21 / 51
第一章
夜の非常識な訪問者 ルイス視点
しおりを挟む
ラインハルトの目が見えなくなった。
原因不明で、突然の出来事である。
俺は酷く動揺した。
騒ぎを聞きつけてやって来たファーリーさんも動揺していて、ちょっと転けかけていた。
比較的落ち着いていたラインハルトが指示を出し始め、バタバタと忙しなくファーリーさんが色々と用事をしにいった。
部屋に二人きりになると、ラインハルトにぎゅっと抱きしめられた。
何も言わないラインハルトの目は、ぼんやりと俺の方を見ているが、視線はどこかズレている。
………ほんとうに、見えていないんだな。
心細いのか、俺を抱きしめて離さないラインハルト。…安眠枕か何かか、俺は。
いや、まあ、それでラインハルトが安心するなら安眠枕ぐらいなるけど……。
その後、隊長さんが護衛として到着し、ラインハルトは離れていった。
それでもどこかしら俺の体を触っていたので、今まで以上の距離の近さで一日過ごす事になった。なんだか肘置きになっていたような気もするが、それは気の所為だろう。
そして夜。
いつもの就寝時間より遅い時間。ラインハルトの目が見えないので、寝る準備に時間がかかったのである。さすがにファーリーさんといえど、着替えを手伝ってもらう訳にはいかないらしい。
……未婚者だもんな、ラインハルト。
この一日、ラインハルトは慣れない事に疲れたのか、ベットに横になると一瞬で眠ってしまった。
……そりゃあ、目が急に見えなくなったんだもんな、慣れない事だらけだ。気をはりっぱなしだったようだし……。
俺はなんとなくラインハルトが寝た後も起きて、ラインハルトの寝顔を見ていた。
あずきみたいな色の瞳は閉じられていて、今開いたとしても目は合わないだろう。
それが、物凄く寂しく思えて、何故こんな事になったのだろう、とその度に考える。
前世でも、こんなに急に失明するなんて聞いた事がない。目に何か入ったなら話は別だが……そんな事言って無かったしなぁ。
…あ、雨の匂いがする。
外を見れば、ぽつりぽつりと小雨が降り出したところだった。
すぐにザアザアと本降りになり、雷が鳴らないか心配になるほどだ。…でかい音って苦手なんだよな…。
少し不安になりながら、眠らずにぼ~っとする。
…なんだか、今日は眠らない方がいい気がするんだよな…。
ゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ
ついに雷も鳴り出してしまった。う~ん…、耳に痛い……。思わず耳がぺしょりと垂れる。
「ーー!~~~!!!」
なんだ?
屋敷が俄に騒がしくなった。何が起こったかと、騒ぎを確認しに行こうとベットから降りた。
しかし……
「…、ぅ…ぁ゛、ぁ……うぅ゛……!」
ラインハルトが魘されだした。驚いてベットに戻ったが、すぐにラインハルトは起きてしまった。
「るいす、るいす、…るいす…そこにいるよな……?」
俺の姿が見えないからか、傍に居るのに俺の存在を確認するラインハルト。
「ガァウ。」
ごめんな、不安な時に離れたりして。そう思いながら、ラインハルトにここに居るぞとアピールする。
またしても、ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。
取り敢えずガウガウと喋って、ちゃんと居るぞ~、とアピールする。
いつの間にか、屋敷の騒ぎも静かになっていた。
本当に、なんだったんだろう?
ラインハルトは安心したのか、そのまま寝てしまった。
遠くから、カツカツと誰かの足音が聞こえた。
……聞き覚えのない足音だな…?
