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二章
口説きテク2
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「今日も薔薇の如く麗しいお姿ですね!きっと、どんな色の薔薇も貴方に合えば慎ましく蕾となってしまうことでしょう…!」
「ええっと…?」
思わず引き気味な困惑を返す俺に、プロテアはぺしゃりと崩れ落ちた。
「……俺には…!むりです…!
っ俺の精一杯の口説き文句だったんですケド…!!」
うわあ、という顔で崩れ落ちたプロテアを見るルーンさんが横にいる。俺もきっと同じような顔をしていることだろう。
向かい合うように前の席に座っているポピールやオレンチュ君は、なんだかこいつ、みたいな顔でプロテアを見ていた。
昼食時、最近話すようになったルーンさんも一緒に食べている。
今日はいつも一緒にいる子たちに用事があるらしい。
そこに来たのがプロテアである。
「…あの、今いいですか!」
伺いをたてられて、食事を止めて話を聞く体制になった。
それで何を言うかと思えば、冒頭の発言である。
困惑するしか無い。
「俺はもう無理です。俺にできる全てを出しましたよ…。」
当の本人は何がなんだかわからないが落ち込んでいた。
ずーんとした重い雰囲気を纏うプロテアに、昼食はどうしたと聞けば食べる前だと言うので取り敢えず食事をとったらどうかと言ったら…。
なんか、一緒にご飯を食べることになった。
「うう~…、どうしたら口説かれてくれるんですかぁー!」
納得がいかない!と吠えるプロテアは片手間に食事をもぐもぐと食べる。
「きっとこれくらいの口説き文句は言われたことがあるんでしょ。
もう少し捻ったらどう。」
律儀に答えるルーンさんの言葉は相変わらず鋭い。…?なんか今聞き捨てならない言葉があった気がする?
「あー、確かにユーリスは言われ慣れてそうだな。」
「…そうだよね…!全くさっきは照れてなかったし…!」
「なんか今まで口説かれた中で一番良いなと思った言葉とかないのか?」
オレンチュ君やポピールにも同意されるが、釈然としない。
何故俺が口説かれ慣れている前提なのだ。
「俺は別に口説かれ慣れているわけじゃ無いよ。寧ろ口説かれた事なんてないに等しいから。」
「えー?ほんとかよ?」
「愚鈍なだけかしら。」
「俺の口説きはカウントされないんです!?」
「…ほんと…?」
何でそんなに疑われるんだろう。
それぞれに思い切り疑問視され、俺の方が首を傾げたい気分である。
「さっきの言葉も言われたことくらいあるでしょ。それが口説かれてるってことよ。」
丁寧にルーンさんから説明された。
「言われた事はない、よ……いや、あるね。」
「ほら見なさい。」
ルーンさんはふんぞりかえるけど、これは別のやつだ。
だって、俺にそう言ったのは。
_____「兄様だよ、俺にそう言ってたのは。別に誰かに口説かれてたわけじゃ無いから。」
ひたすらに俺を褒めてくれる兄様である。
可愛い可愛いと褒めてくる兄様は、姉様に対してもそうだ。
まさに身内の欲目と言っても差し支えなさすぎる。
貴族の兄はみんなそうなのかとも思っていた時期もあったが、まあうちの兄が特殊らしい。
ルーンさんが半目で此方を見てきた。
「…それでその鈍感さなわけね。貴方に惚れた人が益々可哀想になるわ。」
何故それほど呆れられなければならないのだ。
大変不満である。
「だから異様に口説かれるのに慣れてんだなー。」
慣れてない。
慣れてたら先輩に、あんなこと言われても…。
『……君を、口説くには、……まだまだ足りない。』
あんなに、照れる事は無かったはず…。
そう考えた瞬間に顔にほんのり熱が宿る。
よかった。この世界ではこれがバレない。話さなければバレる事がないのだ。
「……そうなると、ダンツ君はどんな言葉にドキドキするの?」
「へっ?」
唐突すぎて、間抜けな声を俺は出す。
聞いてきた当のオレンチュ君は、ただただ興味津々だ。
…ドキドキ、した事…。
……っ!
