転生したらいつの間にかフェンリルになってた〜しかも美醜逆転だったみたいだけど俺には全く関係ない〜

春色悠

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第一章

薔薇 ルイス視点

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 …………取り敢えず風呂に入れよう…。
 
 それが帰ってきたラインハルトを見て思った事であった。
 ………最近のご令嬢方は香水を頭から被っていたりするのか…?
 いや、もしかしたら薔薇の香水が流行りまくって皆つけているのかもしれない…!
 とにかく、だ。
 
 薔薇臭いぞ、ラインハルト。

 薔薇臭いラインハルトを取り敢えず風呂に引っ張り、何であんなに薔薇臭いのか考える。
 どうやったらあんなに薔薇臭くなれるんだ。俺の鼻が良いとはいえ、まるで頭から薔薇でも降りそそいだかの様に全身から匂うぞ?
 香水をご令嬢方では無く、ラインハルトが頭から被ったのか?
 まあ、それは置いておいて。
 俺ちょっと薔薇苦手なんだよな……。
 何でだったか……。う~ん…、いつの間にか苦手になっていたような……?
 何か理由があったと思うんだが……あぁ、そうだ。誰だったか、物凄い俺に薔薇を贈ってきた奴が居たんだよな。
 それで、その薔薇と一緒に送られてくる手紙が何というか、物凄いストーカーっぽい手紙でなぁ……。
 それが何度も送られてくるもんだから、だんだん薔薇を見るのも嫌になったんだった。あ、因みに今世の話で、実際に会ってお断りした。
 もの好きも居るものだと思っていたが、美醜が違うここだと俺もイケメンに見えたりするんだろうか?あまり同年代と会わないからわからないな……。
 神父様やシスター達はよく『かわいい』と言ってくれたが、身内贔屓的なあれだろう。決して俺の背が低いからではないからな。……これから伸びるんだ!
「…………ルイスぅ……?」
 あ、風呂から出たのかラインハルト。
 なにやらこちらを控えめに伺っているラインハルトの近くに行って、匂いを嗅ぐ。
 ふむふむ。大分マシになったな。ちゃんとラインハルトの匂いがするぞ。さっきまで薔薇の匂いしかしなかったからな。
 戻った匂いに安心して顔をスリスリする。
 すると、ラインハルトがもふもふし始めた。……吸うな吸うな、それで息できてるのか?
 尻尾でラインハルトをぱしぱしと叩く。
「はぁぁぁぁ………。すまんルイス。薔薇園に行ったから匂いがキツかったか?」
 物凄いため息を吐いた後、薔薇園に行ったと言うラインハルト。どれだけ薔薇園に居たんだ、頭から香水でも被ったみたいだったぞ……。
 取り敢えず、匂いが無理だったのはそうなので頷く。
「そうか……。…………よかった……。」
 ん?何がよかったんだ?耳がいいから小声でもばっちり聞こえてるぞ。未だに俺をもふっているラインハルトはもふもふに夢中だ。
 ぐりぐりと頭を俺の腹に埋めているラインハルトは疲れているのか、元気がない。どこか疲れた顔をしている。疲れているならベットで寝ろラインハルト。
 ラインハルトを背に乗せ、ベットに運ぶ。宿のベットは屋敷のベットより狭いため、俺は入れないが、近くに座れば頭くらいはベットに乗せることができる。
 頭をベットに乗せれば、ラインハルトは俺の頭を抱き込んだ。
「………後日、魔物の対処法を纏めた書類を提出することになった……。」
 疲れた顔をしながら話しだしたラインハルト。明日からの書類作成を想像して憂鬱なのだろうか?
 確かにじっとしてるよりも、外で走っている方が楽しそうにしていたな。
 それにしても元気が無さ過ぎではないか?
 疑問に思っている俺を他所に、ラインハルトはうとうとと微睡み始める。
「…………ずっと、いっしょににいてくれ……るいす……。」
 小声で、呂律も少し怪しい中しっかりと聞き取った言葉。
 …………ずっと一緒に、か……。
 ラインハルトはもう寝入っていて、すうすうと寝息をたてている。
 ………正直言って、ラインハルトとずっと一緒に居る、と言うのは楽しそうだと思う。
 それこそ、このままフェンリルとしてラインハルトの傍で一生を終えてもいいと思うくらいには。
 前にも一度、同じ様な事を言われたことがある。
 その時は、率直に言って、無理だ、と思った。
 嫌だ、や、気持ち悪いな、とも思ったが、一番最初に出たのが、『無理』だった。
 言われた相手があの薔薇と手紙(ストーカー風)を送ってきた相手で、初対面の時だったのもあるとは思うが、知り合いだったとしても、ずっと一緒に居ようね、と言われた時の答えは否になる、と思う。
 そう、思うはず、だったんだが…………。
 ………ラインハルトには、そういう気持ちが全くわかなかった。
 いいな、と、素直に思ったのである。
 自分でもびっくりだ。
 ずっと一緒に居ようね、なんて恋人同士の間か、好意がある者同士でないと多少なりとも拒否反応がでる、と個人的に思っている。
 拒否反応がでない、ということは、俺はラインハルトが好きなんだろうか?
 恋とか、前世の小学生の時以来なんだが……?
 そもそも恋とは…?
 ……………………誰か有識者の方を紹介してくれ……。

 ぐるぐると考えて寝不足になった俺は、ラインハルトが書類作成をしている間に寝た。
 結局、考えれば考える程ドツボにハマりそうなので考えるのをやめた。
 …………恋している、とわかっても、今の俺は獣だし、想いを伝える術すら持っていないからな……。


 数日後、書類作成を終えて王都から帰った俺達だったが、数週間後、また王都へと赴く事になる。
「…なぜ……!俺が…!夜会に呼ばれるんだ……!!」
 その時のラインハルトの嘆きがこれである。余程夜会が苦手らしい。   
 なんでもその夜会、この間ラインハルトが作成した書類が役に立ったらしく、その功績を褒める、と言う体で開かれるようだ。
 その夜会は、魔物討伐に参加する様な関係者、そしてその連れとして妻や夫、子供、使い魔が同伴を許され一緒に来るらしい。
 因みに俺もOKらしい。ラインハルトは俺を連れて行く気まんまんで、ファーリーさんと俺を着飾ろうとイキイキしていた。………楽しそうだからいいが、フリフリは辞めてくれ。絶対に似合わない。
 あーだこーだと悩んでいた二人は、最終的に俺に選ばせる事にしたらしい。カラフルなリボンを選ばされかけた。…やめろラインハルト、蛍光色をすすめて来るな。絶対に俺の色合い的に似合わない。
 結局、シックなワインレッドのリボンに緑で刺繍の入った物を首に巻く事で落ち着いた。
 数々のリボンの中からこのリボンを探すのは骨が折れた。
 後、リボンを決めた瞬間ラインハルトが「ヴッ」と胸をおさえていたのが腑に落ちない。
 まあ、ラインハルトのネクタイもお揃いにしていたので悪い意味ではないと思う。
 

 尚、王都への道中はラインハルトのため息が酷かった事をここに記録しておく。ため息を吐きすぎて深呼吸みたいになっているぞラインハルト……。
 
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