思い出して欲しい二人

春色悠

文字の大きさ
上 下
24 / 24
第一章

誤解が解ける (受け視点)

しおりを挟む
 あ、あれ?し、栞が無い…!!
 途中まで読んだ本に栞を挟もうとすれば、何処にも栞が無い事に気づいた。
 今日は祝日で、学校もお店もお休みだから本を読んでいたのだ。
 あ、あすくんからもらった大事な指輪の栞なのに…!!
 泣きそうになりながら家の中を探すも、見つかる気配が無い。
 た、確か、飛鳥さんから借りた本を読んでた時はあったよね…?
 てことは、その後?
 _____も、もしかして、飛鳥さんに返した本に挟んだまま……!!!?
 ど、どうしようどうしよう…、飛鳥さんに連絡?それとも次にお店に来てくれた時に話す?
 立てた仮説に狼狽えながら、携帯を出して飛鳥さんに連絡を取るかどうか悩む。
 その時_____
 ぴこん、
 飛鳥さんからメールが来た。
「え、えっ?」
 びっくりして意味の無い母音をもらしながらメールを確認する。
『少し話したい事があるんだけど、今日大丈夫かな?』
 思わず携帯を落としかけた。
 ギリギリでキャッチして、もう一度メールを確認すれば、さっきと同じ文章がちゃんと飛鳥さんから送られていた。
 ど、どうしたんだろ…?
『大丈夫ですけど、どうしたんですか?』
『実は翠君に貸した本から栞を見つけてね。返したいと思って。』
 ぴくり、と指が止まった。
 …やっぱり、飛鳥さんの所にあったんだ。
『今から飛鳥さんのお家に取りに伺ってもいいですか?』
『いや、今お店の前に居るんだ。だからそっちに来てもらえるとありがたいかな。』
「えっ……!!?」
 返ってきたメールに驚いて窓から玄関を見れば、飛鳥さんのサラサラした髪の毛が見えた。
 こっちに気づいたらしい飛鳥さんがひらりと手を振っている。
 う、うそ、い、急がなくちゃ…!!
 急いで部屋着を着替えて下のお店に出る。
 カランカランっ!
 焦ってドアを開けたせいか大きくベルが鳴った。
 扉を開けた先には飛鳥さんが居て、片手に栞を持っていた。
「あ、飛鳥さん…!!」
「翠君!急に来ちゃってごめんね。」
「いえ、こちらこそ届けていただいて……、ほんとにありがとうございます。」
 ほんとに、失くさなくてよかった……。
 栞を受け取って、安心して少し頬が緩む。
「いや、俺も話したいことあったから……。」
 そうどこか言い淀みながら微笑む飛鳥さん。
 …どうしたんだろう…?
「……その、栞ってさ、」
 何を言われるのだろう。
 どきどきと、緊張で鼓動が速まる。
「えと、持ってる理由とか、覚えてるかな?」
 自信なさげに此方を見る飛鳥さん。
 ……もしかして、飛鳥さんも__________覚えてくれてたり、するのかな。
 淡い期待を抱きながら口を開いた。
_____「あ、すくん、って、子に、もらったお花を栞にしたんです。」
 言葉に詰まりながらだけど、言い切れた。
 そう思った瞬間には、飛鳥さんに両手をがっしりと掴まれていて、ぐっと飛鳥さんの顔が鼻が当たるほど近くになる。
「覚えてるのか……!?」
「っ…!!?」
「あ、ごめん、急に大声だして「飛鳥さんこそ、覚えてるなら幻滅しませんでしたか。」えっ?」
 びっくりした俺に申し訳無さそうに手を話そうとする飛鳥さんの手を掴んで、そう捲し立てる。
「飛鳥さん__________あすくんが好きになってくれた俺は、女の子じゃないんですよ。」
 もう、話してしまおう。
 そう思った。
 きっと、今を逃したら俺は一生わからないまま過ごしてしまう。
 ほぼやけくそ気味に言ったのに、飛鳥さんの顔を見れないまま俯く。
「覚えてた、のか……?__________みどり。」
 呆然と呟くあすくんに、ああやっぱり、あすくんも俺のこと女の子だと思ってたんだと思う。
 きっと、幻滅しただろうな。
「…………はい。」
 応えたくないな、なんて思いながら肯定すれば、次の瞬間俺はあすくんに抱きしめられていた。
「_____っよかった……!!ほんとに…ほんとに……!!」
 涙声であすくんが話すけど、抱きしめられたままだから表情が見えない。
 何で俺は抱きしめられてるんだろうと思いながら、ぎゅうぎゅうと抱きしめる力の強いあすくんから離れられない。
「……………よかった……?ほんとに、よかったの?おれ、おんなのこじゃないんだよ、あすくんのことだましてたんだよっ……?」
 離れられないと言いながら、離れたくないと思ってあすくんに抱きつきながら聞く。
「えっ?いや、みどりが男なのは最初から知ってたし、その上で俺はプロポーズまでしてたんだが……?」
「えっ?」
 _____「「えぇっ!?」」
 びっくりしすぎて二人でバッチリ目を合わせながら驚く。
 え、えと、つまり……_____あすくんはもともと男の俺が好きだったってこと……??
 俺が思ってる事が何となくわかったのか、盛大にあすくんが脱力しながら俺に抱きついてくる。
 どきどきと、また緊張とは違う鼓動の高鳴りを感じながらあすくんの背中に手をまわす。
「_____なあ、みどり。俺と付き合って。何なら結婚して。
 俺は男でも女でもみどりが好きだ。愛してる。もう離したくないから、離せないから、俺と一緒に居て。」
 ぎゅうぎゅうと俺を抱きしめたまま、耳元で話すあすくん。
 そんなの、断れる訳無いじゃないか。
 それでもやっぱり恥ずかしいもので、顔はおろか全身暑くなりながら返事することになった。
_____「うん。あすくんとず~っと一緒に居る。」
 そう応えたら、あすくんの抱きしめる力がもっと強くなって、ああ、もう離れられないな、と思った。
「だいすき、あすくん。」
「俺は愛してるぞみどり。」
 俺を甘やかしまくってキザに口説きまくるあすくんに、赤面し続けることになった俺であった。