そこまで記憶力が良いわけではないが、少なくともファーリーさんや、隊長さんの足音ではない。
そもそも、隊長さんは扉の前で見張りをしているはずだ。見張りの交代か?確かに一晩中一人で見張りするのは大変だよな。
一人で勝手に納得し、でもそんな事聞いてないなぁ、と思ったその時___。
「ー~~ー~~~~か。なッ…!!」
隊長さんの驚いた声が聞こえたかと思うと、何かが落ちたような音がした。
扉が厚いからか、外の声が聞こえづらい。俺でこれなら、ラインハルトは聞こえてないだろう。眠っているところ悪いが、ラインハルトを揺すって起こす。
「…?」
寝起きでどこかぽやんとしているラインハルト。普段なら大変微笑ましいが、緊急事態だ。すまんがしゃっきりしてくれ。
ガチャリ、と、扉のノブを回す音がし、キィーー……と扉が開かれた。
ラインハルトにもそれは聞こえた様で、そちらに顔を向ける。……視線はあっていないが…。
酷くゆっくりと開く扉に、ラインハルトの俺を握る手に力がこもる。ちゃんと俺が自由に動ける程度の力だから、いつでも飛び掛かれる。
扉は、何故か一度止まり、急に開かれた。
「ノーネから離れてくれないかな。アルンディオ伯爵。」
大声ではないのに、しっかりと憤怒を感じられる声だ。
扉が開いた先には、その、えっと、……り、りりー、じゃなくて、えと…。なんだっけ、…そ、そう!リアンレーヴだ!!
て、いやいや、今名前はどうでもいいんだよ。なんでここにコイツがいるんだっていうか、なんで俺の事をノーネって呼んでるんだ!?
「…どなたかな。今日の予定に訪問者は居なかった筈なんだが。」
ラインハルトお前、余裕か?余裕なのか……!?
「これは失礼しました。アルンディオ伯爵は目が見えなくなったのでしたね。僕はリアンレーヴ・トリーティア、この間ぶりで御座いますねぇ。」
ふふふ、と笑いながら名乗るリアンレーヴ。
お前……、普通に不法侵入者だぞ…?そんなに堂々と名乗って大丈夫か?
「さて、もう一度申し上げますね。ノーネから離れてください。アルンディオ辺境伯。」
「先程から、ノーネ、と呼ぶが、このフェンリルはルイスだ。ノーネという名ではない。そして用事が無いならお帰り頂こう。」
そーだ、そーだ。俺はもうノーネじゃないぞ。ルイスだ。
しかしリアンレーヴは、笑みを保ったまま、話し続ける。
「ふは、貴方はノーネの名前すら知らないだね。可哀相に。」
いや、知らないのはおめーだよ。てか敬語取れたな。
「…何度も言うが、ここに居るのはルイスだ。そのノーネという人物は知らない。そもそも、扉の前には護衛の者が居たはずだが、どうやって入った?」
「ああ、あの人のことかな?ちょっと眠ってもらったよ。少し効きづらくてびっくりしたぁ。結構強い物にしたのに……。」
おいおいおい、それ大丈夫なのか隊長さんは。というか犯行手口ベラベラ話すな?
「…これは、立派な犯罪だとわかってやっているのか?トリーティア子爵令息。」
ラインハルトの声が物凄く低くなってる……。いやまぁ、俺もラインハルトのこと言えないけど…。
俺、今までずっと唸ってるからね。警戒するためにリアンレーヴばっかり見てるせいでラインハルトの表情が見えない。
そして当のリアンレーヴは、犯罪だと言うことを突きつけられると、顔に怒気を表した。
「……それはこちらのセリフだよ…!」
「ノーネを誘拐して、ずっと逃げられない様にするために傍に置いているんだろう!」
頓珍漢な話を自信満々で叫ぶリアンレーヴ。
___「誰も!お前なんかの傍に居たいと思っている筈がない!!」
その言葉が聞こえた瞬間___
「…ガハッ…!!!?…な、んで…?」
あ、やべ…。思わず頭突きしてしまった…。
リアンレーヴに割りと本気の頭突きをしてしまった俺は焦る。あまり頭突きしてしまった事に対する反省は今のところできてないが、これではラインハルトに迷惑がかかってしまうかもしれない!!
アワアワしている間にも、リアンレーヴは崩れ落ち、気を失ってしまう。
振り返れば、ラインハルトも何が起こったのかわからない顔だった。……見えてないもんな…。
「ラインハルト坊っちゃん!!…え?」
ファーリーさん!!すまんがこの事態の収集はあなたにしかできない!!ごめんなさい!!
