、十歳ほど年上だ。
久しぶりの友達に感動しながら、俺は祭りを楽しんだ。
「、この串焼き美味しい!」
「このコーン焼きも美味いぞ。」
「え、え、魔力射的があるよ……!!」
「あれなんの店だ……?」
たっっっっのしいな……!!祭り!!!
「たのしいね……!!」
思わず声に出ていたらしく、思い切り同意された。
祭りを楽しんでいる間に、エミリーさんはあまり吃らなくなっていて、随分仲良くなれたと思う。
「あ、スースー釣りがあるよ!」
「スースーすくい……?」
ヨーヨーすくいじゃないのか?
あれあれ、と指さされた先には木の枠に水をためて、カラフルな丸い球体の浮かぶ、本当にヨーヨーすくいにしか見えない屋台である。
「おっ!嬢ちゃん達チャレンジするかい!?一本100フィリンだよ!」
気の良さそうな店主が、俺達に声をかけてきた。
ヨーヨーすくいと同じく、釣り糸の様なものを買うらしい。
「えと、えと……、あ、や、やります…!!い、一本ください…!!」
知らない人に話し掛けられ、エミリーさんの吃りが復活した。そのまま押しに負けたのか、一本買ってしまうエミリーさん。
「あいよ!お前さんはどうする?」
「俺はやめとくよ。」
「そうかい、やりたくなったらいつでも言いな!」
俺は辞めておくことにした。まあ、お手伝いとかでためた貯金はあるが、とくに欲しいわけではないからな。
「す、スースーはね、時間がたって乾くと、綺麗な球体のまま固まるんだ…!部屋に置いたり、誰かに送ったりとか、色々出来るし……。す、好きな人とかに、自分の髪色のものを贈ったりとかも……。」
へぇ…、そうなのか、確かに今世の人達の髪色はカラフルだしな……。
エミリーさんの甘栗色をした髪を見ながら思う。…エミリーさんはまだ日本でも居そうなカラーリングだな。
押しに負けたのかと思っていたエミリーさんは、欲しいデザインのスースーがあったらしい。あの一瞬で見つけたのか…。
「ほい、嬢ちゃん、一本な。」
「あ、ありがとうございます…!」
買った糸を持ち、先端についている釣り針を早速水につけていくエミリーさん。
他のものより少し小さめで、パステルカラーの水色っぽいスースーを狙っているようだ。
「……!!」
あ、切れた……。
スッと上に持ち上げた瞬間、プチッと糸が切れてしまった。呆然と糸の切れたところを見るエミリーさん。
「…………、もう、一本ください……。」
「あ、あいよ……。」
いざもう一度。一本また買ったエミリーさんの気迫が最初と全然ちがう……!
が、頑張れ……!
しかし無常にも……。
プツっ……。
「……………も、もう一本…ください……。」
「…あいよ……。」
エミリーさん……!!どれだけ欲しいんだ……!
見かねたのか、店主も取りやすいようにスースーを動かしてくれている。
だがしかし……!!店主、そっちじゃないぞ……!!
