転生したらいつの間にかフェンリルになってた〜しかも美醜逆転だったみたいだけど俺には全く関係ない〜

春色悠

文字の大きさ
上 下
16 / 51
第一章

雨降祭り ルイス視点

しおりを挟む
 あまふまつりってなんだ?

 
 王都から帰ってきて早々、屋敷は慌ただしくなった。
 この領伝統の祭りが行われるらしく、準備が大変なんだそうだ。
 その祭りは、雨が降ることを祝う祭りだそうで、大昔呪いで雨が降らなくなった時期があったこの領伝統のものらしい。前世で言う梅雨の様な雨が多くなる時期に開催される。その時期がもうすぐなんだそうだ。
 あまふまつりって、日本だと雨降祭りって書きそうだな。
 呪いってこの世界にあったんだな。お伽噺の中だけかもしれないが。
 それにしてもアルンディオ領にはそんな祭りがあるとは……。
 そういえば俺の住んでた領ってどこだったっけ?あんまり住所とか意識したことなかったから、わからないな。あの森からは近いんだろうけど。
 前世なら義務教育だったり、手紙やハガキをだしたりするのになんとなく自分の住んでる県や町ぐらいなら皆知ってるものだったなぁ。
 今世じゃ、義務教育はないし、十五で成人だしな。魔法については親とかから教えてもらうけど。俺の場合は神父様に。皆少しは使えるけどやっぱり危ないからな。俺も習っておきたかった。
 俺がぼ~っとそんなことを考えている間、ラインハルトは忙しなく書類と向き合っている。はんこを押したり、計算したり。
 それはファーリーさんが休憩のお茶を淹れてくるまで続いた。
「ファーリー、明日は祭りの開催予定場所に行ってくる。」
「おや、何かございましたか?」
「いや、問題は特にない。雨よけの枠の確認をしてくるだけだ。」
「馬車などはご入用で?」
「馬車は使わない。雨具は一応持っていくから用意してくれ。」
「ルイス様の分もご用意しますか?」
「あ、ルイスは来るか?街の方へ行くんだが……。」
 う~ん…、子供とかが怖がったりしないか?首を傾げてみる。
「…?」
 ラインハルトも傾げる。どうやって伝えるべきか…。
「何か心配事でもお有りになるのでは?」
 ファーリーさん!!正解だ!物凄く今キラキラした目でファーリーさんを見ている気がするぞ。
「心配事か……ルイスが心配する事はないと思うぞ?ルイスは人を襲ったりしないし、物を壊したりしないだろ?」
「ガゥ。」
 それは勿論だ。でも俺が心配なのはそれじゃないんだが……。まあ、怖がられたら速攻で隠れよう。
 一緒に行くと決めた俺は、ラインハルトに擦り寄る。
「お、来てくれるのか?」
 うんうんと頷く。YESかNOの質問は答えやすいからいいな。
「ありがとう。ということでファーリー、ルイスの分の雨具も頼む。」
「畏まりました。手配してきます。」
 恭しく礼をしたファーリーさんは、明日の準備に部屋を出ていった。
 
