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第二章
これからの事 ルイス視点
しおりを挟む広く薄暗い倉庫の中、大勢の男達が、ぐるりと何かをとり囲むように立っていた。
その中心で、脱力しきった美しい男が1人、椅子にくくりつけられている。
動けない彼のそばには心配そうな面持ちで寄り添っている、これまた綺麗な男が1人。白い首元には革製の、紅色の首輪がつけられている。
「お前、あいつの犬?ちょーっと俺らと遊ぼうか。」
首輪をつけた男性の方に、ニタニタと下品に笑う男たちが寄ってきた。
「主人が脱力しきって目隠しされてる状態だもんなぁ?いくらDomのトップとはいえglareさえ封じれば何もできないだろ?」
「主人に危害を加えられたくなければ大人しくしてな。」
「◯◯社の跡取りが、妹ごときのためにこのざまか。笑える。」
周りを囲む男たちは楽しそうだった。
数々の罵詈雑言がとめどなく浴びせられる。
Dom性のトップと謳われる愛染紅司は、ここに来てからずっと黙って、男たちの言うことに従っていた。
妹を人質にとられ、薬を飲めば助けてやると言われたから、目隠しをされ、薬を飲んだ。
妹が解放された後も、縄で手を縛られても、椅子にくくりつけられても、何も言わずに。
しかし。
「お利口にしなよ、わんちゃん。」
周りを囲む男の1人がいやらしい手つきで愛染のSub、一葉に触れた。
その瞬間、愛染の口角が自信たっぷりげに美しく吊り上げられて。
「おいおいどうした、とうとう頭でもおかしくなったか?」
「喋る以外になーんもできないくせにな!」
何を言われても、愛染の口角が下がることはない。やがて妖艶に濡れた真っ赤な唇が艶やかに開かれて。
「行け、一葉。」
凛とした中性的な声が、その場に響き渡る。
「かしこまりました。」
深呼吸とともに愛染のとなりに寄り添っていた一葉の目つきが一変した。
刹那、大勢の男たちの口元から笑みが消え、彼らは揃ってピタリと動けなくなってしまう。
何が起こったと言うのだろう。場内は動揺に溢れていた。
たしかに愛染には目隠しがされている。ではこのglareは一葉から放たれたとでも言うのだろうか。
この場全員のDomを圧倒するほどの強烈なglare。それをなぜ、Subが。
一葉は周りに目を光らせつつ主人の縄を丁寧にほどき、そして脱力しきった身体を支えると、ゆっくりと椅子に座らせた。
「俺の一葉に触れるとは、いい度胸をしているな?」
目隠しが外れた瞬間、放たれたglareは先ほど一葉が放ったものを大きく凌駕する。その場にいた全員が失禁し、立てなくなってしまうほどにそれは強烈だった。
そのまま一葉が男共全員の手足を動かないよう拘束していき、
そして。
「よくやった、一葉。kneel。」
椅子に座った愛染は、目の前の一葉に柔らかな声でそう告げた。
ふるふると一葉の足が小刻みに震える。彼の目はじっと主人を見つめ、恍惚としていて。
ぺたん。
震えながら、ゆっくりと床に膝を預けた。
愛染の足元で、一葉はおすわりの体勢になり、再び主人を見上げ、静かに褒美を待つ。
「いいこだ。」
だらりと垂らされた力ない腕が、震えながら一葉の顔の近くまで持っていかれて。
一葉の首の付け根を、くの字に曲げられた愛染の人差し指が猫を扱うようにゆっくりと擦っていった。
「ふぅ…、あっ…ぁ… 」
たっぷりと色香を纏った声が甘ったるい吐息とともに一葉の口から放たれる。それこそにゃあとでもいいそうな勢いだ。
先ほど場の全員を圧巻するほどのglareを放っていたのは誰だったか。
拘束された大勢の男たちは、その異様な光景を前にただ呆然と口を開けていた。
その中心で、脱力しきった美しい男が1人、椅子にくくりつけられている。
動けない彼のそばには心配そうな面持ちで寄り添っている、これまた綺麗な男が1人。白い首元には革製の、紅色の首輪がつけられている。
「お前、あいつの犬?ちょーっと俺らと遊ぼうか。」
首輪をつけた男性の方に、ニタニタと下品に笑う男たちが寄ってきた。
「主人が脱力しきって目隠しされてる状態だもんなぁ?いくらDomのトップとはいえglareさえ封じれば何もできないだろ?」
「主人に危害を加えられたくなければ大人しくしてな。」
「◯◯社の跡取りが、妹ごときのためにこのざまか。笑える。」
周りを囲む男たちは楽しそうだった。
数々の罵詈雑言がとめどなく浴びせられる。
Dom性のトップと謳われる愛染紅司は、ここに来てからずっと黙って、男たちの言うことに従っていた。
妹を人質にとられ、薬を飲めば助けてやると言われたから、目隠しをされ、薬を飲んだ。
妹が解放された後も、縄で手を縛られても、椅子にくくりつけられても、何も言わずに。
しかし。
「お利口にしなよ、わんちゃん。」
周りを囲む男の1人がいやらしい手つきで愛染のSub、一葉に触れた。
その瞬間、愛染の口角が自信たっぷりげに美しく吊り上げられて。
「おいおいどうした、とうとう頭でもおかしくなったか?」
「喋る以外になーんもできないくせにな!」
何を言われても、愛染の口角が下がることはない。やがて妖艶に濡れた真っ赤な唇が艶やかに開かれて。
「行け、一葉。」
凛とした中性的な声が、その場に響き渡る。
「かしこまりました。」
深呼吸とともに愛染のとなりに寄り添っていた一葉の目つきが一変した。
刹那、大勢の男たちの口元から笑みが消え、彼らは揃ってピタリと動けなくなってしまう。
何が起こったと言うのだろう。場内は動揺に溢れていた。
たしかに愛染には目隠しがされている。ではこのglareは一葉から放たれたとでも言うのだろうか。
この場全員のDomを圧倒するほどの強烈なglare。それをなぜ、Subが。
一葉は周りに目を光らせつつ主人の縄を丁寧にほどき、そして脱力しきった身体を支えると、ゆっくりと椅子に座らせた。
「俺の一葉に触れるとは、いい度胸をしているな?」
目隠しが外れた瞬間、放たれたglareは先ほど一葉が放ったものを大きく凌駕する。その場にいた全員が失禁し、立てなくなってしまうほどにそれは強烈だった。
そのまま一葉が男共全員の手足を動かないよう拘束していき、
そして。
「よくやった、一葉。kneel。」
椅子に座った愛染は、目の前の一葉に柔らかな声でそう告げた。
ふるふると一葉の足が小刻みに震える。彼の目はじっと主人を見つめ、恍惚としていて。
ぺたん。
震えながら、ゆっくりと床に膝を預けた。
愛染の足元で、一葉はおすわりの体勢になり、再び主人を見上げ、静かに褒美を待つ。
「いいこだ。」
だらりと垂らされた力ない腕が、震えながら一葉の顔の近くまで持っていかれて。
一葉の首の付け根を、くの字に曲げられた愛染の人差し指が猫を扱うようにゆっくりと擦っていった。
「ふぅ…、あっ…ぁ… 」
たっぷりと色香を纏った声が甘ったるい吐息とともに一葉の口から放たれる。それこそにゃあとでもいいそうな勢いだ。
先ほど場の全員を圧巻するほどのglareを放っていたのは誰だったか。
拘束された大勢の男たちは、その異様な光景を前にただ呆然と口を開けていた。
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