噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。

春色悠

文字の大きさ
上 下
9 / 27
一章

合同授業【使い魔編 猫と魚】

しおりを挟む
「今日の合同授業は皆さんに使い魔を召喚してもらいます。」
 その一言で、そわり、と空気が浮ついたのがわかる。
 かく言う俺も俺も落ち着けていない。
「使い魔召喚は来てくれる者もいれば来てくれない者も居ます。
 来てくれなかったと言って一生来ない訳でもありませんし、魔法や剣の腕が使い魔の有無に関係することもありません。
 それは心に留めておくように。
 後、中には使い魔を自分のしもべか何かだと勘違いしている者もいるかもしれませんが、決してそんな事はありません。
 彼ら彼女らはあくまでも協力してくれる友人であり協力者です。
 彼ら彼女らは自らの意思で契約し、協力してくれていると言うだけで、その気になればいつでも牙を剥かれると言うことを忘れないように。」
 浮ついた空気を締める様にミィ先生は厳しい声でそう言った。
 少し浮ついた空気が静まったのを満足そうに見遣って、召喚の手順を説明する先生。
 魔法石(魔法耐性のある鉱石のこと。)に魔力を込めて、魔法陣の上に置く。
 そうして、詠唱する。
 それで召喚はできるらしい。
 魔力を込めた魔法石を使うのは、その魔法石を体にすることで使い魔はその体が壊れても本体には影響無く過ごす事ができ、魔力を補充すれば復活できるようにする為。
 使い魔契約はまた別で、呼び出した子に名前をつける事で契約できる。
 普通に名付けを拒否されたり、攻撃されたりなどもあるので、先輩方や先生の監督の元やるのだそうだ。
 様々な注意事項を説明された後、出席番号順に二人づつ召喚していく。
 
 俺、使い魔で来てくれた子と仲良くなれるかな。
 列に並び、どんどん召喚を試みた生徒が不思議な生物と一緒き帰ってきたり、肩を落として一人で帰ってきたりを見る中、考える。
 先生は契約前でも召喚に応じてくれた使い魔とは会話ができるというが、俺のコミュ力で仲良くなれるだろうか。
 そもそも召喚に応じてくれる子はいるだろうか。
 そわそわしている間にも列は進んでいき、遂に俺の順番になった。
 魔力を込めた真っ白の魔法石を魔法陣に置く。
「【コール】」
 手を伸ばして、唱えた。
 真っ白な魔法石がしゅるりと変形し、ぽふんっと跳ねた。
 クリクリとしたまんまるの瞳。
 もふもふとグレーと白の混ざった毛が揺れる。
 ぴこぴこ、三角の耳が興味深そうに動いた。
 ふさふさのしっぽを楽しそうに揺らす。
 そこに居たのは____________……ねこ?
 前世で見た、猫と言う生物によく似ていた。
《ぼくを召喚したのー!》
 どーん、と勢いよく飛びついてくる姿はどちらかと言えば犬っぽい。
「おっとと…!」
 少しこけかけながらも、しっかりとその子を抱っこして邪魔にならない様に列から出た。
 俺の腕ですっぽり抱え込める程の大きさだが、長めの毛並みで少々大きく見える。
 きゅるんとしたグレーの瞳で此方を見つめるその子。
「……撫でて良い?」
《いいよー!》
 一応聞いてから撫でれば、嫌がれる事なく、くるくると喉が鳴った。
 ……………かっ、かわいい~~~!!
 えっ、えっ、こんな可愛い子が俺の召喚に応じてくれたの?ほんとに?
 まだ契約してくれると決まった訳ではないけれど、もうこの子なら来てくれるだけで嬉しい。と言うかどんな子でも来てくれるだけでありがたいけど!!
 スキップしそうな気持ちのまま席に戻った。
 既に召喚に成功していた生徒は自分の席で使い魔と話している。
 なるほど、俺には他の子の使い魔が何を話しているかわからないけど、会話はできている様だ。
 というかさっきこの子も喋ってたし。
 そう思いながら席に座れば、するっと俺の腕から抜け出して机の上に降りたその子は好奇心に満ちた目でこちらを見る。
《ぼくを召喚した、きみのなまえは?》
「俺はユーリス。召喚に応じてくれてありがとう。」
《どういたしましてー!》
 にぱっ、と可愛く笑うその子の声は幼く、性別はどちらかわからない。無いのかもしれないけど。
「ふふ、かわいい。」
 取り敢えず可愛い。本当にかわいい。
 目を瞑って笑っているのが可愛くて、思わずまた撫でる。
《きゅるる、きゃー。》
 くるくると笑いながら机の上でお腹を見せるその子を思う存分撫でた。
 一通り撫で終わると、その子は畏まったように前足を揃えて座った。
《それで、きみはぼくとどんな関係になりたいの?》
「…関係?」
 なんだか、空気が変わった。
 此方を見てくる灰色の瞳に、試されている、と思った。
《そう、関係。きみがぼくに求めるものともいう。
 きみが求めるのは、どんなぼく?》
 先生が言っていた協力者とは言い得て妙である。
 目の前のこの子に、俺は何をして欲しいのか。
 言ってしまえば、俺は授業ですると言われたからこの子を召喚した。
 そこに望みや目的があった訳では無い。
 何も考えずに召喚したこの子に、俺は何を求める。
「……………わからない、というか、なんでも良い。」
《なんでもいいの。》
 ぽかん、と口を開けるその子。
 強いて言えば求めるのは、使い魔としての関係になるのだろうけど、俺はそこまで考えていなかった。
 わーい、面白そうな授業~!くらいにしか考えていなかったので。
「そもそも、出会ったばかりの俺と君の関係は、よくて知人だと思うんだ。
 そこから友人なり、なんなりに変わっていく。
 逆に言えば、そうなった関係以外に、俺達はなれないと思うんだよ。」
 俺無理だよ。物凄いバディになろうと言われても鈍臭い俺じゃできないからね。できない事はやらないに限るんだよ。
《きみは、あるがままをのぞむんだね。》
 …あの、そんな大層なものでは無いんですが……?
 まっすぐに見つめられて言われた言葉に慄く。
 俺そんなかっこいいこと言ってないよね?俺はできない事はしないってやる気のない事言っただけだよね?
 混乱する俺を他所に、目の前の子は愉快そうに目を細めて笑った。
《ならぼくも、きみのあるがままをのぞもう。》
《さあ、ぼくのなまえをおしえて?》
 え、えーーー……?
 なんだか勘違いされている気もするけど、使い魔契約してくれるそうです?
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

マリオネットが、糸を断つ時。

せんぷう
BL
 異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。  オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。  第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。  そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。 『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』  金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。 『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!  許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』  そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。  王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。 『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』 『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』 『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』  しかし、オレは彼に拾われた。  どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。  気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!  しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?  スラム出身、第十一王子の守護魔導師。  これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。 ※BL作品 恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。 .

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします

muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。 非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。 両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。 そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。 非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。 ※全年齢向け作品です。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする

拍羅
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。 前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち… でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ… 優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

処理中です...