~完~
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

雪は静かに降りつもる

レエ
BL
満は小学生の時、同じクラスの純に恋した。あまり接点がなかったうえに、純の転校で会えなくなったが、高校で戻ってきてくれた。純は同じ小学校の誰かを探しているようだった。

告白ゲーム

茉莉花 香乃
BL
自転車にまたがり校門を抜け帰路に着く。最初の交差点で止まった時、教室の自分の机にぶら下がる空の弁当箱のイメージが頭に浮かぶ。「やばい。明日、弁当作ってもらえない」自転車を反転して、もう一度教室をめざす。教室の中には五人の男子がいた。入り辛い。扉の前で中を窺っていると、何やら悪巧みをしているのを聞いてしまった 他サイトにも公開しています

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ

雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。 浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。 攻め:浅宮(16) 高校二年生。ビジュアル最強男。 どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。 受け:三倉(16) 高校二年生。平凡。 自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

おれの大好きなイケメン幼なじみは、何故だか毎回必ず彼女にフラれてしまうんです。

そらも
BL
周囲(主に彼女)に被害をまき散らしまくる、鈍感幼なじみの恵ちゃんとりょうくんのある日のお話。 「これ、絶対、モグ、んっ迷宮入りの大事件だよねっモグモグっ」 「な~…俺チャラく見えて、結構尽くすほうだってのに…っと、まぁたほっぺにパンくずつけてんぞ。ほらっこっち向け」 「んむっ、ありがと~恵ちゃん。へへっ」 「ったく、ほんとりょうは俺がついてないとダメだなぁ♡」 「え~♡」 ……終始こんな感じの、(彼女にとって)悪魔のような二人組の惚気全開能天気会話劇であります。 今回はまさかの初めてのR-18じゃない普通のBL話です。連載ものですが短編予定ですので、多分すぐに終わります。 ぶっちゃけ言うと、ちゅうさえもしません(マジかい)最後まで鈍感です。 それでもオッケーという方は、どうぞお暇つぶしに読んでやってくださいませ♪ ※ 素敵な表紙は、pixiv小説用フリー素材にて、『やまなし』様からお借りしました。ありがとうございます!

処理中です...