 後日。
 快晴の中、街へ向かっている俺達。
 とても澄み渡った空である。これ本当に祭りの日に雨が降るのか?
「それにしても、ご領主様自ら確認するんですか?」
 あ、そうそう、今回は討伐武隊長さんも一緒にいるぞ。護衛だそうだ。
「ああ、この雨よけの枠に魔力を流して結界を発動するのは俺だからな。魔力がちゃんと流れるかを確認するのも俺でないと当日に不備がでる。」
「そうでしたか。お一人で大丈夫なのですか?」
「大丈夫だ。魔力量は多いからな。寧ろ他の魔道士を呼ぶと俺の魔力で威圧されて使い物にならん。」
 え、魔力で威圧とかあるのか。もしかして前にラインハルトを見て気絶した人の時も、魔力で威圧されての気絶だったのか?
「私も一応魔法が使えるんですけど、あんまり威圧は感じませんよ?」
「ある程度魔力が強くなければ感じないらしいからな。」
 ほう、そんな感じなのか……。俺も魔力が少なかったりするのかな。全くラインハルトの威圧を感じないんだが。
「あと、魔力が俺に近い者も威圧を感じにくくなるらしい。」
 へぇ~……。俺はどっちなんだろうな。
 というか、めっちゃ見られてる。さっきというか街に入った辺りから街の人に見られてる。うん。珍しいよな。でかいし。見る度びっくりされてて俺もびっくりしそうになるんだが。
「わぁ!」
 どす、と言う効果音が付きそうな勢いで何かがぶつかってきた。
 うおぅ、びっくりしたァ…。
 本当にびっくりした時って声出ないんだな俺。
「すご~い!わんちゃんもふもふ~!!」
 きゃらきゃらと笑いながら俺を触ってくる子供。多分5~8歳くらいか?小さいから俺の足にしがみつくくらいしかできてないんだが。
 取り敢えずしゃがんでみる。子供が喜んでさらに触る。
 そして、それを困惑しながら見ている大の大人二人。
「え、これどうするんです?話しかけたら一発で泣かれる自身ありますよ俺。」
「それを俺に言うか?俺は下手したら気絶されるぞ。」
 おい、コソコソ話し合うな。というか二人共子供への接し方下手か?
 でかい男二人がワタワタしているうちに子供の親が迎えに来た。
 物凄く謝っていたが、別に気にしていないのでラインハルトの傍に行っておいた。ラインハルトが苦笑しながら俺が気にしていない事を伝えてくれたので安心して帰っていった。
 迷子になったら危ないからちゃんと手を握っておくんだぞ、色々と危ないからなぁ。と、思いながら親子を見送った所でまた声がかかった。
「あの…!」
 おぉう、ピンクだ……。目に痛いタイプの…。多分17歳くらいの女の子だ。あ、いや15で成人だから女性か。そして何故俺に話しかける。俺はおしゃべりできないぞ。
「わ、私も触っていいですか!!」
 即座に首を横に振った。 
 いや、すんごい期待してるのはわかるけど、大人はちょっと……。子供だったから好きにさせてたけど、一応俺人間だったから人に体触られるのは抵抗あるんだよ?ラインハルトは別として。
 後、なんか香水か何かの匂いがキツい。鼻がもげそう。フェンリルの鼻がいいだけで人間だったら丁度いいのかもしれないけどキツい。
「すこし…!すこしだけでいいので……!!」
 ちょ、近づかないでくれ。もふりたいのは俺も理解できるけど匂いもキツイし目に痛いから……!!そしてハァハァ言いながら近づくな!!変態か!?
 断られると思っていなかったのか、ショックを受けた女性はなおも触ろうと近づいてくる。軽いホラーだ。
 思わずラインハルトの後ろに隠れた。隠れれてないけど。腹ぐらいしか隠せてないけど。
「…すまないが、ルイスが拒否しているので遠慮してほしい。」
 もっと言ってくれラインハルト!!ちょっと俺あの女性怖い!!もふもふに妙な執着を感じる!!
「えぇ~~!!ちょっとくらいいいじゃないですかぁ~!!ねぇ~?ルイスちゃ~ん?」
 いやいやいやいや、こわいこわいこわいって。ちゃん呼びしないでくれ。怖さが増す。猫なで声なのがほんっとに怖い。
 人間に戻りたいとこれほどまでに思った事はあっただろうか。
 ラインハルトを引っ張って背に乗せ逃亡を図る。
「お、おい?るいす?」「ちょ、ルイス様!?」
 ついでに隊長も乗せて走った。すまん二人共、逃げさせてくれ。母さんもやばい奴が来たときは大事な奴と一緒に逃げろって言ってた。雰囲気で。
 尚、少しの間女性は走って追いかけてきた。ゼェゼェ言いながら追いかけてきたのがすごく怖かった。 
 女性を撒いた所で止まると、二人共俺の背中からおりた。
「だ、大丈夫か?あの女性の匂いがきつかったのか?」
 ぶんぶんと頭を縦に振り、それだけが理由ではないが取り敢えず無理だった事をアピールする。
「そ、そうか…。そんなに嫌だったのか……。」
「る、ルイス様は鼻がいいんですね…?」
 未だに困惑気味の二人。本当に申し訳ないが無理な者は無理だ。あとあのタイプははっきりと拒否しないと迫ってくるぞ。気をつけろ。
 ハプニングがありつつ、祭りの準備は整った。
 雨降祭りの開催である!!
「これより、雨降祭りを開催する!!我らが恵みの雨に喝采を!!」
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

処理中です...