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第二章
アイザックの話 アイザック視点
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「る~ちゃんっ!!」
そう呼べば、キョトンとした顔で振り向いてくれるルーちゃん。
「なんだ?アイちゃん。」
相変わらずかわいいあだ名で呼んでくれるルーちゃんに、思わず笑みが溢れる。
「い~え、なんでもないわ!」
____昔から、かわいいものが好きだった。
残念ながら、かわいい物が似合う容姿では無かったけどね。
疑いようのないくらい色のない白髮に、ニョキニョキ伸びていく背丈。オマケにかわいくない容姿。
まあ、とやかく言ってくる輩にはしっかりとお話()して分かってもらってたけどね。
十五歳になれば、実家の家業を継いだ。
肉屋兼解体業、ま~かわいくない職業だわ。
それでも、美味しいって言って買いに来てくれるお客さんがいるから続けてたけどね。
最近は辺境伯様が変わって、頻繁に解体業者として働く事が多くなった。前は自分で狩りに行ってたけど、今じゃホントにただの肉屋ね。
我ながら、マアマアいい人生だと思うわけ。
それでもやっぱり、かわいいものが似合う容姿なら良かったなぁと、多々思う。
例えば、道端でかわいい花を見つけた時だとか。
例えば、色とりどりのリボンを見た時だとか。
…例えば、可愛らしい容姿の子を見た時だとか。
全くかわいくない思考だわ。
そんな時、一人の子供がうちにお使いに来た。
その時の店番には、アタシしか居なくて仕方なしに相手をした。すぐ逃げ帰っちゃうだろうと思ってたら、普通に話されてびっくりしちゃった。
体こそ小さいけど、妙に落ち着いた雰囲気の子供に、アタシはすぐに興味を持った。容姿も可愛かったしね。いっとくけど、ショタコンじゃないわよ。
「ねぇ、あなた名前は?」
「……流石に初対面で血塗れの人に名前を教えるのはちょっと……。」
どこか引いたような真顔で言われた言葉に、自身の格好を見る。
「あらやだアタシったら。肉解体してた服そのままきちゃってたのね。」
取り敢えず着替えたわ。流石に初対面で血塗れは良くないわね。
「仕切り直しよ。アタシはアイザック。あなたの名前は?」
「……次の次に来たときぐらいに教えるから、今はごめんなさい。アイザックさん。」
律儀にアタシが着替えるまで待っていてくれたらしいその子供は、やっぱり名前を教えてはくれなかった。
「もう、ケチね。」
ちょっとムカッとしたアタシは、ちょうどそこら変の木に咲いてた花の名前で呼ぶことにした。
「じゃあ、ルリマツリからとって、ルーちゃんね。」
あれ、とルリマツリを指さしながら子供に言う。
「……俺には可愛らしすぎる気がするんだけど。」
絶妙に嫌そうなその子供。
でも、ちょっと言ってる事は不思議だった。
だって、アタシが指さした花は________真っ白だったんだもの。
「あなた、あの花をかわいいと思うの?」
「……?小ぶりでかわいい花だと思う。小さい花がいっぱい集まってるのも、かわいい、かな?うん。」
「そう…。もの好きね。」
「そうか?」
そうよ。真っ白でなんの色も入ってないものなんて、かわいくないわ。___アタシの、髪色と一緒で。
「じゃあ、アイザックさんはどんな花がかわいいと思うんだ?」
「アイザックさんはかわいくないから辞めて頂戴。お姉様って呼んで。」
「……長いからアイちゃんで。」
お姉様とアイちゃんはそんなに字数変わらないでしょ。
「ま、かわいいからいいわ。」
「取り敢えずアイちゃん、お会計して。」
あらやだアタシったら。お会計忘れてたわ。
そんな出会いから始まったアタシとルーちゃんの交流は、ルーちゃんがお使いに来る回数だけ続いた。
ある時には、
「アイちゃん、髪くくらないの?いつもすごい血が付いてるけど。」
「アタシ、髪くくるの好きじゃないのよ。頭痛くなるの。髪に触るの好きじゃないし。」
(それは力強く括り過ぎでは……?)