夜だったので、いつもの執事服ではなくラフな格好のファーリーさんは、部屋の惨状にとても驚いてあんぐりと口を開けていた。
「え、えと、ラインハルト様、ご無事ですか?外にアリー殿が倒れていたんですが……。」
「あ、ああ…?俺は無事だ…。不法侵入してきたトリーティア子爵令息がバーンを眠らせたと言っていた。多分眠り薬だと思う。一応だが、強い物を使ったと言っていたから医師を呼んで見てもらってくれ。」
「は、はい。承知致しました。…ところで、トリーティア子爵令息様が倒れているのは……?」
「いや、それが俺にもわからないんだが……。」
混乱しながら話す二人。
すみません。俺です…、それは俺が頭突きしたので気絶したんです……。
喋れないので、ラインハルトに擦り寄って俺がやりましたとアピールする。
「る、ルイス?どうしたんだ?」
「…あの、もしかしてルイス様が?」
「がぅぅ……。」
ごめんなさい……。こう、敵意を感じると殺られる前に殺れという教えが……。すみません言い訳です…。そしていつも察しがいいよなファーリーさん。
…なんとなく、二人に迷惑をかけてしまうと思うとしゅんとしてしまう。
「……助けてくれてありがとうな、ルイス。」
!!
ラインハルトが、うっすらと笑ってお礼を述べてくれる。それだけで気分が上を向いてしまうのだから恋ってすごい。
嬉しくなって、ラインハルトにすりすりと擦り寄る。そうすると撫でてくれるラインハルトの手はいつも優しくて、尻尾が揺れてしまう。
「ラインハルト様、お楽しみのところ申し訳ありませんが、トリーティア子爵令息様はどうなさいますか?」
「…取り敢えず拘束して、地下牢に入れておいてくれ。もし起きたら情報を聞き出せ。この間のノーネという子供の件、こいつが何か知っているかもしれない。」
「ま、誠でございますか?!」
「嗚呼。こいつは何故かルイスとそのノーネという子供を同一視しているらしい。」
「そうなのですか……。確かに色はそっくりなのですが、そんな事が有る訳ないでしょうに…。」
……あるんだよなぁ…。ほんとに、なんで俺フェンリルになってるの……。
その後、またして屋敷が騒がしくなり、一睡もできないまま夜が開けた俺。
お兄さんが来ると言って座っているラインハルトの横で爆睡してしまうのであった。
原因不明で、突然の出来事である。
俺は酷く動揺した。
騒ぎを聞きつけてやって来たファーリーさんも動揺していて、ちょっと転けかけていた。
比較的落ち着いていたラインハルトが指示を出し始め、バタバタと忙しなくファーリーさんが色々と用事をしにいった。
部屋に二人きりになると、ラインハルトにぎゅっと抱きしめられた。
何も言わないラインハルトの目は、ぼんやりと俺の方を見ているが、視線はどこかズレている。
………ほんとうに、見えていないんだな。
心細いのか、俺を抱きしめて離さないラインハルト。…安眠枕か何かか、俺は。
いや、まあ、それでラインハルトが安心するなら安眠枕ぐらいなるけど……。
その後、隊長さんが護衛として到着し、ラインハルトは離れていった。
それでもどこかしら俺の体を触っていたので、今まで以上の距離の近さで一日過ごす事になった。なんだか肘置きになっていたような気もするが、それは気の所為だろう。
そして夜。
いつもの就寝時間より遅い時間。ラインハルトの目が見えないので、寝る準備に時間がかかったのである。さすがにファーリーさんといえど、着替えを手伝ってもらう訳にはいかないらしい。
……未婚者だもんな、ラインハルト。
この一日、ラインハルトは慣れない事に疲れたのか、ベットに横になると一瞬で眠ってしまった。
……そりゃあ、目が急に見えなくなったんだもんな、慣れない事だらけだ。気をはりっぱなしだったようだし……。
俺はなんとなくラインハルトが寝た後も起きて、ラインハルトの寝顔を見ていた。
あずきみたいな色の瞳は閉じられていて、今開いたとしても目は合わないだろう。
それが、物凄く寂しく思えて、何故こんな事になったのだろう、とその度に考える。
前世でも、こんなに急に失明するなんて聞いた事がない。目に何か入ったなら話は別だが……そんな事言って無かったしなぁ。
…あ、雨の匂いがする。
外を見れば、ぽつりぽつりと小雨が降り出したところだった。
すぐにザアザアと本降りになり、雷が鳴らないか心配になるほどだ。…でかい音って苦手なんだよな…。
少し不安になりながら、眠らずにぼ~っとする。
…なんだか、今日は眠らない方がいい気がするんだよな…。
ゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ
ついに雷も鳴り出してしまった。う~ん…、耳に痛い……。思わず耳がぺしょりと垂れる。
「ーー!~~~!!!」
なんだ?
