思い出して欲しい二人

春色悠

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第一章

ちょっとそっけない?(受け視点)

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 ……俺、なにかしちゃったのかな……?
 
 
 朱鳥さんのストーカーの事があってから数ヶ月。
 今日は朱鳥さんがお店に来ているが、なんだか様子がおかしい。
 いつも座るカウンター席ではなく、窓際の席に座っているし、全然話しかけてくれない。
 ストーカーの事があってからも、週に一回くらいのペースで来てくれている朱鳥さん。先週も変わらずに来てくれていたが、何かあったのかな。
 それとも…俺が何かしちゃったとか……?
 う~ん………。先週来てくれた時も別に変わった事は無かったし、それから今日まで会ってないしなぁ。
 …………あ、…おれに、興味がなくなったのかも…………。
 ネガティブな思考を遮る様に、携帯のタイマーが鳴り、ホットケーキをひっくり返す。
 いけない、いけない。料理を作ってる時にぼんやりしちゃった。
 ホットケーキを焼き終わって、トッピングにバニラアイスとチョコソース、それに旬のいちじくを乗せたら出来上がりだ。
 店長からコーヒーも貰って朱鳥さんに持っていく。
「お待たせしました。ご注文の季節のホットケーキとコーヒーです。」
「、あ、ありがとう。」
 お礼は言ってくれるけど、すぐに目線を逸らされてしまった。たったそれだけで、俺は涙が込み上げてきそうだ。
 話す事もなくて、さっと厨房に戻った。
 扉に凭れて、ズルズルと座り込む。
「…………ハァ___。」
 細いため息が溢れた。……避けられてるなぁ。
 でも、ずっとそうしている訳にはいかない。店番が居ないとだめだから、一人は表に居ないと。
 拒絶されるのが怖くて動かない足を動かして表に向う。
 戻った瞬間、朱鳥さんと目が合うがすぐにまた逸らされてしまう。……さみしいなぁ……。
 そんな事を何度も繰り返す。目があってはさっとそらされる。俺嫌われてる?
「……お会計お願いします。」
 お会計の時も、眼をずっとそらされたままだ。
 …………あぁ、いやだ。おれのこときらわないでよ、俺なんかしちゃった……?
「……今日も、美味しかったよ。」
 そう言って帰ろうと俺に背を向ける朱鳥さん。
 俺は無意識に朱鳥さんの服を掴んで引き留めてしまっていた。
「、!?ど、どうしたの?」
「ぁ……ぃえ、その、……。」
 どうしようどうしよう………。つい服を掴んでしまった。これじゃあ、ますます嫌われちゃうよ。
「……ゆっくりでいいよ。」
 朱鳥さんは優しくゆっくりでいいと言ってくれる。
「……おれ、あすかさんになにかしちゃいましたか……?」
「…ヘ?…えと…なんでそう思ったの?」
 そんなの…
「……あすかさんが、ぜんぜんお話してくれなくて、目もあわせてくれなかったから……。」
「…なにかしちゃったかも、って思ったの?」
 朱鳥さんの問いに、コクンと頷いて返す。朱鳥さんは俺の行動に合点がいったのか、額に手を当てて上を見上げながら、スゥーーーと息を吸った。
「勘違いさせちゃってごめんね。翠君は何も悪くないよ。俺の問題だ。ちょっと色々あってさ、翠君と話しづらかったんだ。でも吹っ切れたよ。ありがとう翠君。」
 ?どういうことだろう??でも、解決したならいい、のかな?
 朱鳥さんがニコニコと笑っているので、まあいっか、と思った。
「ということで翠君。どこか空いてる日ない?」
「…?お店は祝日と火曜日以外空いてますけど。」
「そうじゃなくて、翠君の空いてる日だよ。」
 へっ?俺の空いてる日?
「今日のお詫びに何処かで奢らせてよ。」
「えっ、悪いですよ。お詫びされることでもないですし!」
「じゃあ、いつも料理教えてもらってるお礼として。」
 う゛……お礼だと断りづらい……。朱鳥さんとお出かけは大歓迎だけど、奢ってもらうのは……。
「ね、だめかな?」
「……………来週の日曜だったら空いてます……。」
 朱鳥さんの期待の目に俺は負けて、空いてる日を言ってしまった。
「やった!集合時間とかはメールで相談するね!ごちそうさまでした。」
「はい。ご利用ありがとうございました。」



 その後、集合は10時にあの本屋になった。そう約束したメール画面を開いてニマニマする。
 …………たのしみだなぁ…………。
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