「……三つ編み教えてあげるねアイちゃん。」
遠い目をしながら三つ編みを教えてもらったり。
「アイちゃん、美味しい肉の切り方教えて。」
「企業秘密よ。」
「漏らしたりしないし、店番手伝うから。」
「ノッた。」
肉の切り方を教えたり。因みに売上はちょっと伸びた。
「はい、みんなで花冠作ったからアイちゃんにもあげるな。」
「…かわいいことになってるわね。」
花冠を貰いながら、花冠をつけたルーちゃんを見たり。
「アイちゃんもな。」
「お世辞はいいわよ。」
「……。」(本当だが。)
不満そうな顔されたり。
本名も教えてもらったけど、相変わらずアタシとはルーちゃんと呼んでいるし、ルーちゃんもアイちゃんとアタシを呼ぶ。
「ねえ、ルーちゃん。」
「どうした?」
「アタシも、かわいいと思うわ、ルリマツリ。」
「そうか。」
「ま、好きな色は赤だけどね。」
「なんでだ……。」
ま、いつか教えてあげるから待ってなさいね。
今日もアタシは自分の髪を三つ編みにする。綺麗にできた三つ編みに満足して、楽しく仕事する。
家の庭には、手入れする様になったルリマツリが毎年いっぱいの花をつけるようになった。
やっぱり、マアマアいい人生だわ。
「おいおっさん!!さぼってんじゃねーよ!!!」
「おっさんって呼ぶなっつってるだろーが!!!!」
あらやだかわいくない声出ちゃった。
そう呼べば、キョトンとした顔で振り向いてくれるルーちゃん。
「なんだ?アイちゃん。」
相変わらずかわいいあだ名で呼んでくれるルーちゃんに、思わず笑みが溢れる。
「い~え、なんでもないわ!」
____昔から、かわいいものが好きだった。
残念ながら、かわいい物が似合う容姿では無かったけどね。
疑いようのないくらい色のない白髮に、ニョキニョキ伸びていく背丈。オマケにかわいくない容姿。
まあ、とやかく言ってくる輩にはしっかりとお話()して分かってもらってたけどね。
十五歳になれば、実家の家業を継いだ。
肉屋兼解体業、ま~かわいくない職業だわ。
それでも、美味しいって言って買いに来てくれるお客さんがいるから続けてたけどね。
最近は辺境伯様が変わって、頻繁に解体業者として働く事が多くなった。前は自分で狩りに行ってたけど、今じゃホントにただの肉屋ね。
我ながら、マアマアいい人生だと思うわけ。
それでもやっぱり、かわいいものが似合う容姿なら良かったなぁと、多々思う。
例えば、道端でかわいい花を見つけた時だとか。
例えば、色とりどりのリボンを見た時だとか。
…例えば、可愛らしい容姿の子を見た時だとか。
全くかわいくない思考だわ。
そんな時、一人の子供がうちにお使いに来た。
その時の店番には、アタシしか居なくて仕方なしに相手をした。すぐ逃げ帰っちゃうだろうと思ってたら、普通に話されてびっくりしちゃった。
体こそ小さいけど、妙に落ち着いた雰囲気の子供に、アタシはすぐに興味を持った。容姿も可愛かったしね。いっとくけど、ショタコンじゃないわよ。
「ねぇ、あなた名前は?」
「……流石に初対面で血塗れの人に名前を教えるのはちょっと……。」
どこか引いたような真顔で言われた言葉に、自身の格好を見る。
「あらやだアタシったら。肉解体してた服そのままきちゃってたのね。」
取り敢えず着替えたわ。流石に初対面で血塗れは良くないわね。
「仕切り直しよ。アタシはアイザック。あなたの名前は?」
「……次の次に来たときぐらいに教えるから、今はごめんなさい。アイザックさん。」
律儀にアタシが着替えるまで待っていてくれたらしいその子供は、やっぱり名前を教えてはくれなかった。
「もう、ケチね。」
ちょっとムカッとしたアタシは、ちょうどそこら変の木に咲いてた花の名前で呼ぶことにした。
「じゃあ、ルリマツリからとって、ルーちゃんね。」
あれ、とルリマツリを指さしながら子供に言う。
「……俺には可愛らしすぎる気がするんだけど。」
絶妙に嫌そうなその子供。
でも、ちょっと言ってる事は不思議だった。
だって、アタシが指さした花は________真っ白だったんだもの。
「あなた、あの花をかわいいと思うの?」
「……?小ぶりでかわいい花だと思う。小さい花がいっぱい集まってるのも、かわいい、かな?うん。」
「そう…。もの好きね。」
「そうか?」
そうよ。真っ白でなんの色も入ってないものなんて、かわいくないわ。___アタシの、髪色と一緒で。
「じゃあ、アイザックさんはどんな花がかわいいと思うんだ?」
「アイザックさんはかわいくないから辞めて頂戴。お姉様って呼んで。」
「……長いからアイちゃんで。」
お姉様とアイちゃんはそんなに字数変わらないでしょ。
「ま、かわいいからいいわ。」
「取り敢えずアイちゃん、お会計して。」
あらやだアタシったら。お会計忘れてたわ。
そんな出会いから始まったアタシとルーちゃんの交流は、ルーちゃんがお使いに来る回数だけ続いた。
ある時には、
「アイちゃん、髪くくらないの?いつもすごい血が付いてるけど。」
「アタシ、髪くくるの好きじゃないのよ。頭痛くなるの。髪に触るの好きじゃないし。」
(それは力強く括り過ぎでは……?)
「……三つ編み教えてあげるねアイちゃん。」
遠い目をしながら三つ編みを教えてもらったり。
「アイちゃん、美味しい肉の切り方教えて。」
「企業秘密よ。」
「漏らしたりしないし、店番手伝うから。」
「ノッた。」
肉の切り方を教えたり。因みに売上はちょっと伸びた。
「はい、みんなで花冠作ったからアイちゃんにもあげるな。」
「…かわいいことになってるわね。」
花冠を貰いながら、花冠をつけたルーちゃんを見たり。
「アイちゃんもな。」
「お世辞はいいわよ。」
「……。」(本当だが。)
不満そうな顔されたり。
本名も教えてもらったけど、相変わらずアタシとはルーちゃんと呼んでいるし、ルーちゃんもアイちゃんとアタシを呼ぶ。
「ねえ、ルーちゃん。」
「どうした?」
「アタシも、かわいいと思うわ、ルリマツリ。」
「そうか。」
「ま、好きな色は赤だけどね。」
「なんでだ……。」
ま、いつか教えてあげるから待ってなさいね。
今日もアタシは自分の髪を三つ編みにする。綺麗にできた三つ編みに満足して、楽しく仕事する。
家の庭には、手入れする様になったルリマツリが毎年いっぱいの花をつけるようになった。
やっぱり、マアマアいい人生だわ。
「おいおっさん!!さぼってんじゃねーよ!!!」
「おっさんって呼ぶなっつってるだろーが!!!!」
あらやだかわいくない声出ちゃった。
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