屋敷が俄に騒がしくなった。何が起こったかと、騒ぎを確認しに行こうとベットから降りた。
しかし……
「…、ぅ…ぁ゛、ぁ……うぅ゛……!」
ラインハルトが魘されだした。驚いてベットに戻ったが、すぐにラインハルトは起きてしまった。
「るいす、るいす、…るいす…そこにいるよな……?」
俺の姿が見えないからか、傍に居るのに俺の存在を確認するラインハルト。
「ガァウ。」
ごめんな、不安な時に離れたりして。そう思いながら、ラインハルトにここに居るぞとアピールする。
またしても、ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。
取り敢えずガウガウと喋って、ちゃんと居るぞ~、とアピールする。
いつの間にか、屋敷の騒ぎも静かになっていた。
本当に、なんだったんだろう?
ラインハルトは安心したのか、そのまま寝てしまった。
遠くから、カツカツと誰かの足音が聞こえた。
……聞き覚えのない足音だな…?
そこまで記憶力が良いわけではないが、少なくともファーリーさんや、隊長さんの足音ではない。
そもそも、隊長さんは扉の前で見張りをしているはずだ。見張りの交代か?確かに一晩中一人で見張りするのは大変だよな。
一人で勝手に納得し、でもそんな事聞いてないなぁ、と思ったその時___。
「ー~~ー~~~~か。なッ…!!」
隊長さんの驚いた声が聞こえたかと思うと、何かが落ちたような音がした。
扉が厚いからか、外の声が聞こえづらい。俺でこれなら、ラインハルトは聞こえてないだろう。眠っているところ悪いが、ラインハルトを揺すって起こす。
「…?」
寝起きでどこかぽやんとしているラインハルト。普段なら大変微笑ましいが、緊急事態だ。すまんがしゃっきりしてくれ。
ガチャリ、と、扉のノブを回す音がし、キィーー……と扉が開かれた。
ラインハルトにもそれは聞こえた様で、そちらに顔を向ける。……視線はあっていないが…。
酷くゆっくりと開く扉に、ラインハルトの俺を握る手に力がこもる。ちゃんと俺が自由に動ける程度の力だから、いつでも飛び掛かれる。
扉は、何故か一度止まり、急に開かれた。
「ノーネから離れてくれないかな。アルンディオ伯爵。」
大声ではないのに、しっかりと憤怒を感じられる声だ。
扉が開いた先には、その、えっと、……り、りりー、じゃなくて、えと…。なんだっけ、…そ、そう!リアンレーヴだ!!
て、いやいや、今名前はどうでもいいんだよ。なんでここにコイツがいるんだっていうか、なんで俺の事をノーネって呼んでるんだ!?
「…どなたかな。今日の予定に訪問者は居なかった筈なんだが。」
ラインハルトお前、余裕か?余裕なのか……!?
「これは失礼しました。アルンディオ伯爵は目が見えなくなったのでしたね。僕はリアンレーヴ・トリーティア、この間ぶりで御座いますねぇ。」
ふふふ、と笑いながら名乗るリアンレーヴ。
お前……、普通に不法侵入者だぞ…?そんなに堂々と名乗って大丈夫か?
「さて、もう一度申し上げますね。ノーネから離れてください。アルンディオ辺境伯。」
「先程から、ノーネ、と呼ぶが、このフェンリルはルイスだ。ノーネという名ではない。そして用事が無いならお帰り頂こう。」
そーだ、そーだ。俺はもうノーネじゃないぞ。ルイスだ。
しかしリアンレーヴは、笑みを保ったまま、話し続ける。
「ふは、貴方はノーネの名前すら知らないだね。可哀相に。」
いや、知らないのはおめーだよ。てか敬語取れたな。
「…何度も言うが、ここに居るのはルイスだ。そのノーネという人物は知らない。そもそも、扉の前には護衛の者が居たはずだが、どうやって入った?」
「ああ、あの人のことかな?ちょっと眠ってもらったよ。少し効きづらくてびっくりしたぁ。結構強い物にしたのに……。」
おいおいおい、それ大丈夫なのか隊長さんは。というか犯行手口ベラベラ話すな?
