思い出して欲しい二人

春色悠

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第一章

初恋の瞬間(攻め視点)

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「ホントにどうしたんすかぁ?先輩ちょっと、人に見せらんねぇ顔してるっすよ。」
「黙れ佐々木。」
「うわ、重症だこれ。飲み行きましょ、飲み。話聞いてあげます。これは面白い話聞けそうっす。」
 クソが、完全に面白がってやがる。人が悩んでるのがそんなに面白いか、あぁ゛ん!?

 結局飲みに行った。
「アッハハハハ!!!マジ!?マジです!?それ!?ホントに!?天下の御曹司が!?ぁっははははは!!!ひぃ、も、腹筋がやられるぅ…ハハッ!」
「うるせえ佐々木。御曹司は関係ねぇだろ。つか、何がそんなに面白いんだよ。」
 本当に佐々木が煩い。そんなに笑わなくていいだろうが。
「だって、せんぱい、あれでしょ?初恋で、プロポーズまでした相手に忘れられてて、で、相手には好きな人がいるっぽいんでしょ?振られた事のなさそうな先輩が、苦戦どころか振られそうなんて笑うしかないっす。」
「んだよ。振られた事無さそうって。みどり以外にプロポーズした事なんてねぇよ。」
「まさか童貞っすかぁせ~んぱい!」
「……。」 
「……え?まさか、図星っすか……?」
 さっきから何だよ悪いか!?みどり一筋何だよ俺は!!それにみどり以外に興奮なんざしねぇんだよ! 
 だから、そのニマニマした顔やめろ!!
「へぇ……!それはそれは、一途っすねぇ、先輩?初恋腐らせてるっていうか醗酵してません?」
「ふん。」
「しょうがないから、恋愛マスターのオレがアドバイスするっす!まずは、好きな所からキリキリ吐いてもらうっすよぉ~!」
「全部だが?みどりの全部を俺は愛してるぞ。」
「うっわ、藪蛇。ちょっとヘンタイの気配も。じゃぁ、なんで惚れたか教えてくださいよ。どこに落とされたんすかぁ。」
 なんで惚れたか、だと……?
「え、もしかして忘れたとか言わないっすよね?」
「覚えてるに決まってんだろ、みどりの事だぞ。」
「実はもう酔ってるっすよね先輩。ま、キリキリ吐いてくださーい!」
「く、……………………らだ。」
「ん?声がちっさいすよ。」
 くっそ、ニマニマしやがって佐々木ぃ……。
「……か、かっこいいって、言ってくれたからだ……。」 
 顔が熱い。本当に火が吹けそうだ。佐々木は震えながら机をバンバン叩いてる。どうせ笑ってんだろ。ケッ…これだからリア充は。
「…ちょ、ちょろい…。嘘でしょ先輩、そんなにちょろかったっすか?」
「……昔はかっこいいって言われなかったんだよ!それに!!それが決定打だっただけで!他にも好きな所はあるし!!」
「昔って、すげぇ太ってたとかっすか?」
「いや、痩せてた。変わらずイケメンだったぞ。」
「じゃぁ何が違ったんすか。その調子じゃ、頭もいいし、運動神経も良かったでしょ。」
 そんなの当たり前だろ?普段は素直になれないが、尊敬してる親父と、大好きな母さんの血を受け継いだ俺だぞ?
「…………背が小さかったんだよ。」
 もうヤケクソだ。ここまで言ったらとことん付き合わせてやる。
「いや、それでもかっこいいは言われてたでしょ。」
「まあな。だけど大体、その後に背は小さいけどが付く。」
 見た目だけで、中身を見て褒めてくれる奴なんていなかった。
「うわぁ~!でも先輩。言っちゃあなんすけど、その時相手は先輩より小さかったんでしょ。」
「だから、決定打だっただけだって言ってんだろ。ほぼ好きになりかけてる子に、かっこいいなんて言われたら、惚れない訳にはいかないだろ。それに……」
「それに?」
「……かっこいいって、言われた時、俺が授業の愚痴言ってた時だったんだよ。」
「…そりゃ珍しい。」
「…昔不器用で、図工の時間に上手くできなくて、みどりの前でも練習して、出来るようになってやろうって頑張ってた。そしたら、出来ない事を、頑張れるあすくんは、かっこいいね。って言ってくれたんだよ……。」
「おっふ。そりゃ先輩も落とされるわ。じゃぁじゃぁ、他のとこは?どうなんすか?」
「…俺が可愛いっつったら、照れてくれるとこ。後、くっしゃくしゃの贈り物でも、喜んでくれるとことか。」
「くぅ~!純愛っすねぇ。浄化されそうっす…。」
「惚れるんじゃねぇぞ俺のみどりだ。」
「それはないっす。オレ恋人いるんで。」
 ふん。どうだかな。お・れ・のみどりは、魅力的だからな。
「てか、先輩。先輩ガチ恋勢の人達に、先輩が惚れるって事はあるんすか?純粋な疑問なんすけど。」
「あんな奴らに惚れる訳ねぇだろ。俺が可愛いと思うのも、贈り物をするのもみどりだけなんだよ。」
「ひゅ~~、熱いっすねぇ。それ本人に伝えたらイチコロなんじゃないっすかぁ。」
「みどりは俺の事忘れてんだよ。出会って間もねぇ知らねぇ奴にそんなこと言われてもキモいだけだろ。」 
 考えて物を言え佐々木。
「そんなこと言ってぇ!今言わないで、いつになったら言うっていうんすか!大丈夫っすよ!先輩顔がいいんすから!」
「みどりは顔で判断したりしねぇし!」
「ま、それは置いといて。だんだんと好きになって、最後にはかっこいいで、完全に落とされた感じっすねぇ。いやぁ、砂糖吐きそう。因みに付き合ったあかつきには何したいんすか。」
「ーーーー。ーーーー、ーーーー。」
「あ、やば、藪から変態が出てきちゃった。酔ってんなこれ。」
 そこからの記憶はおぼろげだが、ちゃんとほどほどで帰って寝た。
 その日の夢は、みどりが俺の家で帰りを待っててくれて、「ご飯にする?お風呂にする?…そ、それとも、……俺に、する…?」と言ってくれる夢だった。朝からちょっと大変な事になったが、是非現実のみどりにも言ってもらう為に、早くみどりと仲良くならなければ……。
 待っててくれみどりぃぃ!!
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