店主が取りやすいようにしているのは、隣の赤いスースー。しかしエミリーさんが取りたいのは水色のスースーだ。
しかもエミリーさんは店主が動かしているのをわかっていない。
もう糸は6本目。未だ取れない水色のスースー。
またも無情に切れる糸。半泣きのエミリーさん。
「……店主、俺にも一本くれ。」
「…あいよ。」
……い、一本だけだ。
スッと、水色のスースーから出ている輪っかに、釣り針を合わせる。
そっと、そっとだ……。
横には、俺が釣り始めたからか、今は釣っていないエミリーさんがじっと息を詰めている。
店主もどこか緊張した面持ちで見守ってくれていて、祭り中とは思えない緊張感だ。
「………、………!!…と、とれた………!」
「2個も取るとは、やるなぁあんちゃん!!ほれ、このついてる紐は引っ張ったら取れっからな!」
取れたスースーを店主から貰う。
ぽよん、と手のひらで少し跳ねた。
……2個も、取れてしまった。
片手には、お目当ての水色のスースー。もう片手には、赤色のスースー。
「はい、エミリーさん。」
ま、取り敢えず、水色のほうはエミリーさんに上げよう。
「おいおい、あんちゃん、そりゃあないぞ……。」
何故か店主から非難の目で見られた。
「あ、ありがとう…!!」
なんだ、エミリーさんは喜んでるだろう。
「それでいいのか嬢ちゃん……。」
微妙な顔の店主にの屋台から離れ、二人してスースーをぽよぽよしながら並んで歩く。
「る、ルイスさん、本当にありがとう…!!」
「いや、俺もやってみたくなっただけだ。気にしないでくれ。」
「そ、そっか。」
嬉しそうにスースーをぽよぽよするエミリーさんを眺めながら、なんとなしに既視感を抱いた。
……水色…、パステルカラー……。
「……グレイ?」
「!!???」
思い当たった人物の名前を呟けば、大袈裟なほど全身が跳ねるエミリーさん。
「な、な、なん、…、??」
「グレイっぽい色だなって……。」
動揺しまくりのエミリーさんに正直に告げる。
一度グレイっぽいと思うと、もうその色にしか見えなくなる。
「あ、あぅ……、そ、そういうのじゃ、なく、なくて……、いや違くて、えと、そうなんだけど、」
エミリーさんは噛みまくりながらも、何かを弁解しようとする。
……も、申し訳ないことしたかな……。普通に良い色だと思って取ろうとしてたのかな……。
「ご、ごめんな、変なこと言って……。い、良い色だもんな、き、綺麗で……。」
「わ、わかる!?」
お、おう……。急に身を乗り出してくるなぁ……。
エミリーさんは我が意を得たりと言う風に、バッとこちらを向いた。
「い、いつもハキハキしてて、お庭も綺麗にしてくれてるし、」
それグレイじゃないか?
「か、髪は短いけど、いつも元気そうで、イキイキしてるし、」
グレイだな。
「く、口は悪いけど優しいし……。」
エミリーさん限定だと思うぞ。
「あ、ご、ごめん、私だけ喋っちゃって……。」
「大丈夫だ。」
むしろ面白いぞ。最終的にエミリーさんはグレイが好きってことでいいだろうか。
「る、ルイスさんは?こ、恋人とか、す、好きな人とか、いるの?」
…………、そうきたか。
う、うぅ~…、こ、これ、話さないとだめか…?
「ぜ、絶対秘密にするよ……!そ、それに、私だけ好きな人バレたみたいだし、ず、ずるいよ…!」
ゔっ………。は、白状するしかないのか……!
身を乗り出して催促してくるエミリーさんに、少しのけぞる俺。
「……い、居ます………。」
ついには消え入りそうになりながら、色々と白状する羽目になったのであった。
「ど、どんな人なの……!?」
「うぇっ!?え、えと、んと、あ、案外、子供っぽい…?人かな。」
ラインハルトは嫌な事をするとなると愚図りだすし、感情豊かだしな、うん。子供っぽいと思う。案外。
「じゃ、じゃあ、どこを好きになったとか…!き、聞かせて…!」
「え、えぇ……、どこ、どこだ……?」
す、好きなところか……。
『……俺と、一緒に来ないか?』
……一人な俺を誘ってくれた事、とか……。
『ルイスは本当に最高だな!!』
…お、思い切り褒めてくれるとこ、とか、
『ルイスぅ……。』
ちょっと、情けないとこ、とかも、
『くっ……、びっくりしたか?』
してやったりな顔とか……。
………うぁ……。
「えっ、えっ…、ルイスさん!?大丈夫!?顔が物凄く真っ赤に…!??」
「だ、大丈夫です、ほんとに、ほんと……。」
ラインハルトの好きなところを考えているうちに、エミリーさんに心配されるほど赤くなってしまった。
「あ、そそそうだ!エミリーさん!買い出し!買い出し行かないと!!」
「え、あ、そうでした!!大変!!」
う、うぅ……、俺だけダメージを負った気がする………。
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