「…え、えと…。なんだろう、?」
ドキドキする言葉。
咄嗟に誤魔化したけれど、なんで俺は一番に先輩が頭に浮かんだんだろう。
た、多分、先輩がイケメンだからだ。顔が良いから、俺が人に近づかれるのに慣れてないから、ドキドキするんだ。
緊張とか、そういうのだ、多分。
誰ともわからない人に言い訳しながら、ご飯を食べすすめた。
……。
『……今日も、…ここに、居ていいか。』
『……面白い、本が…あった。…また、…紹介したい。』
『…今日は、調理する、授業が…あったんだ。』
まるで独白のように話す先輩。
それは独り言ととってもいいだろう言葉だけど、顔を上げると確かに先輩は俺を見ている。
熱くて、甘くて、作りたてのココアみたいな視線を向けてくる先輩は、いつか冷めてくれるだろうか。
できるならば、早めに願いたい。
早くしないと、癖になってしまいそうだから。
先輩の、射抜くような視線を思い出して、ぶる、と寒くも無いのに震えた。
俺、女の子の方が好きだったはずなんだけど…。
もう既に揺らいでいる気がする自分を無視して、食事に集中することにした。
「………なんだろ、これ。」
俺の自室に、手紙が置かれている。
正確には、ドアの隙間から差し込まれたかのように床に落ちていた。
差出人の名前は無く、シンプルな見た目の手紙だ。
「……先輩から、とか。」
ぷるぷると頭を振ってその思考を飛ばす。
一応、中身に危ないものがあっても大丈夫なように防護魔法をかけてから、手紙を開く。
【ユーリス・ダンツ様へ。
明日、放課後すぐに、空き教室に来てほしいのです。
できれば、一人で来てくださると話しやすく存じます。
貴方に話のある者より。】
…やっぱりこれ、先輩からじゃないのか?
身惚れのようではあるが、これはまるで前世でいうラブレターだ。
こういう場合、果し状か、告白かの二択。
俺の場合は果た状を送られるほど強そうというか、戦いを挑まれるようなタイプではない。
それでも本来ならこの二択、果し状の可能性の方があるのだが…。
この少しの間でも、いかに先輩に好かれているかは、恥ずかしいけどわかった。
………行かないでおこう。
手紙と一緒に、地図も入っていて、どの空き教室かも描かれていたけれど、そっと閉じた。
聞かれても、差出人が不明だったからと言えばいいだろう。そうしよう。
なんだか落ち着かないまま、眠りについた。
「ええっと…?」
思わず引き気味な困惑を返す俺に、プロテアはぺしゃりと崩れ落ちた。
「……俺には…!むりです…!
っ俺の精一杯の口説き文句だったんですケド…!!」
うわあ、という顔で崩れ落ちたプロテアを見るルーンさんが横にいる。俺もきっと同じような顔をしていることだろう。
向かい合うように前の席に座っているポピールやオレンチュ君は、なんだかこいつ、みたいな顔でプロテアを見ていた。
昼食時、最近話すようになったルーンさんも一緒に食べている。
今日はいつも一緒にいる子たちに用事があるらしい。
そこに来たのがプロテアである。
「…あの、今いいですか!」
伺いをたてられて、食事を止めて話を聞く体制になった。
それで何を言うかと思えば、冒頭の発言である。
困惑するしか無い。
「俺はもう無理です。俺にできる全てを出しましたよ…。」
当の本人は何がなんだかわからないが落ち込んでいた。
ずーんとした重い雰囲気を纏うプロテアに、昼食はどうしたと聞けば食べる前だと言うので取り敢えず食事をとったらどうかと言ったら…。
なんか、一緒にご飯を食べることになった。
「うう~…、どうしたら口説かれてくれるんですかぁー!」
納得がいかない!と吠えるプロテアは片手間に食事をもぐもぐと食べる。
「きっとこれくらいの口説き文句は言われたことがあるんでしょ。
もう少し捻ったらどう。」
律儀に答えるルーンさんの言葉は相変わらず鋭い。…?なんか今聞き捨てならない言葉があった気がする?
「あー、確かにユーリスは言われ慣れてそうだな。」
「…そうだよね…!全くさっきは照れてなかったし…!」
「なんか今まで口説かれた中で一番良いなと思った言葉とかないのか?」
オレンチュ君やポピールにも同意されるが、釈然としない。
何故俺が口説かれ慣れている前提なのだ。
「俺は別に口説かれ慣れているわけじゃ無いよ。寧ろ口説かれた事なんてないに等しいから。」
「えー?ほんとかよ?」
「愚鈍なだけかしら。」
「俺の口説きはカウントされないんです!?」
「…ほんと…?」
何でそんなに疑われるんだろう。
それぞれに思い切り疑問視され、俺の方が首を傾げたい気分である。
「さっきの言葉も言われたことくらいあるでしょ。それが口説かれてるってことよ。」
丁寧にルーンさんから説明された。
「言われた事はない、よ……いや、あるね。」
「ほら見なさい。」
ルーンさんはふんぞりかえるけど、これは別のやつだ。
だって、俺にそう言ったのは。
_____「兄様だよ、俺にそう言ってたのは。別に誰かに口説かれてたわけじゃ無いから。」
ひたすらに俺を褒めてくれる兄様である。
可愛い可愛いと褒めてくる兄様は、姉様に対してもそうだ。
まさに身内の欲目と言っても差し支えなさすぎる。
貴族の兄はみんなそうなのかとも思っていた時期もあったが、まあうちの兄が特殊らしい。
ルーンさんが半目で此方を見てきた。
「…それでその鈍感さなわけね。貴方に惚れた人が益々可哀想になるわ。」
何故それほど呆れられなければならないのだ。
大変不満である。
「だから異様に口説かれるのに慣れてんだなー。」
慣れてない。
慣れてたら先輩に、あんなこと言われても…。
『……君を、口説くには、……まだまだ足りない。』
あんなに、照れる事は無かったはず…。
そう考えた瞬間に顔にほんのり熱が宿る。
よかった。この世界ではこれがバレない。話さなければバレる事がないのだ。
「……そうなると、ダンツ君はどんな言葉にドキドキするの?」
「へっ?」
唐突すぎて、間抜けな声を俺は出す。
聞いてきた当のオレンチュ君は、ただただ興味津々だ。
…ドキドキ、した事…。
……っ!
「…え、えと…。なんだろう、?」
ドキドキする言葉。
咄嗟に誤魔化したけれど、なんで俺は一番に先輩が頭に浮かんだんだろう。
た、多分、先輩がイケメンだからだ。顔が良いから、俺が人に近づかれるのに慣れてないから、ドキドキするんだ。
緊張とか、そういうのだ、多分。
誰ともわからない人に言い訳しながら、ご飯を食べすすめた。
……。
『……今日も、…ここに、居ていいか。』
『……面白い、本が…あった。…また、…紹介したい。』
『…今日は、調理する、授業が…あったんだ。』
まるで独白のように話す先輩。
それは独り言ととってもいいだろう言葉だけど、顔を上げると確かに先輩は俺を見ている。
熱くて、甘くて、作りたてのココアみたいな視線を向けてくる先輩は、いつか冷めてくれるだろうか。
できるならば、早めに願いたい。
早くしないと、癖になってしまいそうだから。
先輩の、射抜くような視線を思い出して、ぶる、と寒くも無いのに震えた。
俺、女の子の方が好きだったはずなんだけど…。
もう既に揺らいでいる気がする自分を無視して、食事に集中することにした。
「………なんだろ、これ。」
俺の自室に、手紙が置かれている。
正確には、ドアの隙間から差し込まれたかのように床に落ちていた。
差出人の名前は無く、シンプルな見た目の手紙だ。
「……先輩から、とか。」
ぷるぷると頭を振ってその思考を飛ばす。
一応、中身に危ないものがあっても大丈夫なように防護魔法をかけてから、手紙を開く。
【ユーリス・ダンツ様へ。
明日、放課後すぐに、空き教室に来てほしいのです。
できれば、一人で来てくださると話しやすく存じます。
貴方に話のある者より。】
…やっぱりこれ、先輩からじゃないのか?
身惚れのようではあるが、これはまるで前世でいうラブレターだ。
こういう場合、果し状か、告白かの二択。
俺の場合は果た状を送られるほど強そうというか、戦いを挑まれるようなタイプではない。
それでも本来ならこの二択、果し状の可能性の方があるのだが…。
この少しの間でも、いかに先輩に好かれているかは、恥ずかしいけどわかった。
………行かないでおこう。
手紙と一緒に、地図も入っていて、どの空き教室かも描かれていたけれど、そっと閉じた。
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なんだか落ち着かないまま、眠りについた。
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