「…これは、立派な犯罪だとわかってやっているのか?トリーティア子爵令息。」
ラインハルトの声が物凄く低くなってる……。いやまぁ、俺もラインハルトのこと言えないけど…。
俺、今までずっと唸ってるからね。警戒するためにリアンレーヴばっかり見てるせいでラインハルトの表情が見えない。
そして当のリアンレーヴは、犯罪だと言うことを突きつけられると、顔に怒気を表した。
「……それはこちらのセリフだよ…!」
「ノーネを誘拐して、ずっと逃げられない様にするために傍に置いているんだろう!」
頓珍漢な話を自信満々で叫ぶリアンレーヴ。
___「誰も!お前なんかの傍に居たいと思っている筈がない!!」
その言葉が聞こえた瞬間___
「…ガハッ…!!!?…な、んで…?」
あ、やべ…。思わず頭突きしてしまった…。
リアンレーヴに割りと本気の頭突きをしてしまった俺は焦る。あまり頭突きしてしまった事に対する反省は今のところできてないが、これではラインハルトに迷惑がかかってしまうかもしれない!!
アワアワしている間にも、リアンレーヴは崩れ落ち、気を失ってしまう。
振り返れば、ラインハルトも何が起こったのかわからない顔だった。……見えてないもんな…。
「ラインハルト坊っちゃん!!…え?」
ファーリーさん!!すまんがこの事態の収集はあなたにしかできない!!ごめんなさい!!
夜だったので、いつもの執事服ではなくラフな格好のファーリーさんは、部屋の惨状にとても驚いてあんぐりと口を開けていた。
「え、えと、ラインハルト様、ご無事ですか?外にアリー殿が倒れていたんですが……。」
「あ、ああ…?俺は無事だ…。不法侵入してきたトリーティア子爵令息がバーンを眠らせたと言っていた。多分眠り薬だと思う。一応だが、強い物を使ったと言っていたから医師を呼んで見てもらってくれ。」
「は、はい。承知致しました。…ところで、トリーティア子爵令息様が倒れているのは……?」
「いや、それが俺にもわからないんだが……。」
混乱しながら話す二人。
すみません。俺です…、それは俺が頭突きしたので気絶したんです……。
喋れないので、ラインハルトに擦り寄って俺がやりましたとアピールする。
「る、ルイス?どうしたんだ?」
「…あの、もしかしてルイス様が?」
「がぅぅ……。」
ごめんなさい……。こう、敵意を感じると殺られる前に殺れという教えが……。すみません言い訳です…。そしていつも察しがいいよなファーリーさん。
…なんとなく、二人に迷惑をかけてしまうと思うとしゅんとしてしまう。
「……助けてくれてありがとうな、ルイス。」
!!
ラインハルトが、うっすらと笑ってお礼を述べてくれる。それだけで気分が上を向いてしまうのだから恋ってすごい。
嬉しくなって、ラインハルトにすりすりと擦り寄る。そうすると撫でてくれるラインハルトの手はいつも優しくて、尻尾が揺れてしまう。
「ラインハルト様、お楽しみのところ申し訳ありませんが、トリーティア子爵令息様はどうなさいますか?」
「…取り敢えず拘束して、地下牢に入れておいてくれ。もし起きたら情報を聞き出せ。この間のノーネという子供の件、こいつが何か知っているかもしれない。」
「ま、誠でございますか?!」
「嗚呼。こいつは何故かルイスとそのノーネという子供を同一視しているらしい。」
「そうなのですか……。確かに色はそっくりなのですが、そんな事が有る訳ないでしょうに…。」
……あるんだよなぁ…。ほんとに、なんで俺フェンリルになってるの……。
その後、またして屋敷が騒がしくなり、一睡もできないまま夜が開けた俺。
お兄さんが来ると言って座っているラインハルトの横で爆睡してしまうのであった。
91
お気に入りに追加
1,315
あなたにおすすめの小説
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。
薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。
アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。
そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!!
え?
僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!?
※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。
色んな国の言葉をMIXさせています。
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる