噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。

春色悠

文字の大きさ
上 下
11 / 27
一章

合同授業【使い魔編 柴犬と猫】

しおりを挟む
 飛び込んできた柴犬は、その勢いのまま大口を開けてシルベルちゃんに飛びかかった。
 まさかのシルベルちゃん誤飲未遂再び!!?
 咄嗟に動こうときた俺は相変わらず鈍臭く、実際に体が動いたのはポピールが柴犬を捕まえた後だった。
「おいニックっ!!急に走っていったと思ったら何してるんだ!」
 目尻を吊り上げて柴犬を抱き上げたまま叱るポピール。
 柴犬、ニックか。ニックは叱られたからか尻尾がしゅんとしなしなになり、わふぅん、と弱々しげに鳴いていた。
 元気な子を召喚したんだなぁ、あはは。
「すんませんっ!!急に走り出しちまって!!」
 髪がボサボサになるほど勢いよく頭を下げて謝るポピールの横で、ニックも頭を下に向けてしゅんとしている。
 齧られかけた当の本人、本魚?のシルベルちゃんは特に何もないらしい。ひらひら、フランネル先輩の周りを優雅に飛んでいる。
 ひらひらしてるから、こう、飛びつきたくなっちゃったんだな、とシルベルちゃんを見ながら思った。
「…………………………気にするな。」
「本当にすみません……!」
 わふぅわん、ニックもポピールの横で申し訳なさそうに鳴いた。
 なんだかフランネル先輩は謝られ続ける方が申し訳なくて困りそうだ。
 ああ、実際に謝られ続けてるフランネル先輩の眉が八の字に…。
 なんか話逸らせないかな…。
 思った矢先に、デュリオール先輩のことを思い出す。
「デュリオール先輩は使い魔居るんですか?」
「ああ、僕の使い魔は飛べる子でね、ちょっと空にいるんだ。呼ぼうか。
 後二人とも、取り敢えず座ったらどうだい。」
「はい!すみません!」
「……………………。」
 近くにあった席に集合すれば、何故か立ったまま腕を差し出したデュリオール先輩。
 キュイーー!!
 甲高い鳥の声と共にデュリオール先輩の腕に降り立ってきた一羽。
 バサリと広がる羽の裏側は白く、表は淡い金色だ。
「彼女はライラ。断りなく触ったりとか、無理やり近づいたりすると攻撃されるから気をつけてね。」
「「はい!」」
「すげぇ、かっけぇー。」
 ……なんか、既視感が…?
 ポピールの歓声と、デュリオール先輩の少し物騒な紹介を聞きながら、既視感に襲われる。
 とりあえず拍手してるけど、なんか、見たことあるような?そんなに鳥詳しくないからメジャーなやつだと思うんだけど。
 キリッとした眼力の強い金の目が此方を見る。
 あ、鷲だ、なんかちょっと色味違うけど鷲だあれ。
 思い出せてすっきりした。
「はい、じゃあ僕の使い魔も紹介したことだし、使い魔との関わり方について説明しようか。」
 俺がすっきりしていた間にも話は進む。
「まず、使い魔は魔法石の状態に戻すことができる。
 ちょっと戻すね、ライラ。」
 キュイ
「【リターン】」
 ころん、とデュリオール先輩の手の中に透明な魔法石が乗る。
「呪文は【リターン】、呼ぶ時はまた【コール】と言えばいいよ。
 ただ、戻す時は一言使い魔に伝えてからにしようね。使い魔の子も驚いて嫌われてしまうかもしれないから。」
 ふふふ、と笑い混じりにそう言って、もう一度ライラちゃんを呼び戻す先輩。
「あとは、使い魔の嫌がることはしない、させないようにすること。
 君たちはもちろんだけど、周りの人はその子たちの言葉がわからないからね。
 きちんと説明したり、そもそも近づけないようにしたりとか、対策を考えるように。
 僕の場合は、人の多い所で出したりとかはしないようにしてる。今みたいな時は上空を好きに飛ばせてるよ。」
 そう言って優しくライラちゃんを撫でる先輩は、しっかりと信頼関係が築けているみたいだ。触っても大人しく、というかむしろ嬉しそう。
「最後に、契約についての注意だけど…、既に契約してるみたいだし、あまり必要は無さそうだね、二人とも。」
「!ユーリスも契約済みなのか?」
「ポピールもさっき名前を呼んでたと思ったけど、そうだったんだね。」
 脱力したように笑うデュリオール先輩の言葉に反応して、二人で顔を見合わせる。
 にかっ、と笑ったポピールは、ニックを抱えて胸の位置くらいまでにあげた。
「こいつはニック!小っせえ頃からの相棒なんだ。大分食いしん坊なやつだから、食事中とかは気をつけてくれ。」
 わんっ!
 元気よく鳴くニックは、人懐こいのかポピールに抱っこされているのが嬉しいのか、ぶんぶんと尻尾を振っている。
 かわいい、またカイとは違った愛嬌がある。
「よろしくニック。俺はユーリス、この子はカイだよ。会ったばかりで好き嫌いはよくわからないんだけど…。」
《嫌な時は威嚇するよ!》
「嫌な時は威嚇するらしいから、威嚇されたらやめてあげてね。」
「おう、わかった!よろしくな、カイ。俺はポピールだ。」
《よろしくしてあげなくもないよ。》
 ふんす、と胸を張るカイは猫らしくツンデレらしい。猫は飼ったことないから実際のことは知らないけど。
 可愛くてよしよし撫でておけば、ごろごろと喉が鳴った。
 ごろごろ音は聞こえるけど、話してる時とか他の人にはどう聞こえてるんだろ、にゃあとか聞こえてるのかな。
 それなら俺も聞きたいなあ。
「仲がよさそうでなにより。
 二匹目とかも契約できるし、説明しておくね。
 契約をする時は名前をつけるだけでいいけど、無理やりしたりすると抵抗や反発が起きて召喚に使った魔法石が割れるよ。
 そうすれば二度と呼ぶことはできないから、契約したいなら頑張って気に入られようね。
 説明はこれくらい。」
 へえ、やっぱりちゃんと逃げる手段はあるんだ。
 俺もカイに嫌われたら悲しいし頑張ろう。
 もふもふとカイを撫で回しながら思った。
「あ、そうだ、これを渡しておかないと。学園支給の魔法石入れだよ。
 傷とかがつかないように入れておく物だね。
 後から自分でオリジナルを用意してもいいし、ずっと使い魔を出しっぱなしでこれを使ったことない、って人も居るね。
 魔法石を会せば呼ばなくても使い魔と意思疎通ができるから、使い魔が遊んで欲しい時とかは呼んで遊んであげたりしてね。」
 魔法石ってそんな携帯電話みたいな感じなんだ。
 というかさっきから情報量が多いなあ。覚えられるかな。
 そうしょっぱい気持ちになりながら魔法石入れを貰う。
 魔法石入れは支給品らしく紺色の無地でシンプルな物だ。
 それと、カイを見比べる。
 きゅるん、とまんまるな目と視線が絡まった。
 …オリジナル、とまではいかなくとも、もうちょい頑丈そうなのを買おう。
 もう既に、大分カイに情が湧いている俺であった。
 かわいいから仕方ない。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼毎週、月・水・金に投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました! ※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! ※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

処理中です...